HOME > U+(ユープラス) > 電子自治体の行政情報化ニュース > 自治体IT革命の今日、明日 第145回 国民ID制度と社会保障・税番号制度、その20『地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン』
2012/12/10
総務省が「地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン」を纏めました。衆院選後、新たな政権で再検討されることと思われますが、番号制度が否定されることはないでしょう。
総務省に設置した「地方公共団体における番号制度の活用に関する研究会」(座長:須藤 修 東京大学大学院情報学環長・学際情報学府長)での議論を踏まえ、地方公共団体における番号制度の活用可能性や、番号制度に対応したシステム構築に関するポイントなどを取りまとめている。
また、第2章第2節については、総務省が主宰する「番号制度に係る地方税務システム検討会」での議論を踏まえ、地方公共団体における税務システムの改修に関する実務上の課題などを取りまとめている。
◎地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン(中間とりまとめ)(平成24年9月)
以下、第1章、第2章2節 & 3節については、今までお話をしてきたところです。今回は、第2章4節について。マイナンバー法案の肝になるところです。
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第1章 地方公共団体における番号制度の活用について
1 はじめに
2 地方公共団体における番号制度の活用について
(1)番号制度の導入により実現すること
(2)番号制度の活用の具体的なイメージ
(3)地方公共団体における番号制度の活用の方向性
第2章 番号制度に対応したシステム構築について
第1節 住民基本台帳システムの構築に係るガイドライン
1 基本要件
(1) 番号制度における住民基本台帳システムの役割
(2) 世帯情報の提供方法
(3) モデルとしたシステム構成
(4) スケジュール
2 システム改修要件
(1) 施行日(平成26年10月)前から施行日にかけての個人番号の指定(初期一斉指定)等
(2) 施行日以後符号一斉取得日までの住民に対する個人番号の指定等
(3) 第4号施行日(平成27年1月)以後の個人番号カードの交付等
(4) 符号一斉取得日における住民に対する符号一斉取得
(5) 符号一斉取得日における住民以外の者に対する符号一斉取得
(6) 符号一斉取得日以後の住民に対する個人番号の指定等
(7) 符号一斉取得日以後の住民以外の者に対する符号の取得
第2節 地方税務システムの構築に係るガイドライン
1 基本要件(番号制度導入による地方税に係る業務・システムへの影響
(1) 番号制度導入による地方税に係る業務・システムへの影響の概要
(2) 対応の方向性
(3) 想定スケジュールと移行に係る留意事項
(4) 本ガイドライン案における記述の前提となる税務システムモデル
2 システム改修要件(市町村)
(1) 宛名システム
(2) 個人住民税システム
(3) 法人市町村民税システム
(4) 固定資産税システム
(5)軽自動車税システム
(6) 収滞納管理システム
3 システム改修要件(都道府県)
(略)
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(以上)
第3節 情報連携のための中間サーバの構築に係るガイドライン ・・・ 今回
1 基本要件
(1) 中間サーバの必要性
(2) 中間サーバの基本的な考え方
(3) モデルとしたシステム構成
(4) スケジュール
(5) 効率的な導入に向けて
2 システム構築要件
(1) 符号の取得
(2) 情報連携
(3) プッシュ型のお知らせ
3 非機能要件等留意すべき事項
第4節 その他の業務システムに関する留意事項
(略)
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今回は、第3節 情報連携のための中間サーバの構築に係るガイドライン 1 基本要件
(1) 中間サーバの必要性、(2) 中間サーバの基本的な考え方、(3) モデルとしたシステム構成、(4) スケジュール、(5) 効率的な導入に向けて について。
○第3節 情報連携のための中間サーバの構築に係るガイドライン
1 基本要件
(1) 中間サーバの必要性
1 番号利用法案における情報連携の位置づけ
番号利用法案第17条本文において、国や地方公共団体等の個人番号利用事務実施者が、個人番号を利用して情報収集し、管理している個人情報については、原則的に、他の機関に提供することは禁止されている。
しかし、同条第7号において例外規定が設けられており、番号利用法案別表第二に掲げる情報照会者が、同表に掲げる情報提供者に対し、同表に掲げる事務を処理するために必要な同表に掲げる特定個人情報の提供を求めた場合において、当該情報提供者が情報提供ネットワークシステムを使用して当該特定個人情報を提供するときは、特定個人情報を提供することが可能となっている。
2 情報提供ネットワークシステムの構成
当該全体機能構成図によると、情報提供ネットワークシステムは、情報提供者又は情報照会者からの求めに対し、情報連携のための符号(ID コードを含む)を生成する機能や、情報提供の際に情報提供者と情報照会者間の符号を変換する機能、情報提供者と情報照会者間の情報提供及び情報提供者等とマイ・ポータル間の情報提供を中継する機能などで構成される「コアシステム」と、各情報提供者及び情報照会者側に設置し、情報提供者と情報照会者間又は情報提供者等とマイ・ポータル間での情報提供に際して必要とされる情報を提供する情報提供管理機能などで構成される「インターフェイスシステム」で主に構成されることとされている。
