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自治体IT革命の今日、明日
第126回 共通番号制度(国民ID)と社会保障と税に関わる番号制度、その1『番号制度の過去歴史』

2011/06/06

2001年の「e-Japan戦略」から始まった電子政府・電子自治体の姿も、新たなステージ(第3ステージ)に入りそうです。

第1ステージは、(昭和の20年〜30年代に制定された)法律を前提とした、人と紙による“行政手続(サービス)の電子化”でした。“使えない”という評価のステージで、行政サービスとは認知されませんでした。

第2ステージは、2006年度以降現在の姿です。「IT新改革戦略」の形です。しかし、行政内に限定された電子政府・電子自治体の姿のままでもあります。インターネットを利用した“サービス”の形をなさないものです。

今やっと新たな形が模索されてきたことに、筆者は大変に喜ばしく感じております。そんな第3ステージの電子政府・電子自治体のあるべき姿をまとめてゆきたいと思います。キーワードは、「共通番号(国民ID)」です。

◎番号制度の過去及び歴史
1.住民番号制度の歴史と課題、2.納税番号制度の歴史、3.社会保障番号制度の歴史そして4.共通番号制度への政府の対応、5.各種提言などについて。

1.住民番号制度の歴史と課題
・1971年(明治04年):「戸籍法(壬申戸籍)」
 農村社会を前提した全国統一の戸籍制度。
 ―> 都市化に伴う住民の移動増大による制度の限界。
・1951年(昭和26年):「住民登録法」
 世帯台帳を法的位置づけ。戸籍簿+住民登録制度へ。
 ―> 届出や台帳の重複、不統一の存在などの制度的不備あり。

・1967年(昭和42年):「住民基本台帳法」
 住民サービスのための台帳として住基台帳を位置づけ。
 ―> 紙の台帳による管理、本人確認の限界。
・1999年:住民基本台帳法改正(住基ネット、2003年08月施行)
 「全国単位での本人確認」、「将来的に弱者のためのセーフティネットとして利用」
 ―> 共通番号としての制約:
    利用業務は法律で厳格に規定、民間利用の禁止、
    その他(ランダムな番号、番号の変更が可能など)。
・2009年:住民基本台帳法改正(外国人住民登録、2012年07月」施行予定)
・2010年「消えた高齢者問題」発覚
 高齢者の所在・生死不明、年金の不正受給問題の発生。
 ―> 「死亡届」が出されない限り生存していることを前提とした制度の機能不全が露呈。

2.納税者番号制度の歴史
・1968年(昭和43年):佐藤内閣、「各省庁統一個人コード連絡協議会会議」を設置して、国民総背番号制の導入を目指したが頓挫した。
この頃から、42年間番号を推進しようとしてできなかった。
・1980年(昭和55年):「グリーンカード法案」
「所得税法の一部を改正する法案」において、「グリーンカード」(少額貯蓄等利用者カード)の導入を決定。
非課税貯蓄(マル優)の仮名口座の防止。
−>
1985年、「海外への資金流出」、「プライバシー保護」などの反対運動により、同法廃止。
・2008年「定額給付金政策」発表
−>
すべての国民の所得捕捉ができていないために、所得制限をかけることができず、莫大な経費をかけて全ての国民に給付。

3.社会保障番号制度の歴史
1961年(昭和36年):個別分野における社会保障番号の導入
・1961年、年金番号、健康保険番号の導入
−>
制度ごとに加入者の番号を独自に付番していたため、転職や退職などで加入制度が変わると、番号が変わることが問題に。
・1997年基礎年金番号の導入
制度間を移動する被保険者に関する情報を的確に把握することによる届出の簡素化、届出忘れによる未加入者の発生の防止など。
・2007年「消えた年金問題」発覚
−>
基礎年金番号という、氏名や住所の異動を管理する台帳の裏づけが無い番号を使っていたため、年金の納付記録が行方不明に。

4.共通番号制度への政府の動き
1.『自民党』
・年金納付記録問題
 2007年09月〜:社会保障番号・カードのあり方検討会
・2008年頃から、政府与野党の議論が本格化
 社会保障国民会議最終報告(2008年・麻生内閣)
 自民党税制改正大綱(2008年)
 安心保障番号/カード(「安心社会実現会議」、麻生内閣「骨太の方針2009」)
・定額給付金
 納税者番号の必要性浮上、給付付き税額控除制度

2.『民主党』
民主党税制改正抜本改革アクションプログラム、2009年民主党マニフェスト
・新たなICT戦略
 2010年05月:国民ID制度、自治体クラウドなど
・2010年02月〜:社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会
 06月中間とりまとめ。「2011年度中に関連法案の成立、2013年度までに実施」。
・2010年11月11日、「政府・与党社会保障改革検討本部」のもとに、
 「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」設置。

3.『IT戦略、成長戦略における議論』
・新たな情報通信技術戦略:2010年05月決定。
 「2013年度までに国民ID制度を導入」
(制度設計、関連法令の整備、公的ICカードの整理・合理化、システム設計・構築に着手、第三者機関の設立準備の開始)
・新成長戦略:2010年6月18日閣議決定。
 「住民票コードとの連携による各種番号の整備・利用に向けた検討を加速」
 「社会保障や税の番号制度の検討と整合性を図りつつ、国民ID制度の導入を検討」

