本題にはいるまえに、弊社の紹介をさせていただきます。
Amazonは、インターネット通販の会社です。Amazonで買い物をされた方はご存じと思いますが、何かを購入すると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といったリコメンド(おススメ商品)が提示されたり、購入履歴に応じておススメ商品の情報が届いたり、ITを活用したマーケティングが行われています。また、クリスマス商戦やタイムセールなどのイベント時、通常よりもアクセス数が急増するといった場合にも柔軟かつスケーラブルに対応できるIT環境を構築しています。自社でうまく機能しているITの仕組みを、プラットフォームとして広くお客様に提供するビジネスとして始めたのが、AWS(アマゾン ウェブ サービス)という、クラウドコンピューティングのサービスです。
必要な時に、必要なだけ、低価格で
クラウドコンピューティングにより、簡単に言えば「必要な時に、必要なだけ、低価格で、ITリソースが利用可能」になります。
つまりどういうことでしょうか。以下の図をご覧ください。
青い線が需要を、グレーの線が通常のオンプレミス(自社運用のシステム)のITリソースの供給量を、赤い線がAWSの場合の供給量を示しています。
たとえば、左上の図を見てみましょう。日中の業務トランザクションで出社時から退社時までしか使っていないシステムがあったとしても、オンプレミスの場合だと、一番負荷の高いピーク時に合わせてリソースを確保しているので、業務時間外の分が無駄になります。オレンジ色に塗った部分が普段は使わない、無駄なリソースです。AWSを使っていただくと、必要なときに立ち上げて、必要なスペックに合わせて使っていただけるので無駄がありません。
右上の図をみてみましょう。5年間で減価償却することを考慮して、5年後のピークを見据えてシステムを導入することが多いと思いますが、ピーク時に達するまでは、オレンジ色で示したように無駄が出てしまいます。AWSであれば、需要に合わせてその都度必要なリソースを追加していくことができます。
左下の図は、たとえばキャンペーンなどで予想以上のアクセスがあった場合、オンプレミスだとリソースの上限が決まっているためシステムがつながらなくなり、機会損失してしまうといった例を示しています。このような場合でもAWSを使用することでスケーラブルに対応することができ、機会損失を防ぐことができます。
このように、必要な時に必要なだけITリソースを確保できることが、クラウドコンピューティングの最大の利点です。
初期投資不要、圧倒的な低コストを実現
AWSは初期投資が不要で、従量課金で使った分だけ支払えばよく、たとえばAmazon EC2という仮想サーバのサービスでは、1時間1円からという大変低価格で利用が可能です。
この料金はサーバの代金だけではなく、システムを立ち上げる際のデータセンターの費用、インフラ構築費用、ハードウェア費用、電気代、物理ファシリティ、セキュリティ、トラブルの際の部品交換等保守サービスの人件費等もすべて含まれています。
これらの運用費も含めてオンプレミスの場合と比較すると、大変なコスト削減になります。
運用は、すべてAWSにお任せいただけますので、トラブル対応に追われることなく、本来の業務に集中していただくことができます。
現在、AWSは、アメリカ、ヨーロッパ、アジア等、世界各国16のリージョン(地域)でサービスを展開しており、42のアベイラビリティゾーン(データセンター群)を利用することが可能です。今後さらに、拠点を広げていく計画です。
またサービス内容も拡大しており、データセンター、サーバ、ストレージの提供だけでなく、現在70を超えるサービスを提供しています。
クラウドファーストが新しい常識に
これからは、クラウドコンピューティングが“新しい常識”、つまりタイトルでも示した“ニューノーマル”になると考えています。
たとえば、「新しいアプリを作りたい」という場合、まずクラウドのサービスを使って、より作らなくてすむようにする。あるいは、既にあるサービスを組み合わせて、あまり労力を使わないでスピーディに新しい仕組みを作れないかと考える。またあるいは、今使っているシステムも、サーバの保守切れのタイミングや、ソフトウェアのバージョンアップのタイミングでクラウドへの移行を検討する。このように、まずクラウドを検討する=クラウドファーストという流れがすでにきています。
