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【内田洋行ITフェア2015in東京】 今、なぜ働き方変革なのか? その成功要因について

2016/1/18 [ワークスタイル,セミナーレポート]

私たち内田洋行「知的生産性研究所」は、コンサルタントとしていろいろな会社で働き方変革のお手伝いをしています。同時に、自社(内田洋行)で働き方変革の実践を行っています。これらの経験をもとに、なぜ働き方変革が求められるのか、成功させるためのポイントは何か、などについてお話させていただきます。

目次

  • 働き方変革の目的
  • 考える前に動いてみよう
  • 内田洋行の働き方変革
  • ありたい姿をリアルに描き出す
  • 「プロジェクトが社員を持ち上げる」体制づくりが成功のカギ

内田洋行ITフェア2015 in 東京にて

株式会社内田洋行 執行役員
知的生産性研究所 所長
平山 信彦

働き方変革の目的

変動するマーケットの中で生き残れる柔軟性を持ち、かつ強い組織をつくっていくというのが、働き方変革をする究極の目的です。どうすれば強い会社ができるのか、私たちは3つの評価軸があると考えています。

  • 1.創造的な組織をつくっていく
  • 2.組織の効率性(時間生産性)を上げていく
  • 3.組織の躍動性(活力)を高めていく

私たちの考え方の特徴は、3つ目の「躍動性」を重視していることです。平たい言い方をすると、1は「賢い組織」になること。2は「手際の良い組織」になること。これだけでは不十分で、「元気」でなければいけません。「賢くて手際が良くて元気な組織」にしていくこと、これを働き方変革の目的としています。

実現するためには、2つの視点からのアプローチがあります。

A.社員の意識や行動を変えていく。社員とマーケットやステークホルダーとの関係性を変えていくこと、組織風土の変革といわれる分野です。

B.社員の意識や行動を変えていくための道具立てとして、制度やしくみ、あるいはオフィスのワークスペース、ICTなどを整備していく。

この2つが両輪となって、組織の創造性、効率性、躍動性が高まり、強い会社ができていきます。Bの支援環境の整備は、ソリューションも豊富で適切な計画と投資により環境は整えられます。難しいのはAのほうです。私たちコンサルタントは、Aのお手伝いをします。

考える前に動いてみよう

組織風土変革の指南書には、よく「会社の風土を一新し、それによって社員の意識を変えていく。意識を変えれば行動に現れる」と書いてありますが、現実はそう簡単ではありません。私たちが現場でお手伝いをするときは、大上段に風土を議論する前に、「まず動きを変えてみませんか、トライしてみませんか」と提案します。トライしてうまくいったら定着させればいいし、うまく行かなかったら次の試みをすればよいのです。行動を変えることにより意識が変わり、結果として風土も変わっていくといったケースが多いように感じます。

試しにこんなことやってみたら、どうでしょう?

  • ・キャビネットを全部捨てて、書類の隠し場所を無くす
  • ・机を全部捨てて、自分の席を無くす
  • ・社内会議で PowerPoint を禁止する
  • ・会議の配布資料を禁止する
  • ・会議室は1時間しか予約が取れないようにする
  • ・仲が悪い部門のオフィスを一緒にする
  • ・全社員のスケジュールを公開しアサインフリーにする

よく誤解されるのですが、これはコンサルタントが押し付けた提案ではありません。お客様のディスカッションの中から出てきたものです。逆に私たちは、本当にやりますか、と確認する役割をすることのほうが多いかもしれません。

トライアルは全社ではなく、パイロット部署だけでやることもあります。こうした試みを実行することで、なるほど、こういうやり方もあるのか、こういう考え方もあったのかと気づくことが少なくありません。

ただしトライアルとはいえ、一部のメンバーが思いついて、それを全社員に強制するというやり方はうまく行きません。合意形成が必要です。やってみようじゃないか、という機運が生まれ、トライアルやその後の展開を進めていく結果、気がついたら会社の風土がガラリと変わっている、ということだと思います。

内田洋行の働き方変革

お客様の事例は守秘義務があって紹介できないので、弊社の実践のプロセスを例にとって、流れを紹介したいと思います。実践は、2011年の夏にスタートしました。

実践に至ったのは、言うまでもなく、より強い会社に変えていきたかったからですが、他にこんな理由もありました。

・自社で働き方変革を実践して、KPI(組織の活動を客観視するための指標)が上がっていくかどうか実証したかった。

・たまたまモデル部門になった200名ほどの営業部門が、半年後にオフィスを移転する予定だったので、タイミングがよかった。

移転やシステム導入などをきっかけとして起動するプロジェクトをイベントドリブン型といいます。この型のプロジェクトはイベントの1年から半年前ぐらいからスタートするケースが多いのですが、弊社の変革は半年前からという最短コースで進んでいきました。

