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第385回 安全かプライバシーか?勝負あった消費者の選択

2016/09/05

報道によると、「防犯カメラ」の普及がすさまじいようだ。量販店では2万円程度のカメラが売れ筋となって多様な品ぞろえを進めているそうだ。

ここでは「防犯カメラ」と呼んだが、周知のように、目的によって呼称はいろいろ変わる。一番、抵抗を感じる人が多いのが「監視カメラ」である。「プライバシー侵害」「警察国家」などの用語を駆使してその設置に反対してきた人たちがいた。前向きな温かいものでは、お年寄りや幼児などの無事な様子を遠くからうかがう便利な道具として、「見守りカメラ」の呼び方もある。

呼び方はまちまちだが、デジタルカメラによって撮影する動画データを無線などによって離れた場所に送り、様子をうかがう、という機能がある。

カメラが高価だったころには「防犯カメラ」のような用途が主流だった。ビル施設の夜間警備などで管理室のモニターに多数の地点を順次映し出し、異常がないかリアルタイムに監視する道具にしていた。少し価格が下がって無線も利用しやすくなると、歓楽街や人通りの少ない道路に設置する街頭カメラ、コンビニなどの小売店店内、エレベーター内監視カメラのように、室内の安全や万引きなどの犯罪行為の発見などにリアルタイムに役立てるだけでなく、多数のカメラで動画像を記録して事件が起きた後などに再生し、犯行に関連した情報を確認するのに使うケースもある。

さらに、急速に価格が下がると家庭用、個人用である。

以前から玄関前や車庫の天井に取り付けて、人が近づくのを感知するとライトが点いてカメラで周囲をモニターする家が増えて来ていたが、自宅の部屋の中に備え付けてお年寄りや子供、猫や犬のペットなどの様子を見守る利用が急増しているそうだ。

利用者が急増するキーになったのが、画像を受け取る道具としてのスマートフォンの普及である。スマートフォン以前では専用のモニター、あるいはパソコン画面に映し出してカメラが撮影した動画像を見ていた。専用モニターは特定の場所でしか撮影した動画像を見られないし、パソコンも設定するまでの手間がかかる。ところがスマートフォンはポケットに入れて持ち歩いて、カメラで撮影している動画像をどこからでも簡単に呼び出してチェックできる。

街頭に設置した「監視カメラ」は「プライバシーの侵害」として猛烈な反対に出会った。しかし、街頭のカメラ、コンビニのカメラ、エレベーター内のカメラなどに残っていた動画像が、犯罪捜査や行方不明者の捜索に役立った。凶悪犯罪の早期解決の決め手になる事例が豊富になるに従ってカメラの設置を求める声が大きくなって、プライバシーの侵害を訴えるケースはめっきり減っている。

消費者は「プライバシー」を疎かにするわけではないが、それよりは「安全」を優先し、「利便性」を重く見ることが分かって来た。この点については、消費者の判定は明確になった、と言えるだろう。カメラの小型化、低価格化が進むにつれて、さらに新しい利用方法が編み出されるようになるだろう。

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