AWSの導入事例をいくつか紹介しましょう。
回転寿司のあきんどスシロー様では、皿にセンタータグが付けられていて、その皿がレーンを何周流れているか、どのネタが売れているかがリアルタイムで管理・分析できるようになっています。人気のネタが不足することなく、廃棄の無駄を極力減らすことにつながっています。
日本通運様では、グローバルにビジネスを展開する上で、世界共通のシステム基盤を作りたいということで、AWSを採用していただいています。
また、スマートニュース様では、お客様が一番欲しているニュースを配信するサービスをAWS上で実現しています。
キャノン様は、オンラインプリンティングのサービスをAWSで実現しています。
このように、いろいろな企業様が様々な用途でAWSを導入しています。世界で100万を超える、日本でも数万の、業種業態を問わず多くのお客様に利用していただいています。
基幹系システムもクラウドコンピューティングで
スーパーカクテルなど、ERPをAWS上で稼働させた場合のメリットについてお話したいと思います。
AWSには、仮想サーバのサービスとしてAmazon EC2がありますが、お客様の用途に合わせて最適なものが選べるようにインスタンスファミリーという形で選択肢を用意しています。(下図参照)
さらにAmazon EC2は、利用状況に応じて、スペックを簡単に変えることができます。
オンプレミスでERPを構築する場合は、5年後の業務量を想定して机上で緻密に試算をしてからサーバの調達に取り掛かるのが一般的ですが、その作業だけで何カ月もかかります。AWSなら簡単にスペックを上げたり下げたりできるので、まず導入してから最適化をすればよく、大変スピーディにプロジェクトを進めることができます。
急激なビジネス変化があったときでも柔軟に対応できますし、従量課金なのでコストも使った分だけしかかかりません。
AWSならトラブル時の待機サーバも不用
基幹系システムで求められるものの一つに「可用性」があります。Amazon EC2は、「オートリカバリー」という機能を提供しており、ハードウェアに障害があった場合はAmazon CloudWatch Alarmが検知し、別の異なるハードウェア内にお客様の仮想サーバを立ち上げることができます。
オンプレミスの場合、1台しかサーバがないと部品交換をしたりシステムが立ち上がるまでの時間がかかり、サービスの継続が困難になります。それを回避するために待機サーバを持っておかなければならず、2重投資になってしまう。
AWSなら待機サーバも必要ありませんし、ダウンタイムも最小限に抑えることができます。
ストレージプラットフォームも、お客様の処理特性に応じて選んでいただけるよう多くのサービスを用意しています。(下図参照)
この中でもAmazon EBSというブロックストレージのサービスを紹介します。
Amazon EBSにも、いくつかタイプがあります。(下図参照)
お客様にとって必要なものを組み合わせることで、コストパフォーマンスが高く、かつ安定したストレージ性能も享受していただくことができます。
AWSなら、コスト削減と高性能が得られるだけでなく、運用面でも省力化を図ることができます。具体的には、たとえばAmazon EBSには「スナップショット」という便利な機能があります。これは、あるタイミングのディスクのイメージをスナップショットとして取る機能で、これがバックアップイメージになります。もし、ディスクトラブルがあったら、スナップショットを取った時点に戻すことが可能です。それだけでなく、スナップショットのイメージから、別のディスクを作成することも可能です。別のサーバにくっつけることで、たとえば本番機のイメージを使ってテスト機をつくることも容易にできます。さらに、バックアップデータを遠隔地に送ることもできます。
高いセキュリティを確保
セキュリティはAWSの最優先課題です。AWSは、多数の第三者認証の取得や保証プログラムに準拠していますので、安心してご利用いただけます。
