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【食品ITフォーラム2017in東京】 デパ地下・エキナカ この先の食マーケットとは

2017/4/12 [食品,セミナーレポート]

モノからコトのニーズへ、デパ地下ブームをはじめ、この10年間の食物販マーケット成長を牽引して来た惣菜・スイーツのカテゴリーが大きく変化しています。現在進行中の開発プロジェクトや様々な新規開業や売り場改装の現状分析を通じて課題を抽出し、今後を予測します。また、お客様の潜在的ニーズ、トレンド・潮流を把握し、変化するこの先のマーケットスタイルの創造についてご紹介します。

目次

  • スイーツマーケットの今後の活路
  • 惣菜マーケットの現状とトレンド
  • 生鮮食品の次なる一手

食品ITフォーラム2017 in 東京にて

有限会社テイク・アソシエ
代表取締役 元東急百貨店「東急フードショー」統括マネージャー
樋口 武久 氏

現在、有限会社テイク・アソシエの代表取締役として、食品業界の企業様を対象に売り場づくりや商品のブランディング等のコンサルティングを行っています。以前は百貨店業界で25年間、経験を積んできました。2000年の「デパ地下ブーム」の頃、渋谷の東急百貨店で「東急フードショー」というプロジェクトでは開発リーダーを務めました。

その頃、女性の社会進出やライフスタイルの変化などによって、贈答品から日常品へとニーズが変わり、品ぞろえの多様化、スイーツ・惣菜マーケットの拡大など、食料品マーケットは大きく様変わりしました。以前は食料品売り場といえば、デパ地下か、せいぜい駅ビルの地下くらいでしたが、それ以外の場所にも拡大しつつありました。

百貨店業界の業績が低迷し大きなリストラなどもありましたが、今後、食物販はデパ地下という枠を超えて面白い形に広がっていくのではないかという予感がし、2003年に食物販のコンサルタントとして独立する決意をしました。

予測が当たり、2005年にはエキナカ1号店ができ、この10年間、スイーツやお惣菜を中心に食料品マーケットが急成長してきました。しかし10年を経て今や飽和状態にあります。いつまでも10年前のデパ地下ブームの延長戦では戦えません。次の一手を打たなければ生き残ることができない時代になっています。

起業して以来13年間、さまざまな売り場を見てきました。その経験から、食品マーケットの現状、課題、今後についてお話ししたいと思います。

スイーツマーケットの今後の活路

(1)スイーツマーケットの現状

当社が手掛けた東武百貨店池袋店の「ハナサンテラス」の事例を紹介します。JRと副都心線の駅へのアクセスとなる地下入口ですが、せっかくの好立地にかかわらず、集客には苦労していました。以前は大型のスイーツ店が1件とサービスカウンターがありましたが、これを昨年7月に、スイーツイベントスペースに改装しました。百貨店にとっては顔となる入口なのでチープな印象とならないよう高級感のある什器を使用しています。

担当バイヤーが年間テーマを決め、2週間単位で品揃えや商品の配置を変えていく可変性が評判で、売上は好調に推移しています。しかも、店内の他店ともバッティングしません。

百貨店のエントランスは、いかに話題を呼び他と差をつけるか、各店で熾烈な争いをしているところです。しかし今や、このスペースを任せられる主役となり得る店がない時代になっています。そこで考えたアイデアが、複数のメーカーの商品を入れ替わり立ち替わり並べるイベントスペースだったのです。おそらく、都心の百貨店で、エントランスにイベントスペースを置いた例は他になかったのではないでしょうか。

(2)脱平場

平場とは、ショーケースをロの字型に並べた島型の配置のことです。4店舗で一つの島になっていることが多いです。この配置は、お客様が贈答品を買うときに店内を回遊して他店の商品と比較しながら買い物ができるという利点がありました。しかし、最近はこのような売り方が成功していません。

平日夕方の都心のある駅ビルでは、本来はピークの時間帯なのに閑散としています。贈答品を買うという目的がある人には平場の売り場は便利ですが、目的買いでない人には閉鎖的で近寄りがたい。最近の顧客は、ぶらぶらと売り場を見ていいものがあれば買うという方が多い。その場合、専門店集積の対面販売はお客様にとってプレッシャーになる場合もあると考えられます。

A.対面販売方式ではなく顧客が自由に選んで買える

仙台三越の売り場では、平場ではなく、顧客が自分で見て商品を選べる売り場になっている。贈答品というよりもちょっとしたギフトを気軽に変える小気味のいいスペースになっています。目的買いでないお客様にとっては、接客されず自由に買えるほうがありがたい。ここに、大きなヒントがあると思います。全部平場をなくすわけにはいきませんが、セルフの売り場を増やすことは検討すべきではないかと思います。

B.セレクトショップでばら売りのお菓子を自由に組み合わせて買う

この事例は、カルビーの期間限定イベントです。

カルビーのお菓子だけでなく、他メーカーのお菓子も並んでいるセレクトショップです。昔懐かしい、メリーゴーランド型の什器を使ってお菓子をばら売りするコーナーもあります。ばら売りの菓子はお洒落な簡易袋に詰めて買うことができます。客の様子を見ていると、簡易袋に詰めたばら売り菓子を複数買っている女性が多い。これは、自家需要だけではなくプレゼント用のプチギフトとして買っていると思われます。ここにもヒントがあると思います。

