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自治体IT革命の今日、明日
第169回 「新地方公会計制度、その4『公会計と企業会計との比較、民間企業会計における財務3表』」

2014/10/14

 今回は、民間企業会計における財務3表について。

(前回より)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○現会計制度は
1.現会計制度
 ・現金主義
 ・単式簿記
2.根拠法
 ・憲法 85条 ・・・「国費の支出は〜」
 ・財政法(昭和22年) 2条1項
  ・・・ 支出とは、〜 現金の支払いをいう。
3.課題
 ・資産・負債というストック情報の欠如(現金のフロー情報のみ)
 ・非現金情報(減価償却費、引当金など)が未計上
  −> 行政サービス事業費の総コストが把握できない!
  −> 行政経営改革のマネージメントが欠如!
4.公会計改革へ向けた法律
 ・行政改革推進法(平成18年06月)
  62条08項 ・・・ 企業会計の慣行〜
           −> 発生主義、複式簿記へ
5.総務省、地方行政改革指針(平成18年08月)
 ・公会計改革指針 ・・・ 財務書類4表の作成を義務付け!
              (〜平成21年09月までに)
  基準モデルと改定モデルを提示
   ・・・が、大半(80%以上)が改定モデル
○東京都の公会計制度
・「東京都の新たな公会計制度」(東京都の新たな公会計制度 解説書 より抜粋)
 行政運営に、経営の視点を確立することは不可欠となってきた。行政と民間との協働、住民に対する説明責任を果たすことなどが求められている。多くの自治体において財務諸表を作成しているが、官庁会計(単式簿記・現金主義会計)による決算数値を組み替えたものである。しかし、作成時間がかかり、個別事業ごとに作成することは困難である。
・官庁会計の問題点
 単式簿記・現金主義会計とは、現金という一つの科目の収支のみを記帳する会計方式である。内在する問題点は、
 1.現金以外の「資産」「負債」の情報が蓄積されない
  「ストック情報の欠如」
 2.非現金情報(減価償却費、引当金、金利など)が蓄積されない
  「コスト情報の欠如」
の2点であり、結果として、
 3.総合的な財務情報の説明が不可能
  「説明責任の欠如」
 4.正確なコスト分析による事業評価が不可能
  「マネージメントの欠如」
の問題点が指摘されている。
・複式簿記の目的とは
 1.財政状態の把握(貸借対照表:B/S)
 2.経営管理(損益計算書:P/L)
 3.外部への報告(B/S、P/L、キャッシュフロー計算書:C/F(C/S)、株主資本等変動計算書:NWM)
と言われている。
・経緯
平成14年5月 石原都知事の表明
平成14年9月 「東京都の会計制度改革に関する検討委員会」の設置〔(外部専門家(公認会計士)及び都部長級職員より構成し、東京都会計基準等を検討〕
平成14年10月 財務会計システムの基本構想着手
平成16年1月 システム開発(基本設計)着手
平成17年8月 東京都会計基準の策定・発表
平成18年3月 新財務会計システムの稼働
平成18年4月 新公会計制度の導入
平成19年9月 新システムによる初の財務諸表(平成18 年度決算)の発表

○地方公会計の推進に関する研究会報告書
・今後の新地方公会計の推進に関する研究会(第26回)(総務省 14/03/24)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chikousuiken/02zaisei07_03000090.html
 ・地方公共団体における財務書類の作成基準に関する作業部会報告書
 ・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
 ・地方公共団体からの主な意見
 ・今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書(案)
 ・今後の地方公会計における整備促進のスケジュール
1.今後の地方公会計における整備促進のスケジュール
・今後の地方公会計における整備促進のスケジュール http://www.soumu.go.jp/main_content/000281821.pdf
2.今後の実務上の課題と対応
 1.固定資産台帳の整備
 2.複式簿記の導入
 3.活用の充実
 4.人材の育成・教育
3.固定資産台帳の整備
・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000281818.pdf
・整備手順
 (今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書  56ページ)
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000287808.pdf

○固定資産台帳の整備
1.整備目的
 固定資産台帳とは、「固定資産の管理のために使用する補助簿であって、品目ごとに取得価額、償却額計算に必要な要素、償却額、同累計、償却後の帳簿残高、廃棄または売却に関する記録などを記入する。
 固定資産台帳は固定資産の種類別に土地台帳、建物台帳、機械台帳、備品台帳などにわけることができる。
・公有財産台帳
 1.不動産
 2.船舶、浮凛、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
 3.前二号に掲げる不動産及び動産の従物
 4.地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
 5.特許権、著作権等
 6.株式、社債などの権利
 7.出資による権利
 8.財産の信託の受益権
・インフラ資産に係る法定台帳
 道路台帳(道路法28条)
 河川台帳(河川法12条)
 都市公園台帳(都市公園法17条)
 港湾台帳(港湾法49条2)
 下水道台帳(下水道法23条)
2.記載項目
3.記載対象範囲
4.記載単位
5.整備手順などの実務
・整備手順・実施期間
 (今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書  56ページ)
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000287808.pdf
・整備手順
 0.庁内の体制整備
 1.計画・準備
 2.書式の作成
  −> ここまでは、半年から一年です。
 3.資産の棚卸し
 4.データ作成
 5.データ統合
 6.開始時簿価の算定
 7.固定資産台帳の作成
  −> 3.〜7.の作業期間は一年以内で完了すべきです。
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(以上)

◎公会計と企業会計との比較

○民間企業会計における財務3表
(以下、ダイヤモンド社 国貞克則著 「会計の基本」より抜粋・編集)

1.組織(企業)の財務状況を外部に正しく知らせるため、財務3表が必要。
 ・損益計算書(P/L)
 ・貸借対照表(B/S)
 ・キャッシュフロー計算書(C/S)

2.組織(企業)の3つの基本的活動
 ・資金の調達
 ・資金を投資
 ・収益を確保

3.財務3表と組織(企業)活動の関係

<CS> ・・・ 収支計算書
 ・営業キャッシュフロー   収益を確保
 ・投資キャッシュフロー   資金を投資
 ・財務キャッシュフロー   資金の調達

4.収支計算書のみの欠点とは
 企業における3つの基本活動を正しく表せない!
 「その企業がどれだけ資産を持っているか、どれくらいの借金があるか」は、収支計算書のみでは説明できない。

5.試算表(T/B)
 試算表(trial balance = T/B)とは、決算を確定する前に、仕訳帳から総勘定元帳の各勘定口座への転記が正確に行われているかどうかを検証するために、複式簿記の前提である貸借平均の原理を利用して作成する集計表である。
 試算表には、合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の3種類がある。

6.財務分析、事業全体の効率指標
 株主の視点からの事業全体の効率を見る「ROE」
・ROE(Return on Equity)

 ROE = 純利益 / 自己資本

1.レバレッジ比率:
 自己資本に対して他人資本をどの程度使っているかを示す指標。
 −>
     = 総資本 / 自己資本

2.総資産回転率:
 自己資本と他人資本によって調達した資産をいかに効率よく活用して売上を
作っているかを示す指標。
 ー> 高いほうが良い
     = 売上高 / 総資産

3.純利益率:
 売上高をいかに効率よく利益に変えているかという指標。
 −> 高いほうがよい
     = 純利益 / 売上高

・デュポンモデル(ROE)

7.C/Sの8パターンから見える状況

 一般的には、パターン3、パターン4が健全経営と言われます。パターン5は負債が増え、資産が増えるも、収益が出ないという最悪のパターンです。

 次回以降、自治体経営における公会計の役割などについてお話をします。

平成26年10月09日

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