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第352回 増加する個人情報流出関連の相談

2015/05/25

消費者センターなどに寄せられる相談で、「自分の個人情報が漏れているのではないか」という内容が急増しているようだ。消費者庁のまとめによると、全国の相談窓口に寄せられる件数は、2014年度は集計作業の途中段階で、過去最大の5万7000件を突破したという。13年度の4万7910件から、およそ1万件、20%の増加である。

急増している原因は昨年のベネッセ事件の影響である。

典型的な相談の内容は「あなたの個人情報が漏れているので削除の必要がある」として、手数料の金銭をだまし取る詐欺事件だという。「消費生活センター」や「国税局」などの公的機関を名乗って電話をかけてきて不安をあおる手口である。高齢の女性が被害にかかるケースが多いそうだ。

ベネッセ事件のマスコミ報道で、「個人情報が漏れていると大変なことになる」と、過剰な不安をもつようになっているが、一般的に個人情報が流出しても、ただちに危険な状態になっているわけではない。クレジットカード情報やネット通販、ネットサービスのID、パスワードなどが漏れればただちに対策を打たなければ危険だし、実害が生じるが、流出しても実害に結びつきにくいものも多いので、いたずらに不安がらずに、冷静に対応してもらえば、こうした詐欺にかかることは少なくなるだろう。

個人情報は「どんなものでも洩れれば大変だ」と錯覚しないことが重要である。

同様に、誤解を広げそうなのがマイナンバー(社会保障と税の共通番号)である。マイナンバーを厳重に管理するように説明する際に「漏れると危険だ」と不完全なメッセージを伝えると、これも不安をあおって錯覚を生み、お金をだまし取ろうとする詐欺師の小道具に使われてしまう。

マイナンバーそのものは個人の「氏名」と同じでそれ自体は危険なものでも何でもない。何かの個人情報と結びついて意味が出るが、当分は、社会保障と税金関連、災害対策の業務以外には使われない。また、これらのデータは、業務ごとに別個のシステムで管理されているので、どこかに統合して保管されているわけではない。データを連携して使う際には、その都度、中継する情報提供ネットワークシステムにリクエストして、限定してアクセスすることしかできない。だれがいつ、どのデータにアクセスしたかは自動的に記録され、不安な人は自分のデータにアクセスした記録をチェックできる。

また、社会保障と税、災害対応以外に利用したり、あるいはデータを取得、保管することは法律違反で厳重に処罰される。マイナンバーは厳重に保護されるので、そこから人に知られたくないプライバシー情報が洩れることもないし、「洩れているので大変だ」とあおる人がいても、それは間違いか、詐欺なので相手にしないことである。洩れたマイナンバーを自分は持っている、とか、削除するなどというのは、全く意味のない嘘である。

マスコミ報道で、マイナンバーについて個人のプライバシーの危機であるような不安をあおる記事もたまに見かけるが、記事を書いた記者は仕組みについて全く無理解だと言わざるを得ない。マイナンバーを取り扱う企業や行政は、目的外に使用したり、管理に失敗して複製を作られたり、流出させれば、管理義務違反として厳罰が待っているので、企業にはリスクがある。組織的に安全措置を講じ、セキュリティを強固にし、従業員の研修を徹底する必要がある。しかし、マイナンバーの当人は安全に守られるように仕組みが作られている。ちなみに、筆者が理事長を務めている一般社団法人・日本個人情報管理協会などで個人を対象にした講習や資格認証のプログラムがあるし、同様の講習会が各地で企画されているので従業員教育の機会は豊富にある。

正しい知識をもち、誤解や錯覚に陥らずに、冷静にマイナンバー時代を迎えてもらいたい。

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