また、機密データやアプリケーションを保護する豊富なセキュリティサービスと機能を提供しています。たとえば、「Amazon VPC(仮想プライベートクラウド)」という機能は、AWS上にお客様独自のネットワーク環境を作っていただけるサービスです。「仮想プライベートクラウド」という独自空間を作ることで、全くクローズドとなるため、セキュリティ上、心配なく使っていただけます。
スーパーカクテル on AWS導入事例〜ネイチャーズウェイ様
ネイチャーズウェイ様は、化粧品の企画製造販売会社です。
材料の調達、購買、生産・流通加工、出荷、販売、受発注のプロセスをスーパーカクテルで管理し、その業務データをDataSpiderで連携させDr.Sum EAによるBIシステムで分析し、業務改善に生かすという仕組みを2011年にオンプレミスで構築しましたが、(1) ハードウェアの保守期限に追われる、(2) バージョンアップ検証用の新サーバの調達、(3) バックアップの仕組みへの不安、(4) トラブル復旧時の手間といった課題があり、今回のハードウェア更新のタイミングでAWSに移行しました。
当初、ネイチャーズウェイ様ではクラウドに移行するにあたって、セキュリティに対する不安がありました。しかし、Amazon VPCを提案したところ、これなら安心だと納得いただけました。
また、同社では、オンプレミスのときにはアプリケーションサーバが2台、DBサーバが1台、合計3台構成でスーパーカクテルを稼働していました。AWS導入によって、サーバスペックを簡単に変えられるので、アプリケーションサーバ1台とDBサーバ1台の2台に削減することができました。
また、オンプレミスのときには、サーバ台数を増やしたくないために1台でDr.SumとDataSpiderの2つのアプリケーションを動かしていました。しかし、AWSは柔軟にスペックを変えられるため、アプリケーションごとに最適な構築が可能になりました。
AWS導入によってインフラ以外の効果も
結果的に、AWSの導入によって課題のすべてを解決することができ、次のような成果を得ることができました。
- (1) ハードウェアの保守期限からの解放
- (2) サイジング不要で必要な時に簡単にサーバを構築
- (3) AWSの標準機能で定期バックアップ
- (4) トラブル復旧はどこからでもできる
インフラ面以外にも、クラウドを活用することによって、非常によい変化が現れました。
具体的には、システム部門において、マインドの変化が見られました。(下図参照)
特筆したいのは「視点」の変化です。基幹システムは安定稼働が大事なので、情報システム部門は常に、システムをダウンさせない=現状維持やトラブル対処に追われていました。しかし、今は、それらはAWSに任せればいいので、情報をいかに経営に活かすかという本来の業務に集中でき、前向きな未来視点を持てるようになりました。
AWS導入でビジネスを加速
今回のITフェアの場で、内田洋行様から新しいサービスとして、「スーパーカクテルクラウド マネージドサービス」という「完全マネージド型スーパーカクテル on AWS」を発表していただいております。これまでご紹介してきた「クラウド利用型スーパーカクテル on AWS」は、Amazon EC2上にスーパーカクテルを構築し、運用・保守をお客様自ら実施するものでしたが、完全マネージド型は、AWSネイティブサービスも活用し、運用・保守まで内田洋行様にお任せというものです。
さらにERPをAWS上に移行することで、ERPと連携したビッグデータ、IoT、モバイル活用といったイノベーションの早期適用もシームレスに進めることができるようになります。
基幹系システムをAWS上で稼働することによるメリットを述べてまいりました。
その利点は、以下の5点に集約されるかと思います。
- (1) 安定稼働(性能と可用性)
- (2) ビジネス変化への対応力
- (3) 強固なセキュリティ
- (4) 低コスト
- (5) イノベーションの早期適用
今、基幹系システムは、オンプレミスではなく、クラウドに載せるのが新しい常識になっています。
業務標準を作る上でスーパーカクテルを採用し、さらにその基盤にはAWSを活用していただき、ビジネスの加速につなげてほしいと思います。