(3)パーソナルギフトの細分化

ここ10年でパーソナルギフトは大きく成長しました。

儀礼ギフト、アニバーサリーギフト、手土産のほか、日常のビジネスギフト(儀礼ギフトとは違うカジュアルなギフト)、デイタイムギフト(ちょっとしたスイーツを買って友人などと一緒に食べる)、プチギフト(安価なものを買ってばらまく)、自分へのご褒美など、パーソナルギフトは細分化しています。

私が最近注目しているのが「意味のないギフト(理由のないギフト)」です。たとえば、たまたま見ておいしそうだから、おいしそうな匂いがしていたから買う、自分だけで食べるよりは誰かと食べようと思って数個買う。そういった、とくに理由がないギフト。こういう需要がこれから増えていくのではないかと考えています。

今後はこれまでのような、単に価格別の品ぞろえや、いろいろなものを詰め合わせたアソートギフト、日持ちがするといった“万能ギフト”の市場は今後縮小していく。代わりに求められるのは、「高感度」「シンプル&軽快」「幅広い世代から支持される」ものではないでしょうか。

惣菜マーケットの現状とトレンド

(1)惣菜専門店の現状

お惣菜もこの10年間成長してきました。

19:30、ピークの時間帯なのに、まるで量販店のように値下げのシールがべたべたと貼られています。従来はむやみに値下げをしないのが百貨店の惣菜売り場でしたが、今は値下げが常態化しています。

理由は2つあります。1つは、労働時間の短縮によって帰宅時間が早くなり、売上のピーク時間も早くなっていること。もう一つはマーケットが飽和していること。デパ地下、駅ビル、駅ナカなど、どこでもお惣菜を売っていて供給過多になっている。そこで値下げの時間帯を早く仕掛けないと廃棄分が増えてしまう。しかし、値下げすればするほど利益は下がる。廃棄量が増えるのはエコ的にもよくありません。

(2)フードホール

そのような中で、最近トレンドとなっているのが「フードホール」です。フードホールとは、オーダーしたものをその場で作ってもらいイートインもテイクアウトもできるお店で、欧米では多いスタイルです。

新宿NEWoManの中にSUSHI TOKYO TEN、という飲食店があります。同店のテイクアウトの店が改札の中にあり、イートインできるスペースと少し離れているという弱点がありましたが、これを逆手にとって、「すし屋のはなれ」という店名にし、寿司職人が握った寿司をすぐ販売するというスタイルにし、好調な売り上げを上げています。

従来のテイクアウトの寿司店は商品を切らさないように作りだめしておくのが一般的でしたが、ここでは作りおきはしません。売り切れたらそれきりです。値下げもしません。

また、朝は軽い稲荷寿司やおむすび、昼はランチにできるような小どんぶり、夜は豪華なもの、というように1日の中で品ぞろえを変えている点も人気の理由です。この店のロス率は1%という驚異的な数字を出しています。

これらの例のように、テイクアウトだけでなく、イートイン席を作ってタイムリーに商品を出すという売り方は、値下げ合戦にならず、廃棄率も減らすことができます。今後の新しい方向性ではないでしょうか。

イートインで食べるものとテイクアウトで持ち帰るものが同じ商品では面白くない。イートインは、そこでしか食べられないメニュー、テイクアウトは多人数で食べられる、持ち帰りしやすいものなど、すみわけの工夫も必要です。

(3)パッケージデリ

持ち帰りのお惣菜については、最近、パッケージデリが売れてきています。量り売りではなく、最初からパッケージに数種類のお惣菜が詰めあわされたものです。

百貨店のお惣菜売り場と言えば対面の量り売りが一般的ですが、対面販売は、買い手からすると、さまざまな恐怖心があるものです。

たとえば一人暮らしの女性が自分が食べる分だけ買う場合、わびしいと思われるのではないかと思う。男性の場合、100gのお惣菜がどのくらいの分量なのか見当がつかない、聞くのも面倒で買いづらい。

対面ではなく、パックになっているものを自分で自由に選べたほうが買いやすい。スーパーのものよりも材料もいいし盛り方も工夫されている。陳列棚もスーパーのものよりもおいしく見えるように並べられている。

こうした理由から、パッケージデリが売上を伸ばしているのです。

生鮮食品の次なる一手

女性の社会進出が進み、お惣菜市場は成長しましたが、生鮮食料品は苦戦しています。デパ地下や駅ナカに生鮮食品店があっても、仕事の帰りにこれを買って帰宅してから料理をするというのは難しい。この流れはもう変えられない。生鮮食料品は試行錯誤の時代だと思います。

ららぽーと湘南平塚店のグランドフードホールは、レストランプラス、食材のテイクアウトのサービスを展開しています。ここで食事もできるし肉を買って帰ることもできます。

他の新しく開業した施設でも、カット野菜など、すぐ調理できる食材を増やしたり積極的にトライアルしていますが、まだこれで大成功したという事例は出ていないので、今後どうなっていくか注目していきたいと思います。

以上、2016年にオープンした施設を参考にしながら、今までどおりのデパ地下の売り方では通用しないというお話をしてきました。今日の話の中にヒントがありましたら幸いです。

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