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自治体IT革命の今日、明日
第170回 「新地方公会計制度、その5『公会計における財務4表』」

2014/11/10

 今回は、公会計における財務4表ついてです。

(前回より)
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○現会計制度は
1.現会計制度
 ・現金主義
 ・単式簿記
2.根拠法
 ・憲法 85条 ・・・「国費の支出は〜」
 ・財政法(昭和22年) 2条1項
  ・・・ 支出とは、〜 現金の支払いをいう。
3.課題
 ・資産・負債というストック情報の欠如(現金のフロー情報のみ)
 ・非現金情報(減価償却費、引当金など)が未計上
  −> 行政サービス事業費の総コストが把握できない!
  −> 行政経営改革のマネージメントが欠如!
4.公会計改革へ向けた法律
 ・行政改革推進法(平成18年06月)
  62条08項 ・・・ 企業会計の慣行〜
           −> 発生主義、複式簿記へ
5.総務省、地方行政改革指針(平成18年08月)
 ・公会計改革指針 ・・・ 財務書類4表の作成を義務付け!
              (〜平成21年09月までに)
  基準モデルと改定モデルを提示
   ・・・が、大半(80%以上)が改定モデル
○東京都の公会計制度
・「東京都の新たな公会計制度」(東京都の新たな公会計制度 解説書 より抜粋)
 行政運営に、経営の視点を確立することは不可欠となってきた。行政と民間との協働、住民に対する説明責任を果たすことなどが求められている。多くの自治体において財務諸表を作成しているが、官庁会計(単式簿記・現金主義会計)による決算数値を組み替えたものである。しかし、作成時間がかかり、個別事業ごとに作成することは困難である。
・官庁会計の問題点
 単式簿記・現金主義会計とは、現金という一つの科目の収支のみを記帳する会計方式である。内在する問題点は、
 1.現金以外の「資産」「負債」の情報が蓄積されない
  「ストック情報の欠如」
 2.非現金情報(減価償却費、引当金、金利など)が蓄積されない
  「コスト情報の欠如」
の2点であり、結果として、
 3.総合的な財務情報の説明が不可能
  「説明責任の欠如」
 4.正確なコスト分析による事業評価が不可能
  「マネージメントの欠如」
の問題点が指摘されている。
・複式簿記の目的とは
 1.財政状態の把握(貸借対照表:B/S)
 2.経営管理(損益計算書:P/L)
 3.外部への報告(B/S、P/L、キャッシュフロー計算書:C/F(C/S)、株主資本等変動計算書:NWM)
と言われている。
○地方公会計の推進に関する研究会報告書
・今後の新地方公会計の推進に関する研究会(第26回)(総務省 14/03/24)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chikousuiken/02zaisei07_03000090.html
 ・地方公共団体における財務書類の作成基準に関する作業部会報告書
 ・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
 ・地方公共団体からの主な意見
 ・今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書(案)
 ・今後の地方公会計における整備促進のスケジュール
1.今後の地方公会計における整備促進のスケジュール
・今後の地方公会計における整備促進のスケジュール http://www.soumu.go.jp/main_content/000281821.pdf
2.今後の実務上の課題と対応
 1.固定資産台帳の整備
 2.複式簿記の導入
 3.活用の充実
 4.人材の育成・教育
3.固定資産台帳の整備
・地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000281818.pdf
・整備手順
 (今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書  56ページ)
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000287808.pdf

○固定資産台帳の整備
1.整備目的
 固定資産台帳とは、「固定資産の管理のために使用する補助簿であって、品目ごとに取得価額、償却額計算に必要な要素、償却額、同累計、償却後の帳簿残高、廃棄または売却に関する記録などを記入する。
 固定資産台帳は固定資産の種類別に土地台帳、建物台帳、機械台帳、備品台帳などにわけることができる。
・公有財産台帳
 1.不動産
 2.船舶、浮凛、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
 3.前二号に掲げる不動産及び動産の従物
 4.地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
 5.特許権、著作権等
 6.株式、社債などの権利
 7.出資による権利
 8.財産の信託の受益権
・インフラ資産に係る法定台帳
 道路台帳(道路法28条)
 河川台帳(河川法12条)
 都市公園台帳(都市公園法17条)
 港湾台帳(港湾法49条2)
 下水道台帳(下水道法23条)
2.記載項目
3.記載対象範囲
4.記載単位
5.整備手順などの実務
・整備手順・実施期間
 (今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書  56ページ)
 http://www.soumu.go.jp/main_content/000287808.pdf
・整備手順
 0.庁内の体制整備
 1.計画・準備
 2.書式の作成
 3.資産の棚卸し
 4.データ作成
 5.データ統合
 6.開始時簿価の算定
 7.固定資産台帳の作成

