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第29回 諦めずつなげていく先に必ず光はあると信じて

2013/12/24

やらなければならないことは何かということは明らかである。それを教える方法も知っている。実際に行動も起こしている。システムも作り上げている。それでも思うように結果が出ないことがある。だからといって、それを全て自分に能力がないと自身を責めても仕方がない。自分を責めても何も変わらない。それよりも諦めないことが大事だ。自分を責めて、自身の能力がないからと諦めてしまった時に、我々は迷路に迷い込むか、行き場を失い行き詰ってしまうのだろうと思う。

現在、私たちの職場における最大の悩みは人材不足である。そうであるがゆえに、採用募集に応募があった人については、大丈夫かなと首をかしげるレベルでも、とりあえず採用してしまうということもあるやもしれない。また良い人材と思って採用した人が、実際には適性を疑うような人であったことが分かっても、簡単にやめてもらうことができないという一面もある。夜勤を含めたローテーションを回すには人数が必要で、その人数が足りなくなれば、無理に回すローテーションによって、有能な人材も勤続疲労を起こしてリタイヤしてしまう恐れがある。

そこでは、今いる職員で、スキルのやや劣る職員をどう変えていくのかという課題が生じて、採用後の教育のあり方も問われてくるわけだが、いかんせん、どのように丁寧に、きめ細かく教えても、理解してくれない人もいるのが現状である。このことに対する処方箋はないと言っても過言ではなく、所詮、きゅうりの種からは茄子は育たないというしかないのである。

それでもなおかつ、あきらめないで何かをしようと思えば、トップダウンの教育システムの中に、それとは一線を画した方策として、職員自身が何かを考えて、身につまされて感じ、考える機会を創ることが大事かなと思う。それだけで解決する問題ではないが、そういう場でスキルが上がる人もいるのだから、機会を設けないということはあってはならないだろう。

例えば、当施設の看取り介護終了後カンファレンスもそういう場の一つと言えるかもしれない。看取り介護終了後カンファレンス自体は、僕からのトップダウンで開始することを決定した。その時には、何を話し合うのかよく分からないという声が多く、カンファレンスの場で下手なことをいうと叱られる結果だけに終わるのではないのかという声もあり、そもそもカンファレンスを行うことにどう言う意味があるのかと反発の声が強かった。しかしどのような評価をしても良いし、それに対して施設長がクレームを付けることはないとし、自分たちが行ったことを、事後にきちんと評価することが必要だということを繰り返し説明した。その結果、回を重ねるにつれ職員の意識に変化が見られてきた。そのことは地域の研修会などで、職員自身が研究発表などとして発言していることだが、以下のような効果として表面に現れている。

・今までは対象者が亡くなるまで教えてくれていたと感じていた事が、カンファレンスを通して亡くなったあとでも教えて下さる事の多さ、その大切さを改めて痛感した。

・打ち出された課題を一つ一つ改善していくためには、どんな事をしたらよいかと具体的に考える事ができるようになってきた。

・対象者の最後のカンファレンスは反省・後悔するためだけのものではなく、緑風園で生活している方たちに、これから活かす・繋げるためのものである、と思うようになってきた。

・精神面・技術面の向上を目指そうとするスタッフの前向きな姿勢が養われてきた。

・カンファレンスという他職種との率直な意見交換の場で、自分の意見をしっかりと伝える力をつけることができるようになってきた。

・看取り介護になってからの援助よりも、日頃の援助こそが大切であることが再確認できるようになった。

・特別と思っていた援助を、当たり前の援助に変える事こそ「あきらめない介護」に繋がるという事を知った。

・家族と一緒に「その方がその方らしく生きるために何ができるか」を考えたいという気持ちが強くなり、普段からの関わりを大切にするようになってきた。

・ほんの小さな「気づき」を行動に変える力がついてきた。→一番近くで気付く人、一番近くで代弁する人としての介護職員の役割が肌で感じ取れるようになった。

「あきらめない介護」や「一番近くで気付く人、一番近くで代弁する人」というフレーズは、僕の講演でよく使う言葉であるが、自分の施設の職員が、普通にその言葉を使えるようになっただけでも成長であると感じている。このように職員自身が考え、新しいことを決めていくという機会が随所にあることにより、仕事は面白くなるし、その中で専門職としてのスキルアップの動機付けも生まれるのではないかと思ったりしており、人材不足、知識不足を嘆いてばかりいないで、できることから始めて、できることを続けて、できることを新たな挑戦につなげていきたいと思っている。

しかしながら人材を確保する国を挙げての対策は急務であることは忘れてはならない。

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