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自治体IT革命の今日、明日
第168回 「新地方公会計制度、その3『固定資産台帳の整備』」

2014/09/16

 今回は、固定資産台帳の整備について。

(前回より)
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○現会計制度は
1.現会計制度
 ・現金主義
 ・単式簿記
2.根拠法
 ・憲法 85条 ・・・「国費の支出は〜」
 ・財政法(昭和22年) 2条1項
  ・・・ 支出とは、〜 現金の支払いをいう。
3.課題
 ・資産・負債というストック情報の欠如(現金のフロー情報のみ)
 ・非現金情報(減価償却費、引当金など)が未計上
  −> 行政サービス事業費の総コストが把握できない!
  −> 行政経営改革のマネージメントが欠如!
4.公会計改革へ向けた法律
 ・行政改革推進法(平成18年06月)
  62条08項 ・・・ 企業会計の慣行〜
           −> 発生主義、複式簿記へ
5.総務省、地方行政改革指針(平成18年08月)
 ・公会計改革指針 ・・・ 財務書類4表の作成を義務付け!
              (〜平成21年09月までに)
  基準モデルと改定モデルを提示
   ・・・が、大半(80%以上)が改定モデル
○東京都の公会計制度
・「東京都の新たな公会計制度」(東京都の新たな公会計制度 解説書 より抜粋)
 行政運営に、経営の視点を確立することは不可欠となってきた。行政と民間との協働、住民に対する説明責任を果たすことなどが求められている。多くの自治体において財務諸表を作成しているが、官庁会計(単式簿記・現金主義会計)による決算数値を組み替えたものである。しかし、作成時間がかかり、個別事業ごとに作成することは困難である。
・官庁会計の問題点
 単式簿記・現金主義会計とは、現金という一つの科目の収支のみを記帳する会計方式である。内在する問題点は、
 1.現金以外の「資産」「負債」の情報が蓄積されない
  「ストック情報の欠如」
 2.非現金情報(減価償却費、引当金、金利など)が蓄積されない
  「コスト情報の欠如」
の2点であり、結果として、
 3.総合的な財務情報の説明が不可能
  「説明責任の欠如」
 4.正確なコスト分析による事業評価が不可能
  「マネージメントの欠如」
の問題点が指摘されている。
・複式簿記の目的とは
 1.財政状態の把握(貸借対照表:B/S)
 2.経営管理(損益計算書:P/L)
 3.外部への報告(B/S、P/L、キャッシュフロー計算書:C/F、株主資本等変動計算書:NWM)
と言われている。
・経緯
平成14年5月 石原都知事の表明
平成14年9月 「東京都の会計制度改革に関する検討委員会」の設置〔(外部専門家(公認会計士)及び都部長級職員より構成し、東京都会計基準等を検討〕
平成14年10月 財務会計システムの基本構想着手
平成16年1月 システム開発(基本設計)着手
平成17年8月 東京都会計基準の策定・発表
平成18年3月 新財務会計システムの稼働
平成18年4月 新公会計制度の導入
平成19年9月 新システムによる初の財務諸表(平成18 年度決算)の発表

○地方公会計の推進に関する研究会報告書
・今後の新地方公会計の推進に関する研究会(第26回)(総務省 14/03/24)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chikousuiken/02zaisei07_03000090.html
 ・地方公共団体における財務書類の作成基準に関する作業部会報告書
 ・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
 ・地方公共団体からの主な意見
 ・今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書(案)
 ・今後の地方公会計における整備促進のスケジュール
1.今後の地方公会計における整備促進のスケジュール
・今後の地方公会計における整備促進のスケジュールhttp://www.soumu.go.jp/main_content/000281821.pdf
2.今後の実務上の課題と対応
 1.固定資産台帳の整備
 2.複式簿記の導入
 3.活用の充実
 4.人材の育成・教育
3.固定資産台帳の整備
・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000281818.pdf
・整備手順
 (今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書  56ページ)
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000287808.pdf
 0.庁内の体制整備
 1.計画・準備
 2.書式の作成
  ー> ここまでは、半年から一年です。
 3.資産の棚卸し
 4.データ作成
 5.データ統合
 6.開始時簿価の算定
 7.固定資産台帳の作成
  ー> 3.〜7.の作業期間は一年以内で完了すべきである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(以上)

○固定資産台帳の整備
・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000281818.pdf

 債権・債務改革と公共施設管理の観点からも、まず実施すべき課題は、固定資産台帳の整備です。

1.整備目的
 固定資産台帳とは、「固定資産の管理のために使用する補助簿であって、品目ごとに取得価額、償却額計算に必要な要素、償却額、同累計、償却後の帳簿残高、廃棄または売却に関する記録などを記入する。
 固定資産台帳は固定資産の種類別に土地台帳、建物台帳、機械台帳、備品台帳などにわけることができる。

 現行制度上、各地方公共団体においては、公有財産台帳や個別法に基づく道路台帳等の各種台帳を備えることとなっているが、保有するすべての資産を網羅的に把握する固定資産台帳については、必ずしもその整備が前提とされていない。