○民間企業会計における財務3表
(以下、ダイヤモンド社 国貞克則著 「会計の基本」より抜粋・編集)
1.組織(企業)の財務状況を外部に正しく知らせるため、財務3表が必要。
 ・損益計算書(P/L)
 ・貸借対照表(B/S)
 ・キャッシュフロー計算書(C/S)
2.組織(企業)の3つの基本的活動
 ・資金の調達
 ・資金を投資
 ・収益を確保
3.財務3表と組織(企業)活動の関係

<CS> ・・・ 収支計算書
 ・営業キャッシュフロー   収益を確保
 ・投資キャッシュフロー   資金を投資
 ・財務キャッシュフロー   資金の調達
4.収支計算書のみの欠点とは
 企業における3つの基本活動を正しく表せない!
 「その企業がどれだけ資産を持っているか、どれくらいの借金があるか」は、収支計算書のみでは説明できない。
5.試算表(T/B)
6.財務分析、事業全体の効率指標
 株主の視点からの事業全体の効率を見る「ROE」(Return on Equity)
 ROE = 純利益 / 自己資本
1.レバレッジ比率:
 自己資本に対して他人資本をどの程度使っているかを示す指標。
 −> = 総資本 / 自己資本
2.総資産回転率:
 自己資本と他人資本によって調達した資産をいかに効率よく活用して売上を
作っているかを示す指標。
 −> = 売上高 / 総資産
3.純利益率:
 売上高をいかに効率よく利益に変えているかという指標。
 −> = 純利益 / 売上高
・デュポンモデル(ROE)

7.C/Sの8パターンから見える状況

 一般的には、パターン3、パターン4が健全経営と言われます。パターン5は負債が増え、資産が増えるも、収益が出ないという最悪のパターンです。
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(以上)

 公会計における財務4表について。

◎公会計における財務4表
○財務書類の作成手順
1.帳簿等
 「財務書類は、公会計に固有の会計処理も含め、総勘定元帳等の会計帳簿から誘導的に作成」する。以下の帳簿を作成します。
 1.仕訳帳(仕訳伝票)
 2.総勘定元帳
 以上の他、仕訳帳ないし総勘定元帳の内訳等を記録した補助簿として、次の台帳、内訳簿等を整備することを原則とします。
 3.固定資産台帳(建設仮勘定台帳を含む)
 4.資産負債内訳簿
 加えて、各種の計算表・ワークシートを活用して財務書類を作成します。
 5.合計残高試算表
 6.精算表

2.地方公共団体の財務情報の基礎となる原情報
 1.歳入歳出データ(一部未収金・徴収不能情報等を含むが、ほとんどは現金取引)
   ・・・ 全職員が関係します。公会計は意識しなくともよい!
 2.歳計外現金データ(預り金等)
 3.各種原簿・台帳
   ・・・ 会計担当、財政担当が関係します!
を利用します。

○原情報−帳簿類−財務書類

○公会計の財務書類4表
 地方公共団体の財務書類の体系は、
 1.貸借対照表
 2.行政コスト計算書
 3.純資産変動計算書
 4.資金収支計算書(キャッシュフロー計算書)
及びこれらの財務書類に関連する事項についての附属明細書です。

