THEME.1
これからの社会で、何が起きようとしているのか
PROJECT STORY 01

新オフィス構築に伴う情報システム導入、


そして見えてきた、働き方の次のスタンダード

新オフィス構築に伴う


情報システム導入、


そして見えてきた、


働き方の次のスタンダード

オフィス環境構築や空間デザインなども行う内田洋行は、オフィスビルの新築や移転のタイミングでお客さま企業よりご相談を受ける機会も多い。まさにそのようなきっかけから始まったこのプロジェクトは、内田洋行のICT領域の案件に発展し、ついにはこれまでにないICTソリューション製品を生み出すに至った。お客さまは国内大手のメーカーであるA社。お客さまの生産性向上に、どう挑んだのか。営業部門とシステム部門を担当した3名が、当時を振り返る。
Profile

顧客要望の奥に潜む、
真の課題を探る

もともと内田洋行と取引のあったA社から、工場のオフィス棟新築についての相談を受けたのは、2017年のことだった。オフィス家具の受注を目指し活動していたなか、会議室に導入するシステムについての問い合わせを受けた。「当社の製品にSmartRoomsというグループウェアと連携する会議室予約システムがあり、まずはそれについてのお問い合わせをいただきました。そこで、現状の会議室の使用状況を伺っていますと、慢性的な会議室不足だといいます。その原因を深掘りしていったことが、後々の案件の広がりに影響したと思います」。そう語るのは、営業の寺井だ。
モノづくり企業にとって、会議室はあらゆるアイデアとシナジーの源泉だ。大規模メーカーであるA社の工場オフィス棟においては、会議室の数は100近くにのぼる。会議室を利用したいとき、会議室の使用状況を一つひとつ見て、空き状況を確認していくのは、それだけで大きなタイムロスが生じる。また、会議室の混雑が常態化すれば仮予約も増加し、実際にはキャンセルのし忘れが発生し、使用されない会議室なども出てきてしまう。「最初にお話を伺うと、一番実現したいことは、新しいオフィス棟では“探す”という行為を減らしたいとのことでした。会議室に限らず、人や備品、情報など何かを探すということに時間を取られており、新しいアイデアを発想するなど知的な活動が阻害されていると。“探すという行為”そのものをいかに少なくすることができるか。今回の案件で解決すべき最も重要な課題として、私たちの挑戦が始まりました」と寺井は語る。空間の設計や情報システムの機能ではなく、本質的な課題から検討がスタートした。
本件でシステム設計を担当した田中は、従来の会議室予約システムに検索機能を組み合わせたシステムを提案した。「元々SmartRoomsは、予約時間になっても利用開始されない会議室を自動キャンセルしたり、部屋前のタッチパネルでも予約できるという特徴があります。先方へのご提案は、従来の SmartRoomsと、それに連動する新しい検索システムの開発でご対応する形になりました」。開発側主導ではなく、お客さまの要望から課題を抽出することでサービスを実現する、内田洋行の特徴を体現するシステムでもある。
A社にこの提案をしてからしばらくすると、再び提案の依頼が来た。今度は、工場の新オフィス棟向けに提案したものを、東京本社の方でも検討してほしい、という。当時A社では、別案件として東京本社オフィスの移転という大規模案件が動いていた。結果的に、内田洋行は工場オフィス棟と東京本社、二つのオフィスのスマート化を支援することになった。