・公有財産台帳
 公有財産とは、普通地方公共団体の所有に属する財産のうち以下の1.〜8.の財産(基金に属するものを除く。)をいい(地方自治法第238条第1項)、公有財産台帳は、個々の公有財産が、地方公共団体の所有に帰してから、それが、地方公共団体の所有から離れていくまでの間における当該公有財産の取得、管理運用、維持保全及び処分の経緯の記録であり、その公有財産の現況がわかるようにしておく必要があるものである。
1.不動産
2.船舶、浮凛、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
3.前二号に掲げる不動産及び動産の従物
4.地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
5.特許権、著作権等
6.株式、社債などの権利
7.出資による権利
8.財産の信託の受益権

・インフラ資産に係る法定台帳
 道路台帳(道路法28条)
 河川台帳(河川法12条)
 都市公園台帳(都市公園法17条)
 港湾台帳(港湾法49条2)
 下水道台帳(下水道法23条)

2.記載項目
 ・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
  http://www.soumu.go.jp/main_content/000281818.pdf
 14ページを参照してください。

3.記載対象範囲
4.記載単位
<東京都の記載対象範囲及び記載単位>

5.整備手順などの実務
・整備手順・実施期間
 (今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書  56ページ)
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000287808.pdf

・整備手順
 0.庁内の体制整備
 1.計画・準備
 2.書式の作成
  −> ここまでは、半年から一年です。

 3.資産の棚卸し
 4.データ作成
 5.データ統合
 6.開始時簿価の算定
 7.固定資産台帳の作成
  −> 3.〜7.の作業期間は一年以内で完了すべきです。

○固定資産台帳の整備、習志野市事例(以下は講演資料より抜粋・編集)
○習志野市/宮澤正泰氏の講演より
・地方行政改革とICT(情報化)― 公会計導入は自治体を変える
  第2回(通算37回) 新公会計・基準モデルと固定資産台帳の整備
 http://homepage2.nifty.com/npoais/semina-.htm
・講演タイトル:
「習志野市の公会計改革 〜固定資産台帳の整備と活用の実践例〜」
・講演項目:
1.総務省の新公会計基準と自治体への新たな要請(略)
2.公会計改革と固定資産台帳の整備
 1.地方公会計の意義
 2.固定資産台帳の必要性
 3.庁内の体制整備の例
 4.固定資産台帳整備の流れの例
 5.地方公会計のシステムの構築について(イメージ)
3.習志野市の取組み
以上

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1.地方公会計の意義
2.固定資産台帳の必要性
・過去に建設された公共施設等がこれから大量に更新時期を迎える一方で、地方公共団体の財政は依然として厳しい状況にある。
・人口減少等により今後の公共施設等の利用需要が変化していく。
・市町村合併後の施設全体の最適化を図る必要性がある。
ー>
 財務書類作成のための基礎資料としてだけでなく、公共施設等の更新・統廃合・長寿命化の観点からも、固定資産台帳の整備は必要不可欠。
3.庁内の体制整備の例
4.固定資産台帳整備の流れの例
・庁内の体制整備
<全庁的な推進体制の確立が重要>
 庁内の体制整備は、各部署で管理している資産データを公会計で採用する台帳(固定資産台帳)形式に一元的に取りまとめる必要があること、各部署の固定資産管理の状態を把握したうえで、現実的な一元管理の方法を定める必要があることなどから、必須と言えます。
 庁内の体制整備では、まず作業の事前段階に、全体のとりまとめを担当する財政課等をはじめ、データの管理・評価を担当する管財課等、公有地評価に関連する各部署の担当者、及び実際に施設を管理する部署等が参画し、財産整備の状況・評価の現状を確認するとともに意見交換を行うことが重要です。また、庁内に委員会・ワーキンググループ(WG)等を設置することにより、より有効に各部署間の連携を図ることができます。
1.計画、準備
 整備推進担当課(またはWG等)及び資産を保有している関連部署合同で、打ち合わせを実施し、現在の資産の管理状況等を把握し、台帳整備の方針、スケジュール等を策定します。
2.様式の作成
 現在の台帳整備状況を踏まえ、固定資産台帳(公会計管理台帳)に記載すべき事項を決定し、あわせて、各部署にて調査を実施するための調査様式(シート)を作成します。この際、一から固定資産台帳(公会計管理台帳)を作成するのではなく、現在保有している公有財産台帳など、既存データを基礎にして必要なデータを追加して作成することが近道です。ただし、各台帳が部門毎に個別に管理され、現在の状況を正しく反映しているとは限りませんので、台帳の統合等を行う際は、台帳同士の照合を行うことが必要です。
3.資産の棚卸
 各主管部署において、公有財産台帳を基礎として、その他庁内各部門で独自に管理している台帳等と照合します。この際、固定資産の実地調査を行うことで、現物の棚卸と台帳上の記録の整合性を図ることが望まれます。
4.データ作成
 各主管部署において、作成した調査様式に基づき資産データを作成(入力)します。
5.データ統合
 各主管部署で作成した調査様式を回収し、資産区分毎に1つの台帳データに統合します。
6.開始時簿価の算定
 統合した台帳データを基に開始時簿価を算定します。
7.固定資産台帳の作成
 固定資産の実地調査を固定資産台帳(公会計管理台帳)に反映させ固定資産台帳を完成させます。
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(以上)

 次回から数回にわたりは、「複式簿記の導入」についてお話をします。

平成26年09月11日

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