1.貸借対照表(BS)
 基準日時点における地方公共団体の財政状態(資産・負債・純資産の残高及び内訳)を明らかにすることを目的とします。

・民間企業のBS 「流動性配列法」

・公会計におけるBS 「固定性配列法」 ・・・ 東京都モデルは「流動性配列法」です。

(注1)固定資産等形成分
 資産形成のために充当した資源の蓄積をいい、原則として金銭以外の形態(固定資産等)で保有されます。換言すれば、地方公共団体が調達した資源を充当して資産形成を行った場合、その資産の残高(減価償却累計額の控除後)を意味します。
(注2)余剰分(不足分)
 地方公共団体の費消可能な資源の蓄積をいい、原則として金銭の形態で保有されます。
(注3)繰延資産  無し

2.行政コスト計算書(PL)
 会計期間中の地方公共団体の費用・収益の取引高を明らかにすることを目的とします。
・「経常費用」、「経常収益」、「臨時損失」及び「臨時利益」に区分して表示します。

・民間企業のPL
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  売上
 −−−−−−−−
  費用
 −−−−−−−−
  収益
 −−−−−−−−

・公会計におけるPL     ・・・ 東京都モデルとの違いあり! 「行政収入」
 −−−−−−−−−−
  経常費用
   業務費用
    人件費
    物件費
    その他
   移転費用
  経常収益
   使用料及び手数料
            ・・・> 純経常行政コスト
 −−−−−−−−−−
  臨時損失
   災害復旧事業費など
  臨時利益
   資産売却益など
 −−−−−−−−−−
            ・・・> 純行政コスト C

3.純資産変動計算書
 会計期間中の地方公共団体の純資産の変動、すなわち政策形成上の意思決定またはその他の事象による純資産及びその内部構成の変動(その他の純資産減少原因・財源及びその他の純資産増加原因の取引高)を明らかにすることを目的とします。
・「純行政コスト」、「財源」、「固定資産等の変動(内部変動)」、「資産評価差額」、「無償所管換等」及び「その他」に区分して表示します。

 −−−−−−−−−−
 前年度末純資産残高
 −−−−−−−−−−
  純行政コスト    C <・・・ PL 純行政コスト
  財源
   税収等
   国県等補助金
 −−−−−−−−−−
  本年度差額
 −−−−−−−−−−
  固定資産等の変動
   有形固定資産の増加
     々    減少
   貸付金・基金等の増加
     々     減少
  資産評価差額
  無償所管換等
  その他
 −−−−−−−−−−
  本年度純資産変動額
 −−−−−−−−−−
 本年度末純資産残高  B <・・・ BS 純資産
 −−−−−−−−−−

4.資金収支計算書(CS)
 地方公共団体の資金収支の状態、すなわち地方公共団体の内部者(首長、議会、補助機関等)の活動に伴う資金利用状況及び資金獲得能力を明らかにすることを目的として作成します。
・統一的な基準においては、資金収支計算書の作成(会計処理)及び表示ともに「直接法」を採用しています。
・「業務活動収支」、「投資活動収支」及び「財務活動収支」の三区分により表示します。

・民間企業のCS ・・・ 収支計算書
 ・営業キャッシュフロー   収益を確保
 ・投資キャッシュフロー   資金を投資
 ・財務キャッシュフロー   資金の調達

・公会計におけるCS
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・業務活動収支
  業務支出
   業務費用
    人件費
    物件費
    支払利息
   移転費用
    補助金
    社会保障給付
    他会計へ繰出し
  業務収入
   税収
   国県等補助金
   使用料・手数料
  臨時支出
   災害復旧事業費   臨時収入            ・・・> 業務活動収支
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・投資活動収支
  投資活動支出
   公共施設等整備費
   基金積立金
   投資・出資金
   貸付金
  投資活動収入
   国県等補助金
   基金取崩し
   貸付金等元金回収
   資産売却           ・・・> 投資活動収支
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・財務活動収支
  財務活動支出
   地方債償還
  財務活動収入
   地方債発行          ・・・> 財務活動収支
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 本年度資金収支
 前年度末資金残高
 本年度末資金残高 A
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・欄外に歳計外現金について

*キャッシュフロー計算書3つの区分と行政コスト計算書・貸借対照表との関係
「平成25年度 町田市の財務諸表 〜概要と解説〜」の6ページを参照
https://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/gyouzaisei/shin_ko-kaikei/kessan/20140814153203891.files/gaiyotokaisetsu2013.pdf

平成26年11月06日

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