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【内田洋行ITフェア2015in東京】 企業事例にみる物流システム先端トレンド ~SPA、RFID、オムニチャネル+逆オムニ、IoT~

2015/12/11 [物流,セミナーレポート]

あらゆる物がインターネットでつながるIoTの時代、物流とそれに関わる私たちの暮らしはどう変わっていくのでしょう? 専門誌や一般紙にしばしばとりあげられるキーワードを中心に、物流とサプライチェーンの新しい流れについてお話しします。

目次

  • 宅配便のラストワンマイル
  • 物流倉庫で稼働する無人搬送ロボット
  • ラストワンマイルにドローンは可能か?
  • ドローンで資材の無人管理
  • リアル店舗とネット店舗の連携「オムニチャネル」

内田洋行ITフェア2015 in 東京にて

株式会社流通研究社 専務取締役 月刊マテリアルフロー 編集長
菊田 一郎 氏

※講師プロフィールは講演当時の所属、役職となります。

マテリアルハンドリングから物流・ロジスティクス、サプライチェーン、RFID/IT関連分野まで、内外の企業現場・キーマンインタビュー取材・執筆を継続するかたわら、2012年より同社主催で毎年開催中の「アジア・シームレス物流フォーラム」の企画・実行統括を担当。著書に「ロジスティクスで会社が変わる」(白桃書房、共著)、「物流センターシステム事例集Ⅰ~Ⅵ」(流通研究社)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(社会保健研究所、11年改訂版、共著)など。

宅配便のラストワンマイル

最寄りの物流事業者の拠点と家庭を結ぶ最後の区間を「ラストワンマイル」と呼びます。通販市場がさらに拡大したとき、ラストワンマイルをどうするのか、が大きな課題になってきました。宅配便ビッグバン時代と言っている人もいます。

ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が、宅配便だけに限っても9割以上のシェアを占めています。この3強の中で、日本郵便に注目すべき動きが見えるように思います。ゆうパケットという新しいサービスを始めたり、大きな拠点展開を急速に進めたりしています。

2015年の5月に、埼玉県和光市に東京北部郵便局という新しい拠点がオープンしました。これまでは、駅前など鉄道の便の良いところに、日本郵便の大きな拠点がありました。しかし、もうそういう時代ではありません。駅前には大型トラックが入れる場所もなければ、交通渋滞も発生します。

ユニバーサルサービスという使命を負った日本郵便は、地域で分散して行っていた業務を東京北部郵便局のような「スーパーハブ拠点」に集約しようとしているのです。すでに、北海道、静岡、新潟、山口、岩手にスーパーハブ拠点新設の計画が発表され、3年間で2600億円の投資を予定しているといいます。もし1拠点に100億円としたら26か所という計算になりますね。数については正式に発表されていませんが、十数か所は間違いないだろうといわれています。これにより、日本郵便のラストワンマイル対応力が大きく上がることになり、キャパシティアップにも期待がかかります。

物流倉庫で稼働する無人搬送ロボット

経済産業省が発表した2014(平成26 )年の日本国内の「消費者向け電子商取引」市場規模は12.8 兆円で、前年に比べ14.6%増という大きな伸びを示しています。

電子商取引を行う通販事業者は、運んでもらわなければ商売にならないので、物流事業者に大きく依存していました。そのため、日本の企業も、アマゾンも物流事業者の値上げ要求を拒めませんでした。彼らはこの状況を打開しようと、自力によるラストワンマイルの確保を目指し始めています。ある人は、アマゾンは世界最大の物流事業者への道を歩みだしたと言い、物流企業の最大のライバルはアマゾンになるだろうという声も聞かれます。

アマゾンは2012年にKiva Systemsというロボット技術の会社を買収し、独自の無人搬送システムを実用化しています。YouTubeなどで映像を見られますが、倉庫の床にバーコードが貼ってあり、無人搬送ロボットがそれを読みながら位置補正をして、必要な商品の入った棚をピッキングステーションまで運んできます。そして、ここで人が商品を取り出して発送の手続きをします。類似したしくみが日本でも動き始めています。日立製作所が「Racrew(ラックル)」という無人搬送ロボットを開発し、それを活用したピッキングのシステムが動き出しています。

ただし、日本のようにあまり広くない多層階のセンターに、このようなシステムを導入するのは結構大変だという意見もあります。アメリカのような広大なワンフロアのセンターであれば、ロボットが走っていって、広いスペースにずらりと並んだ棚から商品を持ってくるのは、容易かもしれません。

ラストワンマイルにドローンは可能か?

