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ユニバーサルデザインが描く未来

執筆者:鴨志田 厚子
鴨志田デザイン事務所代表、静岡文化芸術大学デザイン学部教授
東京芸術大学卒業後、静岡県工業試験場意匠課を経てデザイナーとして独立。理論だけではなく、実際の製品デザインやフィッティングデザインでユニバーサルデザインを実践。
外部デザイナーの先駆者として、内田洋行の商品を数十点デザインし、ユニバーサルデザイン基準設定を監修。

デザイン・フォー・オール -全ての人のためのデザイン-

ユニバーサルデザインって何?

ユニバーサルデザインというと新しいファッションだと思っている人も多いようですね。日本人はデザインというと服を思い浮かべる人がまだまだ多いですから。ユニバーサルデザインとは、大人も子どもも高齢者も、男性も女性も、障害のある人も外国人も、左利きも右利きも、同じように利用できるデザインのこと。服だけでなく、日用品、家具、施設環境までを含めた全てのモノ、最近ではそれらを活用するための社会制度の整備などを含めた、幅広い意味をもつようになっています。オフィスでは、視力が弱った人でも見やすいパソコン、左利きでも開けやすい引出し、少ない力で移動できるテーブル、体格や姿勢に合わせて調整できる机や椅子などがあげられます。バリアフリーやアクセシブルデザインも、ほとんど同じ意味ですね。年令・性別・人種・障害の有無によって区別せず、全ての人々が共用できる空間・社会環境にしていくデザインの考え方です。

1990年アメリカで始まった取り組み

始まりは1990年アメリカ、ロナルド・メイス氏が中心となり提唱されました。9歳の頃、小児麻痺にかかり車椅子の生活になった彼は、特別扱いされることを嫌い、障害者も健常者も同じように使える生活環境があればと考えました。それまでは障害者用の製品は障害者だけのものといったように、ある特定された人を対象にしていました。これに対し、メイス氏は障害者も健常者も同じモノが使えるように工夫したデザインを求めたのです。使う人を特定しない、不特定多数の人を対象とする。そこのところが特に強調された新しいデザインの考え方でした。

どんな人でも使えるデザインを求めて

ユニバーサルデザインは、デザイン・フォー・オール。全ての人のためのデザイン。大人も子供も、障害があってもなくても、同じものが使える。これは理念であり、実際は作る立場からみると、なかなか難しい。現実のモノづくりではそんなに調子のいいことばかり言ってられないでしょ。でも、それをあえて理想として目指そうということなのです。
JIS規格というのがありますが、あれは日本人の寸法の平均値を出して、高さや重さを決めたもの。あくまで平均値であって、それが使いやすいのは全体の45%だと言われます。半数以上の人は、大きすぎるか小さすぎるかで合っていない。人がモノに合わせて使っているといえます。

プラスアジャスト、簡単な工夫で個人差をのりこえる

ただし、ユニバーサルデザインに配慮したモノであっても、買った人の誰かからは「使いにくいじゃないか」というクレームは来ます。個人差がありますから。それは、ふだんの買い物でも同じですよね。誰かが「いい」と思っても他の誰かには「よくない」と映る。それと同じことです。
一つのものをみんなが使えるのがユニバーサルデザインの考え方ですが、少しくらい違ってもいいのではないかと私は考えています。人による個人差が完全になくなることはないし、高齢者や障害者の場合はなおのこと、個人差が大きいものです。誰にでも座りごこちのいい椅子なんて、そうあるものではありません。全員が同じだったらむしろ気持ち悪い。ピタっと合う人、ちょっと違うかなという人がいてもいい。S・M・Lなど三種類くらいの中から選べたり、アジャストできたりするとよいのではないでしょうか。
一つのものですまそうというのは無理がある。アジャスタブルでいい。製品に段階をつけ、個人差によって調整できるようなデザインであれば、どんな人でも対応できる製品になりますよね。そんなふうに柔軟にユニバーサルデザインをとらえてみれば、案外簡単に対応できることは少なくないと思います。

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