HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話  > 第49回 小規模通所介護事業所に迫られる決断

U+(ユープラス)

U+のTOPへ

mssaの介護・福祉よもやま話

コラムニストの一覧に戻る

第49回 小規模通所介護事業所に迫られる決断

2015/09/14

東京商工リサーチが発表した報告によると、2015年1-4月の老人福祉・介護事業の倒産は31件(前年同期比63.1%増、前年同期19件)にのぼり、著しい増加をみせたという。その内訳をみると、「訪問介護事業」が12件(前年同期比50.0%増、前年同期8件)で最も多く、次いで施設系のデイサービスセンターなどを含む「通所・短期入所介護事業」が11件(同120.0%増、同5件)と続き、いずれも増勢している。従業員数別では、5人未満が21件(前年同期比133.3%増、前年同期9件)で、小規模事業所の倒産が全体の約7割(構成比67.7%)を占めた。また、2010年以降に設立した事業所が19件(構成比61.2%)と6割を占め、設立から5年以内の新規事業者の倒産が多かった。このように小規模かつ新規事業者が倒産増加の中心になっていると報告されている。

しかしこの数字は恐ろしい数字だ。なぜならこれは介護報酬減額の影響が出る4月以前の1月〜3月を含んで4月までの数字だからだ。そうなると介護給付費が大幅に減額された影響は、この倒産件数には大きく影響せず、むしろ介護給付費の削減動向を見て、この事業に将来性を感じない人が増え、求人応募が減って人手不足となった影響が、この数字に色濃く反映されているように思える。つまり実際の介護給付費削減の影響による倒産件数の増加は、次の期間の調査でもっと増えるのではないかと予測されるのである。特に経営体力のない小規模事業所については、本年3月までの介護報酬では、通常規模事業所と比べて、管理経費が多くかかるとして、通常規模事業所の介護報酬に比して+16.3%〜+16.8%高く設定されていたが、小規模事業所の実際の管理経費は、通常規模事業所に比べて7.6%しか多くなっていないとして、その分が削減された。そのため4月以降の小規模事業所の報酬は、1割近く削減されており、介護給付費の支払いが請求後2ヵ月後れて支払われることを鑑みると、その影響は6月以降の運営に大きく影響する。例えば6月の賞与支給に支障を来たしている事業所も多かったのではないかと言われている今日、この東京商工リサーチ発表はショッキングな数字であると言える。その中で小規模通所介護事業所は、どのように生き残っていくのだろうか?

人の配置を増やして、利用者の増加を図ろうとする戦略もあるのだろうが、通所介護事業所の数がこれだけ増加し、地域内での競合が厳しい中で、その戦略が成り立つのかが問題となるし、そもそも利用者増に対応するだけの人員配置が可能かということが、枯渇する介護人材という問題を抱える中でかんがえられなければならない。そうなると、この厳しい状況をじっと耐え、周囲の小規模通所介護事業の倒産・撤退を待って、そこで働いていた従業者を雇用し、利用者を取り込み、事業継続するということはあり得るが、それは経営体力のある大きな法人だけがとり得る戦略と言えるのではないか? 結果的に今年度の決算期までに、経営基盤の弱い小規模事業所が数多く事業撤退していく可能性もあり、予断を許さない状況が続くだろう。

毎日の利用者数平均が20人程度の小規模通所事業所の場合、本年3月までと、4月以降の収益を比較すると、年額300万円以上の減額となると考えられるが、この金額を利用者の増加で補っている事業所もあると思う。しかしそうした事業所を含めて、来年の4月まで新たな決断が迫られている。それは利用定員を18人以下に設定して、地域密着型通所介護となるか、18人を超える定員として、現在と同じく都道府県指定の事業所とするかという決断である。しかし後者の場合は、今年度の月平均利用者数が300人以下となっても、来年度から小規模通所介護の報酬は算定できない。なぜなら都道府県指定の通所介護の報酬は小規模型がなくなり、通常規模以上の報酬区分だけになるからである。(来年度からの都道府県指定通所介護事業は、前年度の3月を除く月平均利用者数が750人以下であれば、すべて通常規模型報酬となる。)

現在の小規模通所介護の報酬が算定できるのは、地域密着型通所介護のみで、それは前年度の月平均利用者数による区分ではなく、定員数による区分となるのである。よって現在、利用者定員を19名以上に定めて、前年度の月平均利用者数が30人以下で、小規模通所介護費を算定している事業所は、定員変更しない限り、今年度の月平均利用者数が300人以下でも、来年度は通常規模型通所介護費を算定しなければならない。そうなると利用者数が同じであれば、来年4月からは、年額でさらに300万円以上の減額となる。それに耐えうる経営基盤となっているだろうか。そうであれば、今年度中に、定員変更をして、4月から地域密着型通所介護の「みなし指定」を受けるという選択が必要になる事業所も多いだろう。

一方、定員18人以下の事業所については、特に届け出を行わなくとも、来年4月以降は「みなし指定」で地域密着型通所介護として、本年度と同じ報酬を算定することになる。地域密着型サービスとなった以降は、運営推進会議を立ち上げて、実施する必要があるが、この開催回数についいては6ヵ月に1度以上(療養通所介護は12ヵ月に1度以上)とされている。これは認知症対応型共同生活介護や、小規模多機能型居宅介護が、2ヵ月に1度以上とされているのと比べて少ない頻度となっているが、この理由は、市町村の事務負担を軽減するためとされている。こうした一連の状況を踏まえた上で、現在、小規模通所介護費を算定している事業所の経営者には、大きな決断が迫られているのである。

上記のコラム購読のご希望の方は、右記の登録ボタンよりお申込みください。

登録はこちらから