地方公共団体は、インターフェイスシステムを通じて情報連携を行うことになり、当該インターフェイスシステムと各地方公共団体が保有する既存業務システムを接続する必要がある。地方公共団体が整備することが想定されるシステムとして、インターフェイスシステムと既存業務システムとの間に設置し、情報照会/提供支援機能と符号管理機能を有する「中間サーバ」の必要性が指摘されている。
<図1:情報提供ネットワークシステム全体機能構成図案>
総務省「地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン(中間とりまとめ)」 183ページ参照
3 情報連携における地方公共団体の役割
特に市町村においては、番号利用法案において、所得情報や世帯情報等を提供する等、情報提供者としての役割が期待されている。番号利用法案第20条第1項には、「情報提供者は、・・・特定個人情報の提供を求められた場合において、・・・情報照会者に対し、当該特定個人情報を提供しなければならない。」と規定されており、各地方公共団体は情報提供ネットワークシステムのインターフェイスシステムと情報連携の対象となっている情報を保有する既存業務システムとを接続する必要がある。
<参考1>
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・情報提供者(To):市町村
ー> 71(69事務)
ー> 19(18事務)
計 90(87事務)
市町村が情報提供者となる事務は、116事務中87事務(75%)であります。
その時の情報は下記の情報が予定されており、「中間サーバ」に保存される事となります。
・提供情報(What):
1 地方税関係情報(扶養情報など含む)
2 住民票関係情報(世帯情報など含む)
3 介護保険給付関係情報
4 医療保険給付関係情報
5 子ども手当関係情報
6 障害者自立支援関係情報
7 資金融資など関係情報
8 医療援助関係情報
9 施設入所者情報
10 通知情報
11 養育医療に関する情報
12 その他
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4 中間サーバの必要性
地方公共団体は、各行政分野において業務システムを構築し、それぞれのデータベースに、業務に必要な個人情報が保存され管理されている。
一方、インターフェイスシステムは、その管理権は各地方公共団体にあるものの、情報提供ネットワークシステムの一部を構成しており、情報提供ネットワークシステムは個人情報の一元管理機関とならないよう、常時個人情報を保有しないこととされている。
また、一の地方公共団体に設置管理されるインターフェイスシステムに対し、当該地方公共団体が保有している複数の業務システムを接続する必要がある。
ー> セキュリティ、コスト、拡張性の3つの観点から、インターフェイスシステムと既存業務システムとの接続の方法として、インターフェイスシステムと既存業務システムとの間に、情報連携の対象となる個人情報の副本を保存・管理し、インターフェイスシステムと既存業務システムとの情報の授受の仲介をする役割を担う「中間サーバ」を置くことが適当であると考えられる。
<図2:中間サーバの必要性>
総務省「地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン(中間とりまとめ)」 186ページ参照
(2) 中間サーバの基本的な考え方
1 管理権
1 インターフェイスシステム
インターフェイスシステムの設置・管理の主体は、地方公共団体にあると考えるのが合理的である。一方、インターフェイスシステムには、情報連携記録が保存されることから、当該記録を地方公共団体が改変できないようにする必要がある。また、インターフェイスシステムは情報提供を管理する機能があり、当該機能を地方公共団体が改変したり自由に取り扱えるようにするべきではない。また、インターフェイスシステムのソフトウェア等については、全国統一の仕様でなければ情報提供ネットワークシステムを構築することができない。
ー> インターフェイスシステムのソフトウェアについては、国がその仕様を策定するべきものであり、その開発や管理についても、各地方公共団体が個別に行うのではなく、国が一括で開発し、管理するなど効率的な開発や管理の方法を今後検討する必要がある。
2 中間サーバ
中間サーバは、既存業務システムのデータベースの副本を保存するサーバとしての位置づけられるものである。したがって、基本的にはその管理は各地方公共団体が行うべきものである。
2 保有すべき情報のあり方
1 保有すべき情報
中間サーバのデータベースには、番号利用法案別表第二に規定する個人情報が保存されることになる。地方公共団体が宛名システムを保有している場合、宛名システムで宛名番号と個人番号をひも付けて管理し、中間サーバで宛名番号と符号をひも付けて管理すれば、他の既存業務システムのデータベースに個人番号を追加する改修が原則的に不要となるため、全体的な総コストは削減されると考えられる。
また、符号は、情報提供ネットワークシステムのコアシステムが生成し、一般に知られることのない、秘匿性の高いものであり、当該符号を見ただけでは、誰を指すものであるのかを特定することが困難である。宛名番号も、地方公共団体の内部でのみ利用される秘匿性の高いものであり、符号と同様である。
ー> 中間サーバは、個人番号を保有せず、宛名番号を保有することが適当であると考えられる。
<図3:中間サーバが保有する情報>
総務省「地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン(中間とりまとめ)」 188ページ参照
2 符号の取得
情報提供者等は、国民からの申請時等において個人番号カード等により本人確認及び個人番号確認を行い、正しい個人番号又は基本4情報(以下「個人番号等」という。)を収集する。
