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澤野工房というジャズレーベルは知る人ぞ知るという存在な上、店員の方も容易に商品ラインナップやその良さをお客様に説明することができないという課題を抱えていました。一方、既存のCD試聴機の試聴回数や売上を見てみると、試聴してもらったCDは売れ行きが良い傾向が見受けられました。これらを踏まえ、商品が自らその特徴や良さを語ることができる製品やサービスが必要だというコンセプトが生まれ、CDの試聴回数を増やすためのシステムの開発がスタートしました。
巷にあるCD試聴機やそこで試聴する人々の様子を観察し、試聴行動を知りました
観察結果から導き出した試聴機ユーザーのニーズからプロトタイプを作成しました
プロトタイプをユーザーに実際に使用してもらうことで、修正と改善を繰り返しました
CDを選ぶ方法ひとつをとっても、様々なアイデアが考えられます。適切な方法を取るために観察調査からターゲットユーザーの行動を把握し、「試聴の動機付けには、ジャケットのイメージが大きく影響する」「おすすめを頼りに選ぶ」という特徴を導き出し、画面デザインに反映させました。また、片手でヘッドホンを持ち、もう片方の手で画面操作を行う傾向があることから、操作部分を右側に寄せました。
巷にある試聴機や試聴する人々の様子を観察・調査し、ターゲットユーザーとして最も最適なペルソナ(詳細に設定した顧客のプロフィール)を作成しました。
たくさんのユーザーを観察調査したことで、様々なユーザー像が浮かび上がってきました。そこで、メンバ間でユーザー像を明示的に共有するために、ペルソナ法を利用しました。試聴中は手持ち無沙汰、周囲のいろいろなものに目を向ける、曲送りボタンを連打する、ポップのコメントを真剣に読むといったユーザーの特徴が見受けられました。そこから「聴きながら見ることができる」ということが、今回の製品のキーコンセプトとして位置づけられました。スケルトンから8体のペルソナを作成し、その中からもっともターゲットユーザーにフィットしたペルソナ「福田さと子」の写真付のペルソナシートを作成し、このペルソナを以降の意思決定の基準としていくことに決定しました。
「多くの人が何かを見ながら試聴している」という一般的な行動特性と「既存のPC型試聴機やWebページでの試聴は画面遷移とともに再生が止まる」という既存製品の課題が明らかになりました。これらの課題を解決するために、試聴中に他のCDを選択しても試聴を止めることなくCDの情報を閲覧できる表示形式を採用しました。
デザイン案の時点でペーパープロトタイピングを行い、本当にユーザーが求めるものになっているかを確かめるためにユーザーテストを行いました。
ペーパープロトタイピングとは開発するシステムやWEBページなどの画面を「紙」で作成し、ユーザーテストを行う手法です。開発の初期段階から何度もペーパープロトタイプを作りながら開発することで、ユーザビリティの問題を早い段階で修正していくことができます。今回も必要な紙の画面を用意し、行ってほしい行為を被験者に伝え、その行動に合せてテスト実施者が紙の画面を切り替えていくという流れでユーザーテストを実施しました。テスト結果から、操作ボタンの位置や表示形式の修正を行い、ブラシュアップを重ねていきました。