HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第401回 シェア経済目指す新サービス
2017/04/24
筆者がかつて奉職した慶應大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の現役学生やOBたちが新しいサービスを始めようとしている、と情報を提供してきた。「有効に活用されていない資源を役立たせる」という海外で普及している「シェアリング経済」の新しい方向がそこから読み取れる。
海外で急速に普及しているシェアリングサービスでは「無駄になっている自家用車の空き時間を活用する」サービスのUber(ウーバー)や「使っていない家庭の空き部屋を旅行者に提供する」民泊サービスのAirbnbが有名だが、日本では十分に理解されているとは言えない。
すでに普通に利用している資源(資産)で未利用の部分を第三者に提供する、というのが最近の海外のシェアリングサービスである。わざわざそのために車を準備する「カーシェア」や施設を新設する「民宿」とは本来は仕組みが異なるが、日本では双方とも併存しているのが実態だ。
従来はこうした未利用資源(資産)を提供する相手をタイミングよく見つけることができなかったのでこういうサービスは不可能に近かった。その壁を一気に取り払ったのがスマートフォンとクラウドである。手元のスマホ(またはパソコン)から簡単に、空いていて第三者に提供したい未利用資源(資産)をクラウドサービスに登録し、借り手の側もスマホ(またはパソコン)からクラウドの登録リストを閲覧し、都合の合うものをリアルタイムで探しだす。
利用後、借り手は提供者について評価を送り、提供者は利用者の評価を送る。これで不良な提供者、利用者を選別してゆき、安心・安全を保証する。
さて、筆者に情報提供してきたサービスは食品メーカーや食品卸店、飲食店、スーパー・コンビニなどの小売店で発生する「まだ食べられるのに廃棄される食品」のシェアリングサービスである。まだ食べられるのに廃棄される食品が発生したら、クラウドを通じて消費者に値引き販売、あるいは「こども食堂」や団体に寄付するために登録する。登録はスマホなどで、このサービスサイトに受け渡し場所や価格を記述する。利用者側はこの中から受け渡し場所、食品の種類、消費期限などをみてリクエストする。
もちろん、通常の流通価格より安く入手できる。提供側は店頭での安売りなどでブランド価値を損するリスクを負わずに換金できる。
サービス側は飲食店、レストランのケースで、提供側の設定価格の35%をシステム利用料として支払ってもらい、運用経費にする。また、収入の一部は国内外の社会貢献団体に送られる。
こういうシェアリングサービスのモデルである。
スマホとクラウドの登場で、だれでもどこからでも情報を発信することができる環境が整った。さまざまなシェアリングサービスが誕生する素地が出来上がっている。これからさらに多様なシェアリングサービスが登場するだろう。資源や資産の無駄を減らす新しい仕組みである。次々とこういうサービスが生まれることを期待したい。