5.共通番号制度提言いろいろ
2008年冬から2009年春にかけていくつかの提言がなされています。

1.実効的な電子行政の実現に向けた推進体制と法制度のあり方について
((社)日本経済団体連合会 平成20年11月18日)
・提言のポイント
1.予算権限と責任を持ってトップダウンで府省庁から地方自治体・独立行政法人まで含めた行政全体の最適化を図り、電子行政を推進する「電子行政推進会議」(議長:総理大臣)と実務担当機関である「電子行政推進センター」を設置。行政CIOを任命。電子行政のグランド・デザイン、工程表を策定。
2.各行政機関は電子化に先立ち、業務改革による行政業務全般の簡素化・標準化を実施。IT戦略本部評価専門調査会の機能を強化し、各行政機関の取り組みを恒常的に監視。
3.個人・企業を一意に特定できる共通コードを導入し、国民本位のワンストップサービスを実現。プライバシー保護のため、個人情報の管理・共有のルール策定、監督等を行う司法関係者を中心とした第三者機関を設置。
4.行政の透明性を高めるため、業務処理のプロセスや個人情報へのアクセスの履歴を国民が電子的に確認できる仕組みを確立。 ・法制度のあるべき姿 (略)

2.IT社会を支える認証基盤の確立を目指して
〜国民の安心を担保する仕組みを構築し、「JAPAN−ID」を早期に実現せよ〜
((財)社会経済生産性本部 情報化推進国民会議 平成21年01月28日)
・IT社会に相応しい個人認証基盤として「JAPAN-ID(仮称)」を早期に創設すべきである。
提言1.
「JAPAN-ID」の発行および管理は、独立行政機関「JAPAN-IDセンター(仮称)」を設置し行うとともに、個人認証のための「JAPAN-IDカード(仮称)」を無料で交付する。カード面には本人写真とあわせて基本4情報を記載する。また、「JAPAN-ID」の創設にあたっては、住基ネットの持つ高品質ネットワークや個人認証機能を積極的に活用する。「JAPAN-ID」は日本国籍を有する者および外国人登録を行い日本に在留する外国人全てに発行する。
提言2.
不適切な利用を排除するため、「JAPAN-ID」の利用の範囲や利用方法等を法令化し、罰則規定を設けるとともに、「JAPAN-ID」の運用を監視し国民からの相談対応を行う第三者機関「JAPAN-IDセンター監視機構(仮称)」を設置する。また、国民が安心できる仕組みとして、自分の個人情報にいつ、誰がアクセスしたかを知ることができるようにすべきである。
提言3.
IT戦略本部が果たしてきた各省庁横断的な対応機能に加え、予算に関する権限をこれまで以上に持たせたより強固な推進体制を構築すべきである。

・概要
現在、行政サービスは行政サービス毎に個別に番号が付与され、国民はそれぞれの番号によってサービスを受けているのが実情である。国民の目線に立てば、行政の垣根を越えて国民一人ひとりを識別する番号制度を早急に実現し、1つの番号で全ての行政サービスが受けられる社会を実現すべきである。このような番号制度を構築することにより、国民の利便性は飛躍的に向上する。例えば、年金の請求や介護保険の申請、住所変更の届出など1つの番号だけで全てのサービスが受けられるようになる。
一方、国民のなかには、一人ひとりの国民を識別できる制度の対し、根強い不信感がある。番号制度の設計にあたってはこのような状況を鑑み、セキュリティについて万全を期すことに加え、国民が安心して利用できるよう法制度や監視体制を整備し、行政といえども不適切な利用ができないような制度と仕組みを整える必要がある。
各々の行政機関で現在使用している個別番号はそのまま利用しながら、国民は個別番号を意識することなく「JAPAN-ID」という1つの番号で全ての行政サービスを受けられるとともに、情報漏えいに対する安全性にも優れた方式を日本型セクトラルモデル(分野別識別番号方式)として提言する。

・「JAPAN-ID」導入による利便性の向上
1.行政サービス毎に個別に割り振られた番号を使わなくても1つの番号だけで全てのサービスを受けられる。
2.転居により住所が変更になった場合、転居先の自治体に転入届を提出するだけで、その情報を他の行政機関に自動的に伝えることも可能となる。 (ワンストップサービス)
3.国民は行政サービスに関する自らの情報を集約し一覧して確認することも可能となる。(情報閲覧サービス)
4.行政サービスの対象者に対して、積極的に行政側から情報を提供していくことが容易になる。(「申請型の行政」から「情報提供型(プッシュ型)の行政」へ)

・日本型セクトラルモデル(分野別識別番号方式)の利点
1.万が一情報漏えいが起きた場合でも、その被害が行政分野単位に止まり、被害が広範囲に拡大するのを防ぐことができる。
2.既存の行政サービス毎の個別番号はそのままとすることで、各行政機関の情報インフラの見直しは最小限に留めることができる。

これら提言は今から2〜3年前の提言です。現在の共通番号制度案の基礎となっております。
最近でも、日本経団連から、

3.「豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める」(日本経団連 10/11/16)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/105/index.html

なる提言がなされております。
これら提言を背景に、内閣官房より番号制度に関わる方針・要綱などが矢継ぎ早に公表されております。

○「国民ID制度における国民IDコード」(IT戦略本部 2010/12/27)
○「社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」(社会保障・税に関る番号制度に関する実務検討会 平成23年01月28日)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/index.html
○「社会保障・税に関わる番号要綱」(平成23年04月28日)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/index.html

次回以降、「共通番号制度」と「社会保障・税の番号制度」の関連について説明してゆきます。

平成23年6月2日 記

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