HOME > U+(ユープラス) > 電子自治体の行政情報化ニュース > 自治体IT革命の今日、明日 第171回 「新地方公会計制度、その6『自治体経営における公会計の役割』」
2014/12/08
今回は、自治体経営における公会計の役割についてです。
(前回より)
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○公会計の財務書類4表
地方公共団体の財務書類の体系は、
1.貸借対照表
2.行政コスト計算書
3.純資産変動計算書
4.資金収支計算書(キャッシュフロー計算書)
及びこれらの財務書類に関連する事項についての附属明細書です。
1.貸借対照表(BS)
基準日時点における地方公共団体の財政状態(資産・負債・純資産の残高及び内訳)を明らかにすることを目的とします。
・民間企業のBS 「流動性配列法」
・公会計におけるBS 「固定性配列法」 ・・・ 東京都モデルは「流動性配列法」です。
(注1)固定資産等形成分
資産形成のために充当した資源の蓄積をいい、原則として金銭以外の形態(固定資産等)で保有されます。換言すれば、地方公共団体が調達した資源を充当して資産形成を行った場合、その資産の残高(減価償却累計額の控除後)を意味します。
(注2)余剰分(不足分)
地方公共団体の費消可能な資源の蓄積をいい、原則として金銭の形態で保有されます。
(注3)繰延資産 無し
2.行政コスト計算書(PL)
会計期間中の地方公共団体の費用・収益の取引高を明らかにすることを目的とします。
・「経常費用」、「経常収益」、「臨時損失」及び「臨時利益」に区分して表示します。
・民間企業のPL
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売上
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費用
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収益
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・公会計におけるPL ・・・ 東京都モデルとの違いあり! 「行政収入」
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経常費用
業務費用
人件費
物件費
その他
移転費用
経常収益
使用料及び手数料
・・・> 純経常行政コスト
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臨時損失
災害復旧事業費など
臨時利益
資産売却益など
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・・・> 純行政コスト C
3.純資産変動計算書
会計期間中の地方公共団体の純資産の変動、すなわち政策形成上の意思決定またはその他の事象による純資産及びその内部構成の変動(その他の純資産減少原因・財源及びその他の純資産増加原因の取引高)を明らかにすることを目的とします。
・「純行政コスト」、「財源」、「固定資産等の変動(内部変動)」、「資産評価差額」、「無償所管換等」及び「その他」に区分して表示します。
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前年度末純資産残高
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純行政コスト C <・・・ PL 純行政コスト
財源
税収等
国県等補助金
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本年度差額
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固定資産等の変動
有形固定資産の増加
々 減少
貸付金・基金等の増加
々 減少
資産評価差額
無償所管換等
その他
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本年度純資産変動額
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本年度末純資産残高 B <・・・ BS 純資産
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4.資金収支計算書(CS)
地方公共団体の資金収支の状態、すなわち地方公共団体の内部者(首長、議会、補助機関等)の活動に伴う資金利用状況及び資金獲得能力を明らかにすることを目的として作成します。
・統一的な基準においては、資金収支計算書の作成(会計処理)及び表示ともに「直接法」を採用しています。
・「業務活動収支」、「投資活動収支」及び「財務活動収支」の三区分により表示します。
・民間企業のCS ・・・ 収支計算書
・営業キャッシュフロー 収益を確保
・投資キャッシュフロー 資金を投資
・財務キャッシュフロー 資金の調達
・公会計におけるCS
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・業務活動収支
業務支出
業務費用
人件費
物件費
支払利息
移転費用
補助金
社会保障給付
他会計へ繰出し
業務収入
税収
国県等補助金
使用料・手数料
臨時支出
災害復旧事業費
臨時収入 ・・・> 業務活動収支
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・投資活動収支
投資活動支出
公共施設等整備費
基金積立金
投資・出資金
貸付金
投資活動収入
国県等補助金
基金取崩し
貸付金等元金回収
資産売却 ・・・> 投資活動収支
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・財務活動収支
財務活動支出
地方債償還
財務活動収入
地方債発行 ・・・> 財務活動収支