情報提供者等は、当該個人番号等に処理通番を付けて、機構に通知する。(1)
機構は本人確認情報(個人番号等及び住民票コード)を保有していることから、当該個人番号等に対応する住民票コードを検索して(2)、当該処理通番と住民票コードを情報提供ネットワークシステムに通知する。(3)
情報提供ネットワークシステムは、当該住民票コードを変換して(住民票コード→IDコード→符号)(4 & 5)、当該処理通番と符号を情報提供者等に通知する。(6)
情報提供者等は情報提供ネットワークシステムから処理通番に対応する符号を取得し、データベースにひも付ける。(7)
<参考2>
4 住民票コード → IDコード : 可逆暗号方式
5 IDコード → 符号 : (IDコード + 自治体識別子) 可逆暗号方式
<図4:符号の取得の方法について>
総務省「地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン(中間とりまとめ)」 189ページ参照
3 情報の更新頻度
情報提供者として中間サーバの情報を更新する頻度については、情報の更新時点を中間サーバが保持することを前提に、提供する情報に係る業務の特性に応じた更新頻度とする。
ー> 個人住民税の情報については、年1回、税額決定通知後速やかに更新を行うとともに、随時の税額変更を反映するため月に1回以上は更新を行うこととする。
世帯情報については日次処理とする。
4 情報の形式
情報連携のためにインターフェイスシステムが要求する情報の形式については、情報提供ネットワークシステムを利用する情報照会者側・情報提供者側の調整が必要であり、中間サーバが保存する情報については、情報連携のためにインターフェイスシステムが要求する情報の形式とするものとする。
5 収受される情報の取扱い
情報提供ネットワークシステムで収受される情報については、電子的なデータとしてやりとりされるものである。番号利用法案においては、情報提供ネットワークシステムは、「行政機関の長等の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織」とされている。
ー> 情報提供ネットワークシステムを通じてやりとりされる情報については、情報照会者又は情報提供者からの情報であることが法律上担保されることとなる。
3 ネットワークの接続のあり方
中間サーバは、インターフェイスシステムと既存業務システムとの間に、既存業務システムのデータベースが保有する、情報連携すべき個人情報の副本を保存・管理し、インターフェイスシステムと既存業務システムとの情報の授受の仲介をする役割を担うものである。 ー> 既存業務システムが接続されているいわゆる基幹系LANに接続することが適当である。
インターフェイスシステムは、各地方公共団体が管理するとしても、外部機関とのインターフェイスとなるものであり、いわゆる情報系LANに接続することが適当であると考えられる。
4 中間サーバの機能
1 情報提供機能
符号にひも付いた世帯情報、所得情報、福祉等情報を管理し、情報提供ネットワークシステム経由で情報照会があれば、これらの情報を提供する機能。これらの情報は、既存業務システムから一定の頻度で更新される。
2 情報照会機能
既存業務システムから、業務内容で必要とする情報を特定した上で行う情報照会を情報提供ネットワークシステムに中継し、情報提供ネットワークシステムからの情報照会結果(情報提供)を既存業務システムに中継する機能。中間サーバ端末から情報照会を行う機能を付加することも考えられる。
3 符号管理機能
符号を取得し、宛名番号その他の既存業務システムで用いる番号とひも付けて管理する機能。
4 既存システム接続機能
既存業務システムが保持する個人情報の中間サーバへの登録や、既存業務システムからの情報照会依頼、及び情報照会結果の受取りをする場合に、既存業務システムと接続する機能。
5 インターフェイスシステム接続機能
情報照会や情報提供を行うにあたり、インターフェイスシステムが要求する情報の形式に変換して接続する機能。
6 その他
プッシュ型お知らせを行う機能や同一地方公共団体内での情報連携を行う機能を付加することが考えられる。
(3) モデルとしたシステム構成
<図5:モデルとしたシステム構成>
総務省「地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン(中間とりまとめ)」 193ページ参照
(4) スケジュール
(略)
(5) 効率的な導入に向けて
中間サーバは、既存業務システムのデータベースが保有する個人情報の副本を情報連携が可能な形式で保存・管理し、インターフェイスシステムと既存業務システムとの情報の授受を仲介する役割を担うものであることから、中間サーバの機能の開発は原本たる既存業務システムに大きく依存する部分がある。
中間サーバの導入については、次のとおりとすることが適当である。
1 共通するソフトウェアの一括開発
中間サーバのソフトウェアについては、前述のとおり、仕様が共通する部分も多いと考えられることから、経費の節減を図るため、ソフトウェアの開発を一括して行うことも今後検討する必要がある。
2 ハードウェアのクラウド化の推進
地方公共団体のシステムについては、近年様々な分野で活用が進んでいるクラウドコンピューティング技術を活用して、共同利用等を進めることにより、経費の削減や住民サービスの向上を図ることが求められている。
(以上)
マイナンバー法案は廃案になりましたが、番号制度が否定されたものではありません。行政のサービス化・効率化などへ向け、情報の共有そして組織間連携を避けて通れるものではありません。社会インフラとして大きな期待がされております。
衆院選後、新たな政権のもと“新たなマイナンバー法案”が再度国会提出されることとなるでしょう。