HOME > 企業情報 > ユニバーサルデザイン > コラム

コラム

ユニバーサルデザインのTOPへ

心の耳で聴くユニバーサル社会へ

執筆者:松森 果林
神奈川工科大学福祉システム工学科ユニバーサルデザイン非常勤講師、共用品ネット会員
株式会社ピクセン商品企画顧問として、香りを使ったユニバーサルデザインの開発に取り組む。E&Cプロジェクトでの内田洋行商品企画部メンバーとの出会いをきっかけに、製品へのアドバイスなどもいただく。
著書『星の音が聴こえますか』(筑摩書房)、芳賀優子さんとの共著『ゆうことカリンのバリアフリー・コミュニケーション』(小学館)など

聴覚障害の立場から暮らしや社会を考える

障害があることで楽しさが制限される

卒業して私が最初に勤めたのは障害者だけで構成される特例子会社(※1)で、いわゆるOLをしていました。楽しかったのですが、私は外へ出て、もっといろんな人と関わり合いたいとも考えていました。(株)オリエンタルランド(=東京ディズニーリゾートを運営する会社)の求人を知りすぐにコンタクトをとりました。
(株)オリエンタルランドでは、装飾課に在籍していましたが、バリアフリー・プロジェクトが立ち上がると聞いて、真っ先に立候補しました。障害者の立場からディズニーランドを考えるチャンスです。
ディズニーランドは全てのゲストに楽しんでもらうという基本概念がありますが、障害のある人にとっては、楽しさが制限されてしまうこともあります。それを我慢しないで楽しむ方法はないのか。パーク内の段差をなくし、エレベーターをつける。聴覚障害者とスムーズにコミュニケーションして楽しめるように手話のできるキャストを養成する、シアター形式のアトラクションで特殊なメガネをかけると字幕が見えるキャプショニングシステムを取り入れるなど。障害のある人もない人も、同じように楽しむことができる空間にしていこうという取り組みでした。出産を機に退職してしまいましたが、もっとやりたいことはたくさんありました。

※1 障害者の雇用に特別の配慮をした子会社で、一定の要件を満たしている場合、その子会社に雇用されている労働者は親会社に雇用されているものとみなされ、親会社は障害者雇用率を計算することができる。

共用品ネット

また大学3年の「バリアフリーデザイン」の授業で、共用品ネット(※2)の前身であるE&Cプロジェクトの存在を知り、卒業後はメンバーになりました。障害のあるなし、年齢、国籍などに関わらず多くの人にとって使いやすい商品、環境、サービスについて自主的に検討し提案している団体です。「高齢者が選ぶお手軽共用品」プロジェクト、「包装商品の識別と開封」プロジェクト、「利用しやすいバスのあり方」プロジェクトなどがあった中で、私は現在「駅および電車内の電光表示板の利用状況に関する調査」プロジェクトに加わって、会社勤めのかたわら、月に一度の会議に参加するようになりました。

※2 (財)共用品推進機構 個人賛助会員の会

情報の存在にも気づかないということ

聴覚障害と一言で言ってもいろいろな方がいます。生まれつき聞こえない人、補聴器を使えば聞こえる難聴者、聞こえていたけど何らかの原因で聞こえなくなった中途失聴者。生まれつき聞こえない人にとっては、聞こえないために被る不便さに気づきにくいということがあります。聞こえない世界が当たり前で、情報があるということに気づかないのです。
プロジェクトで、聴覚障害者を対象に、聞こえる世界と聞こえない世界の2つの絵を見せてアンケート調査したところ、多くの人が不便さに気づいていないことが分かりました。テレビで天気予報をやっている、換気扇がブーンと回っている、水道の水が流れている、電話が鳴っているなど、音を擬態語で表わした絵とそれがない絵を見せるのです。聴覚障害者の多くが生活の中にはこんなに音情報があったのかと驚いていました。

公共の場での電光掲示板は重要な情報源

調査の結果、聴覚障害者が必要な音情報の上位を駅や電車の中、病院での音情報が占めました。これをもとに私達は、電光掲示板のあり方の調査研究をしてきました。駅や病院、公共施設などでは、電光掲示板が聴覚障害者にとって重要な情報源となります。内田洋行さんでも、文字や画像が表示できる様々な電光掲示板を扱ってらっしゃいますね。マルチ画面でさまざまな情報が入手できるようになっていて、とてもよくできていると思います。それに、文字が見やすくてとてもきれいです。
ここ数年、電車の中でも電光掲示板で事故情報が流れるなど、大分増えてきましたが、小さな駅の多くではまだ設置されていません。また、広告を含め視覚的な情報が街にあふれ、何が重要で、何が重要でないかが分かりにくいケースも見受けられます。とくに重要な緊急情報は赤いランプの点滅で知らせるなど、「重要な情報が出てるよ!」と目立つように知らせる工夫が欲しいです。
こんなことも含めて、公共の場で誰もが同じ情報を得られる電光掲示板の必要性と提案を、内田洋行さんからどんどん発して欲しいと思います。

BackNext

ユニバーサルデザインに関するお問い合わせはこちら