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第392回 マイナンバー流出に警戒心を

2016/12/12

個人情報保護委員会によると、昨年10月の個人番号(マイナンバー)通知が始まってから今年9月までの1年間に番号情報関連の漏洩は149件に上るという。意外に件数が多い。マイナンバーは電子行政の基礎として、行政の効率を飛躍的に高めるほか、マイナンバーカードはネットワーク社会で生活する「運転免許証」にも匹敵するといわれる重要な仕組みである。

マイナンバー制度の存立を危うくする行為は、社会秩序に対する破壊工作である。こうした行為には厳罰をもって対処すべきである。類似した事例で言えば、「ニセ札づくり」に相当する行為である。貨幣に対する秩序破壊は、社会の信用システム全体の危機を招くものである。国家は、その秩序維持のために執拗な捜査を行い、重要犯罪として重い刑罰に処する。マイナンバー制度への破壊的行為は同様である。

12月に入って、社内のネットワークに保管されていたマイナンバーの通知カードの画像にアクセスし、これを複製して同僚の数人と共有していた会社員が逮捕された、というニュースが報道された。事件そのものは今年の春に起きたようだが、発覚し、慎重な捜査の上で、逮捕に踏み切ったのが12月ということだ。ずいぶん慎重な捜査である。

通知カードの画像にアクセスしてコピーするという行為がどれほどの犯罪になるか、この会社員は理解していなかったかもしれない。動機は会社に抱いていた不満のうっぷん晴らしだったらしい。会社員はネットワークの管理権限をもっていて、女性の上司の通知カードの画像にアクセスできたようだ。その上司に対する嫌がらせを意図していたということだが、その嫌がらせは未遂に終わった。

しかし、犯罪は「マイナンバー法」違反である。嫌がらせが問題なのではなく、マイナンバーを取り扱える資格があるのは、会社の規則で指名された者だけである。それ以外の社員は他人のマイナンバー情報を取り扱っても保有してもならない。それだけでも、違反者には「3年以下の懲役または150万円以下の罰金を科す」とされている。

本人が犯したと自覚する罪よりもずっと重いのである。

この重さが十分に認識されていないのではないか。それが1年間で149件という漏えい件数につながっているのではないか。

マイナンバーの違法な取り扱いに対する罪の大きさを認識してもらうためには、実際に、重い刑罰の判例が積み重なって、ようやく認識されるようになるのではないか。だとすれば、149件も漏えいがありながら、その処罰の例が少なすぎる。「ニセ札」事件のように執拗な捜査を繰り広げてもらいたい。

日本の電子社会が健全に大きく発展できるかどうかは、マイナンバー法違反をどこまで捜査し、立件できるかにかかっているような気がする。

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