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本年度資金収支
前年度末資金残高
本年度末資金残高 A
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・欄外に歳計外現金について
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(以上)
今回は、自治体経営における公会計の役割について。
◎自治体経営における公会計の役割
○自治体経営情報
*内部統制 4つの目的
1.財務報告の信頼性(Accountability)
2.法令などの遵守(Compliance)
3.業務の有効性と効率性(Operations)
4.資産の保全(Safeguarding resources)
1.民間企業と同じ資産(将来のキャッシュフロー、将来の収入)
2.行政サービス提供能力(公共ファシリティなど)
○施策別財務分析
財務書類の活用には以下ようなことが考えられる。
・住民などに対する財務状況の説明
・議会に対する財務状況の説明
・財務状況の分析(他団体比較、自団体経年比較)
・財政運営上の目標設定・方向性の検討
・行政評価との連携
・施策の見直し
・予算編成の参考資料
・公共施設に係る老朽化対策等の資産管理への活用
・研修等を通じた職員の意識改革
・その他
行政評価との連携、施策の見直しなどの活用で用いられる「施策別財務分析」では、以下のような指標が用いられます。(すべて各施策ごとに)
1.規模
1.住民一人当たり資産 各施策の社会資本形成の規模を表す
資産合計/人口
2.住民一人当たり負債 将来世代の負担規模(地方債)を表す
負債合計/人口
3.住民一人当たり行政コスト 住民へのサービス提供の規模を表す
行政コスト合計/人口
2.健全性・安全性
1.将来世代負担率 社会資本形成のうち将来世代の負担割合を表す
負債合計/資産合計
3.住民負担
1.住民一人当たり税など負担 住民がどれだけの負担をしているか表す
一般財源等/人口
2.税等負担割合 サービス提供に対して、住民の負担割合を表す
一般財源等/行政コスト合計
4.効率性
1.職員一人当たり資産 職員一人当たりでどれだけの社会資本を維持管理運営をしているかを表す
資産合計/職員数
2.職員一人当たり行政コスト 職員一人当たりでどれだけの行政サービスを提供したかを表す
行政コスト合計/職員数
3.人件費比率 行政サービスの提供に対する人件費の割合を表す
人件費/行政コスト合計
5.成長性
1.資産成長率 社会資本形成の成長率を表す
当年度資産合計/前年度資産合計
2.行政コスト成長率 行政サービス規模の成長率を表す
当年度行政コスト合計/前年度行政コスト合計
○財務書類の活用状況
・住民などに対する財務状況の説明
・議会に対する財務状況の説明
・財務状況の分析(他団体比較、自団体経年比較)
・財政運営上の目標設定・方向性の検討
・行政評価との連携
・施策の見直し
・予算編成の参考資料
・公共施設に係る老朽化対策等の資産管理への活用
・研修等を通じた職員の意識改革
・その他
○今後の新地方公会計の推進に関する実務研究会(第5回)(総務省 14/10/14)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chikousuijitu/02zaisei07_03000095.html
(2)財務書類等の活用事例について
財務書類等の活用事例(大阪府作成資料) ・・・・・ 資料5-1
財務書類等の活用事例(東京都町田市作成資料) ・・・・・ 資料5-2 別紙
財務書類等の活用事例(遠藤委員作成資料) ・・・・・ 資料5-3
財務書類等の活用事例(小室委員作成資料) ・・・・・ 資料5-4
財務書類等の活用事例(菅原委員作成資料) ・・・・・ 資料5-5
財務書類等の活用事例(中川委員作成資料) ・・・・・ 資料5-6
財務書類等の活用事例(東京都作成資料) ・・・・・ 資料5-7
財務書類等の活用事例(愛媛県砥部町作成資料) ・・・・・ 資料5-8
財務書類等の活用事例(千葉県習志野市作成資料) ・・・・・ 資料5-9
財務書類等の活用事例について、大阪府と町田市を抜粋しました。
1.大阪府新公会計制度ホームページ
http://www.pref.osaka.jp/kaikei/shokai.html
マクロ的視点
1.財政運営上の目標設定
・財務書類に係る指標を財政運営上の目標値に設定
例)資産老朽化比率(50%→40%)
純資産比率(50%→60%) 等
2.資産の適切な管理
・将来の施設更新必要額の推計
→ 施設の更新時期の平準化、総量抑制等の全庁的な方針の検討
・未収債権の徴収体制の強化
→ 貸借対照表上の回収見込額を基にした債権回収のための全庁的な組織体
制の検討
ミクロ的視点
1.セグメント分析
事業別・施設別の行政コスト計算書等を作成することでセグメントごとの分析
が可能
・行政評価との連携
→ 利用者1人当たりコスト等を活用して評価
・受益者負担の適正化
→ 受益者負担割合による施設使用料の見直し
・施設の統廃合
→ 施設別コストの分析による統廃合の検討
・予算編成への活用
→ ライフサイクルコストを踏まえた施設建設の検討
財務会計的な活用
1.情報開示
・IR資料等としての活用
→ 投資家等の市場関係者に対する説明資料として活用
・地方議会での活用
→ 財務状況の審議を深めることによる監視機能の効果的な発揮
2.町田市
事業別財務諸表
事業別財務諸表を整備し、個別具体的な事業のストック情報やフルコスト情
報を明らかにし、「組織の使命」や「事業の目的」、「事業の成果」といった
非財務情報を交えた費用対効果の分析を加えることによって、マネジメント上
の課題を明らかにすることが目的です。
事業マネージメントに向けて得られる情報
・事業の成果と関連付けた行政コスト
・行政コストの経年比較
・単位あたりの行政コストによる効率性の分析
・事業のストックについての財務情報
・事業類型別の財務分析
・財務分析で明らかになった課題
平成26年12月04日