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第407回 さまざまな「働き方改革」

2017/07/18

最近の日本経済新聞のトップ記事の見出しを見て、思わず手をたたいてしまった。タイトルは「休み方改革」である。働き過ぎの日本のビジネスピープルには「働き方改革」が必要である、と政府も必死に旗を振っている。しかし、この新聞のタイトルを見て、「働き方改革」は、まだ「働く」ことの意識が強すぎる、と反省した。本当に議論しなければならないのは「休み方」なのだった。

現在の休みの取り方は交代制が主流である。しかし、交代で休んでいると、休みの番に当たっていても、何か落ち着かない。自分がのんびり遊んでいる間にも同僚が仕事をしている。なにか背徳心めいたものを感じる。物心ついたころから、日本人は仲間との間で「共感」することになじんできた。その「連帯感」が美徳の1つなので、有給休暇の消化率が低水準のままで、なかなか休みが取れず、「働き方改革」は進まない。そこで打ち出したのが「一斉休日」である。

記事によると、流通大手では「仲間と一緒に」部署ごとに一斉休暇をとる仕組みを導入、建設大手は週2回の休みに加えて、2、4、6、12月の各月に1日、計4日、全国の支店・営業所で定休日にする。引っ越し大手では、業務を止めて全社員が休む定休日を年間30日ほど実施する。受注は減るが、労働環境の改善によって社員の離職率の低下で経営効率を上げ、売り上げの落ち込みを補う計画のようだ。大手航空会社は旅行先でICTをベースにしたテレワークを使う。夏休みと旅行先でのテレワーク勤務によって、長期の休暇旅行を楽しめるようにする、という。

正面きっての「働き方改革」でも、いろいろな試みがなされている。「在宅勤務」やテレワークシステムによる「オフィス以外での勤務」、正社員でも一日の勤務時間を柔軟に決められる「時短勤務」、夜の残業を認めない「朝型勤務」など多様になっている。

さらに7月11日から、東京都の小池知事が提唱して「時差ビズ」の実験が始まっている。小池知事は環境相時代に、「クールビズ」を提案して、夏場は背広ネクタイをはずしてカジュアルな服装で職場に来るスタイルを広めた。今度は「時差」を使って「暑苦しい満員電車を避ける」勤務スタイルを広げようとしている。テレワークや時差出勤で新しい働き方を見つけよう、という運動である。これに呼応して、東急電鉄では早朝出勤を促すため、「時差ビズライナー」と銘打った特別急行電車を走らせている。

最近の「働き方改革」の極め付けがサイボウズの「副業のすゝめ」である。「本業に専念する」ことが企業への忠誠心の証だとして、「副業禁止」を就業規則で決めているところが大半だが、サイボウズは逆に、本業に集中しすぎると視野が狭くなって、環境変化に柔軟に対応する能力を失うのではないか、と副業を促している。副業で得た知識やノウハウがいずれは本業を発展させる資産として活かされることになることを期待している。上司が命じる仕事を、他の選択肢は許されず、私生活まで犠牲にして取り組んで一日を終えてしまう。それだけが「働く」ということではない。自分で選んで取り組む副業もあって良いのではないか。

どれが良いのか。まだ、解答は出ていない。

ただ、これまで日本の企業社会が作り上げて来た「働き方」のスタイル、当然だと思っていた「滅私奉公」の価値観、こういうものが大きく変容しようとしているのは、確実なことのように思える。

もちろん、その変容を促しているのは、ICTの急速な進展とそのインフラの浸透であるその可能性を十分に理解して、働く人も、企業も、そして社会も柔軟に変化していかなければ生き残れないと、つくづく思う。

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