新しい働き方の実践を促すための、多くの試行錯誤

工場オフィス棟新築の窓口には引き続き寺井が、そして本社移転の窓口には、企業にSmartRoomsなどネットワークシステムを提供する営業部門の佐藤が立つことになった。「本社でも、工場と同様“探す行為の効率化”がテーマでした。しかしこちらでは“人を探す”という課題に、より積極的に取り組む必要がありました」。A社の東京本社では、フリーアドレス制を大々的に導入していた。フリーアドレス制も生産性向上施策の一環ではあるが、一方で、誰がどこにいるのかわからないという課題を発生させていた。各社員の位置情報や座席を検索可能にする機能も、製品に組み込むことになった。
だが、そこには新たな課題が発生する。田中は言う。「社員の位置情報検索システムは、相手がいまコミュニケーションを取れる状態かどうかを確かめることを目的としていました。しかし、一歩間違えればプライベートな個人情報に関わる可能性もあります。すでに社員の位置情報検索システムを導入している企業も多少ありますが、重要なのは運用です。お客さまの窓口は情報システム担当でしたが、社内の人事部門や法務部門、労働組合とも細かい運用ルールを詰めながら、社内の合意やルールをしっかりつくり上げていただけるようご支援しました。こうして、社内で位置を特定する場所と対象外とする場所を区分して明確にする、時間帯は就業時間内のみに限定するなど、細やかな設定や運用ルールを構築していきました」。技術の発展は、ときに倫理的な課題も顕在化させる。検索範囲の限定などもシステムの仕様に盛り込むといった技術的な機能だけでなく、運用ルールにまで目を行き届かせることも、これからの社会を考える上では非常に重要なポイントになるだろう。「生産性向上に取り組むことは、企業にとって重要なテーマです。それを追求するなかで未知の領域に踏み込めば、新たなリスクが発生します。働き方変革を掲げ、お客さまの成長を支援していく当社としては、新たなリスクヘッジも責務だと考えています」と寺井は振り返った。
最終的に内田洋行は、会議室の検索と予約から、社員の位置情報検索、くわえて来館者登録までを、一連のソリューションとしてA社に導入することになった。システム設計を担った田中は、お客さまがこだわるUI/UXデザインにも工夫を重ねた。「生産性を高め、業務をスピードアップできるシステムをつくったとしても、それに慣れるまでに時間を要するようでは意味がありません。マニュアルを必要とせず、直感的に扱うことができるシステムになって、はじめて効果を上げることができるのです」。触れた瞬間から操作できる新しいツールを使って、新しい働き方を実践する。その思想が、今回のプロジェクトの核の部分となっていった。

目の前のお客さまは、常に“次の時代”と接している

導入後、先方からの声は極めて好意的で、佐藤はひとまず安堵した。「既存のソリューションではなく、情報システムと環境構築をともに提供しながら、お客さまの働き方にも影響を与えるプロジェクトは、当社のなかでも先進的な取り組みでした。こうしたお客さまの反応を見ると、感慨深いものがありますね」。稼働してからすぐに、具体的な要望も寄せられている。「実際に使っていただくなかで、新たな要望が出てくるというのは非常にうれしいというか、それがまたお互いの前向きな関係を築くきっかけになっていきます。お客さまも私たちも、より良い“働き方”を目指してともに新しい仕組みを創造していくという、同じ目的を共有しているといえます」と寺井は語る。
田中は今回のプロジェクトの成果と、そこに至る経緯を振り返って“内田洋行的だった”と語る。「お客さまの課題に対して、アプローチの仕方は企業ごとに異なり、それぞれに長所短所があると思います。メーカーであればパッケージ製品の導入となる。ベンダーであれば、一からすべてを構築する。当社の場合は、お客さまの課題に合わせて自社で開発したパッケージを活用しつつ、個別に開発も行います。それによって、パッケージ利用による汎用性を保ちつつ、これまでにはないシステムを構築することができたのが、今回の事例です。これを実現するには、お客さまから要望を伺いながら、その要望の核となる部分を見極め、お客さまと共有していく過程が不可欠なのです」。 A社とともにつくったシステムは、既存のパッケージ製品を複合的に組み合わせることによって、これまでにない機能をもったシステムとして結実した。
田中は付け加える。「いま使っていただいているシステム自体は、これからお客さまの声とともに、もっとブラッシュアップさせていくものになります。その意味ではまだまだ道半ばではありますが、お客さまからのフィードバックから推測するに、どんどん面白いものに育っていく期待を感じています」。
いまよりも良いものを追求していくために、あらゆる企業は常に時代の先端で格闘している。時代の変わり目に立ち、お客さまのもっとも近くで企業活動を支えることで、内田洋行はこの働き方の変革を実現させていこうとしている。