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第63回 ケアマネジメントの利用者負担導入議論を斬る

2016/11/14

ケアマネジメントの利用者負担(居宅介護支援費の利用者負担)導入について、「利用者のケアプランへの関心が高まり、質の高いケアマネジメントが推進される」 という意見がある。僕はこうした考え方については全くもって理解ができない。

ケアプランの関心が、自己負担のあるなしに左右されると考える根拠は何だろう。利用者も家族も、ケアプランに関心のある人は、自己負担の有無に関係なく関心を持つし、ケアプランに関心の無い人は、お金がかかろうとかかるまいと、関心は持たない。それとこれとは全く別問題である。仮にケアプランに関心がある人がいたとしても、その関心が向けられる先は、質の高いケアマネジメントとケアプランによって自立支援の理念を達成されることではなく、「自分が望むサービスを使えるのか、費用もそれなりに納まるか」ということである場合が多い。ケアマネジャーに対し「良い事業所を選択してほしい」と希望する際にも、良い事業所の意味が、自分にとって都合よく、自分の望むようになんでも言うことを聞いてくれる事業所と担当者という意味であることも多いのだ。

利用者のこうした希望は、一概に否定できるものではないが、同時に表明された希望とニーズが合致しない場合には、きちんとそのことを説明して、正しい方向性に利用者の視線を向けていくことが品質の高いケアマネジメントということになる。このときに居宅介護支援費の利用者負担金のあるなしは、ほとんど影響がない。むしろ「そうは言っても、それは必要のないサービスですから、そんなものを使うよりは、こうしたほうが○○さんにとって、良い暮らしに結び付きますよ。」という助言が受け入れられやすくなる因子のひとつが、ケアマネジメントに自己負担金がないということなのである。

利用者の権利意識は、自分が望むサービスを使うという方向に向けられる傾向にあり、暮らしが良くなるという方向には向かないことが多い。ましてや介護保険制度の理念である自立支援に目を向ける人はほとんどいないと言ってよい。利用者が介護サービスを使う際に、最初に考えることは、暮らしが良くなるということではなく、使えるサービスがあるなら利用したほうが得であるということなのだ。自立支援が暮らしの質を向上させると考える人など、まずいない。それより自分の経済事情や身体状況を考えて、自身の損にならないようにサービスを使いたいという意識が先行しがちである。よって居宅介護支援費の自己負担が導入された場合は、こうした権利意識がより強まることが予測され、例えば不必要と思える家事代行も、お金さえ払えばそうしたサービスを使えるのに、自分が支払って雇っているケアマネジャーが、なぜ自分の言うことを聞いて、望むサービスをプランニングしないのかという不平・不満を生みやすくさせる。しかも一連の給付制限は、居宅介護支援事業所の顧客が減るという状態を生むのだから、顧客確保に精力を傾けねばならないケアマネジャーは、ケアマネジメントの質より、顧客である利用者の要求をすべて受け入れようとする傾向が強まる可能性がある。その結果、マネジメントに関係なく、利用者の希望のみを重視する、「御用聞きプラン」が増えることは目に見えており、その傾向を居宅介護支援費への自己負担導入が一層あおることになる。よって居宅介護支援費の利用者負担導入は、ケアマネジメントの質を上げることにはならない。

介護サービス関係者は、介護サービスの消費者たる利用者が、自分たちと同じ目線で制度や法令に通じていると勘違いしていないか?そして消費者としては、当然持ちうる、ある種の「わがまま」を無視しすぎているのではないだろうか。そもそも利用者および家族のケアプランへの関心の高さによって左右されるケアマネジメントのあり方って、それ自体が問題だろう。そんな考え方に理解を示すケアマネジャーもどうかしている。

むしろそのような考え方に関しては、「ケアマネジャーを馬鹿にしているのか」と怒るべきだと思うのだが・・・。そうではないところに、この制度や有資格者の問題点があるのかもしれない。

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