アマゾンは、「プライム・エアー」と名付けた無人配達航空機の開発を進めています。いわゆる「ドローン」です。インターネットなどで、その写真をご覧になった方もいるでしょう。アマゾンは飛行計画まで作っていて、航空機とは区別した高度やルートで安全運行をしようと考えています。ただし、日本も含め世界各国で、航空法がまだドローンには対応していません。法整備への取り組みが始まっていますが、その基本は、操縦者(運転者)が自分の見える範囲でなければ飛ばしてはいけないという方向になると思われます。そうなると、アマゾンが考えるように物流センターから飛ばして、何キロも先に荷物を届けることが可能なのかどうか、それについては法整備と安全面を含めて考えていく必要がありそうです。

日本のEC(電子商取引)化率は、4%前後といわれています。従来の小売専門の業者が、インターネットで注文できるサービスを拡大していくと、EC化率は少なくとも10%~20%になるでしょう。配達する荷物の量が今の2倍~4倍になったとき、誰が届けるのでしょうか。

お話したように、直ちにドローンに運んでもらうのは難しいでしょう。現実的な方法として、すでに宅配便の業界では、コンビニでの受け取りをどんどん拡大しています。営業所でも取り置きができるようになっています。このように、自分で取りにいくというのが1つの方向性です。アメリカでも、配送は自分自身が取りにいく、あるいはその人に近所の人の荷物も届けてもらうような方法が模索されているようです。

私個人としては、鉄道と駅をうまく活用したらよいと考えています。電車の最後尾の車両かどこかに、カゴ車2~3台を置けるスペースを設けられれば、電車で駅まで運び駅で受け渡すしくみが作れるのではないか、と思っています。

ドローンで資材の無人管理

先ほど触れたドローンの利用について、少し掘り下げてみましょう。

ドローンにもいろいろなタイプがありますが、よく見るのはプロペラが複数付いたマルチコプターと呼ばれるタイプです。日本でも以前から農薬散布用に、無人ヘリコプターというドローンが使われてきましたが、いま用途が大きく拡がろうとしています。

一例を挙げると、プラントの資材管理があります。広い資材置き場に置かれた在庫資材の1つ1つにICタグを付けておき、ドローンを飛ばします。ドローンは上空から資材に付けられたICタグの情報を読み取って、どこにどんな資材がいくつあるか把握します。これから使う資材が必要なだけあるかどうか、歩いて見に行かなくてもわかるようになるのです。

橋のメンテナンスにも使えます。橋に歪みなどを検知するセンサーとタグを付けておき、ドローンを飛ばして橋の構造に異常がないかを探るのです。このところ、マルチコプターを制御する技術が飛躍的に進歩し、廉価で高機能なドローンの製造が可能になったことが、今のブームを後押ししているようです。

リアル店舗とネット店舗の連携「オムニチャネル」

<出典>マテリアルフロー 2014.5月号、「オムニチャネルの本質は『顧客志向』,品質と接客で物流にも付加価値を〜オムニチャネル・リテイリングと物流・ITの役割」、伊藤忠テクノソリューションズ(株)長谷川真一氏と日本オラクル(株)大島 誠氏の対談記事より

最後に、オムニチャネルについてお話しましょう。

販売者と顧客とのつながり方を次のように、4つに分類することができます。販売者が単一の店舗のみで顧客と接点を持つのが「シングルチャネル」、店舗、カタログ通販、ネット通販など複数の接点が用意されるのが「マルチチャネル」、複数の接点で得られた情報が互いに行き来しあうのが「クロスチャネル」です。

2011年頃から「オムニチャネル」というしくみが現れてきました。サービス内容だけでなくデータまでがチャネルをまたいで融合し、さまざまな場所と機会で顧客との接点が生まれます。

わかりやすいように例を挙げましょう。日本ではセブン&アイが、オムニチャネルを全面展開しようとしています。グループにはデパートのそごうと西武、専門店LOFT、イトーヨーカドーなどがありますが、インターネットを利用して、タブレット端末からどの店の商品も買うことができ、全国18,000店のセブン‐イレブンで24時間いつでも商品が受取れるというしくみです。世界にも類のない小売店舗の連携であり、非常に楽しみです。

リアル店舗とネット店舗の連携が急速に進んでいるわけですね。オムニチャネルをはじめとする通販物流が高度化する中で、品数、品質、スピードのすべてをかなえる手段が求められているといえます。

ネット専業業者がリアル店舗をあえて持つという「逆オムニ」という傾向も見られるようになってきました。実物に触れる場所を作り、集客の拡大につなげようという狙いです。ただし、そこでは品物を売りません。日本では、スパイスライフというTシャツ屋さんがそれを始めています。

流行のキーワードをもとに、流通の新しい流れについて駆け足でお話ししてきましたが、少しでもお役に立てましたら幸いです。

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