自分ごと化を重視して、トップからは「働き方を変えて営業力を強化しよう」というキックオフ宣言だけが発せられ、何を変えるか、どう変えるかなどはすべて現場に考えさせました。

ありたい姿をリアルに描き出す

この部署は、オフィスの設計・構築を扱っている営業部門ですが、まず何をしたかというと、「自分たちが2年後、3年後にどうなっていたいか」という「ありたい姿」を描きました。いわゆる「To Be」というアプローチです。

下に示したコンセプトは、ワークショップを重ねながら現場のメンバーが一所懸命考えた、営業担当者としての想いがこもった言葉です。このプロセスで変革の目標感はある程度共有できたと思います。

しかし、抽象概念だけでは人は動きません。なぜなら、「カスタマーズ・パートナー」というコンセプトにしても、一人ひとりのカスタマーズ・パートナーのイメージはそれぞれ異なり、ベクトルが1つにならないからです。ベクトルをきちんと合わせるためには、コンセプトをもっと身近な日々の動きに近づけていく必要があります。

その手法を「シーンメイキング」といいます。毎日どういう動き方をしているのか、カスタマーズ・パートナーとなった営業は、そうではない営業と提案書の書き方はどう違うのか、チーム・ビルダーとなった営業は、そうでない営業と会議の仕方がどう違うのか、というような数百のシーンを描き出します。そのぐらいの細かさで、日々の動きの目標設定を行っていくと、ありたい姿をかなりリアルに共有できます。そこで初めて現状分析を行い、差分を測って、ありたい姿と現状をどう埋めるかという作業に入っていきます。

結果として344個の課題が見えてきました。344個の課題をいろいろな形で解決していくというのが、働き方変革のアプローチです。そのうち99個は現場だけでは解決できないものでした。全社のシステムや、人事評価のしくみ、内部統制のしくみを変える必要がある課題でした。これらはプロジェクトオーナーである役員へ報告し経営視点での判断に委ねました。残りの245個は自分たち現場で変えられるものです。これが全体の約7割を占めました。

「プロジェクトが社員を持ち上げる」体制づくりが成功のカギ

普通の会社には、組織の活力を高めたり、業務やコミュニケーションのプロセスを見直したりすることを専門とする部署はないので、多くの場合、分科会やワーキンググループでプロジェクトを進めるという形になります。弊社も5つの分科会を設置し、4年経った今もこの分科会は続いています。期毎に成果をレビューし、重点施策と体制を変えながら活動を継続しています。

これまでの成果を振り返ると、営業生産性の代用特性としているKPI(顧客との面談時間比率)が、変革前の24%から2年で50%へと倍になりました。今は40数%のところに落ち着いています。KPIを見ていくと、下がったときは要因を分析する機会になります。上がりすぎたときは他にしわ寄せがいっているので、抑える対策を講じることができます。

下のグラフはイノベーティブな業務(価値を生む業務)と効率化対象業務(アウトソーシングしたり、システムに置き換えたりしたほうがよい業務)の比率です。多くの組織でイノベーティブな業務の比率は低いのが普通で、弊社も最初は23%でした。それに対して効率化対象業務が7割以上占めていました。これを5:5にもっていくことを目標に、働き方変革を進めています。このテーマはBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の分野と考えられることが多いですが、働き方変革だけでもある程度の成果が得られるという実感を得ています。

社員の意識は、開始当初、上司や会社の方針をきっちり納得している社員が2割にも満たず、だいたい納得しているという社員も合わせて6割ぐらいでした。それを、縦方向のコミュニケーションや上司や部門のメッセージングの方法を変えることによって、現在は8割強のメンバーがほぼ納得しています。

しかし、右肩上がりは永続しません。変革は、同じやり方をずっと続けていけばよいのではなく、どこかでモードチェンジが必要になります。KPIを見ていくと、そろそろ踊り場に差し掛かってモードチェンジが必要なタイミングがわかってきます。弊社の場合も2年経ったときに踊り場を迎え、3年目はモードチェンジの期間になりました。変革活動を継続するのか止めるのかを含めて議論し、やはり次のステージへ行こうという合意形成をして、今4年目を迎えています。

働き方変革の成功要因は、社員が変革を自分のこととして捉えるかどうか、自分の問題として意識できるかどうかだと思います。「推進メンバーが方針を決めるので、社員はついてこい!」ではなく、「現場の社員がどうなりたいのかを考え、推進メンバーはその実現を支援する」ような体制が取れると、成功する確率が高くなると思います。

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