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自治体IT革命の今日、明日
第207回 「分権社会における地方自治体と情報化施策」

2017/12/11

 12月「師走」です。24節気の「小雪」が過ぎ七日は「大雪」でした。

(2001年02月の記事より)
◎「分権社会における地方自治体と情報化施策」
 分権社会で期待される効果、受益者負担原則と行政情報の公開原則、分権時代の自治体経営、実行せざるを得ない行動指針、情報化推進のビジョン、情報化施策などについて整理してみました。
 地域住民から見た地方自治体の自立性を期待するものです。

○期待される三つの効果
1.「住民自治・住民民主主義」の活性化、徹底効果
 首長が「国の機関」たる地位から解放されることによって、これまで以上に地域住民の意向に鋭敏に応答するようになることである。また、地方議会の機能が強化され、首長に対する監視・牽制・批判機能の重要性が増す結果、住民の自治体に対する働きかけが活性化し、自治への住民参画が促進されるという。
2.「地方自治の本旨」の実現
 自治体の行政サービスが地域住民の多様なニ−ズに即応する迅速かつ総合的なものになるとともに、住民の自主的な選択に基づいた個性的なものになることである。その結果、自治体は競い合ってよりよいサービスをめぐり切磋琢磨する。住民を審判とする競争に破れた自治体の首長と議会は敗北の責めを負わねばならない。
3.行政府全体の生産性向上・効率化効果
 これまで国・都道府県・市町村の間で行われていた報告・協議・申請・許認可・承認等の事務が大幅に簡素化されることによって、政府間の意思決定のコストが節約される結果、節約分を行政サービスの質・量の改善に振り向けることができることである。

○行政サービスの向上へ・・・「受益者負担原則と行政情報の公開原則」
 これまで行政サービスの内容や基準は概ね国によって一律に定められていたのが、分権型社会では自治体の判断と責任において独自に設定することが可能となるため、サービスの受益者からの要求・要望によって直接に影響を受けることになる。自治体ごとのシビル・ミニマムが施策の基本となる。
 自治体は、いわばデマンド・サイドの行政サービス提供を強いられるだろう。
行政サービスは受益者住民の需要によってその種類や内客が決定されるため、住民参画の名のもとに各種の利益集団・圧力団体が勢いづき、首長や議員を突き上げる光景が常態化する。つまり、自治体のより一層の「政治化」である。
また、自治体によって行政サービスの内容や水準に差が出るのは当然で、後進的な自治体からの人口流出や先進自治体との合併要求が沸き上がることは予想しなければならない。
 受益の増大が自らの負担の増大に直結することを知りうるならば、住民は、受益と負担の最適均衡を求める経済人として合理的に行動するだろう。経済人としての住民は常に自治体の経営内容について最大限正確で透明な情報提供を求めるし、効率性、生産性、節約といった価値を重視する自治体経営を求めるにちがいない。

○分権時代の自治体経営
 日本の分権時代は未曾有の財政難とともに訪れた。それなりに経営化や改革を重ねてきた自治体も今はリストラないし減量経営を中心にせざるをえないようである。しかも、国際化、高齢化、成熟化、情報化の「四化」をはじめ時代環境は困難と不透明感を増すばかりである。

○実行せざるを得ない四つの行動指針
1.受益と負担の関係を明確に!
 自治体が今以上に減量経営やリストラに励むべきことはいうまでもない。だが、受益者住民からの行政サービスの多様化・増大が予想される分権時代にあっては、多様化・増大のコストは自治体改革だけで吸収すべきものでも、筋合でもないだろう。行政サービスの質・量の拡大にはコストと負担が伴うことを首長・議会はきちんと住民に説明しなければならない。それは代表制民主主義を担う者の使命であり、もしこの使命が全うされなければ「分権は国を亡ぼす」結果ともなりかねない。
2.「内なる分権・住民自治」の推進!
 もともと地方政府は地方公共団体の行政システム(団体自治)と地域住民共同体の中で機能する自治システム(住民自治)によって構成されている。江戸時代は公共事務のほとんどはこの自治システムによって担われていた。いまは行政システムがほぼ独占している。しかし、社会環境の「四化」は自治システム(住民自治)の復権と再興の主体となる人材・組織を輩出してきている。彼等を公認し権能を授権することで、自治システムの活用・拡充につなげていかねばならない。 3.地域住民指向の「顧客満足型行政運営」を!
 集権時代は縦割りの壁が強固であった。だが、分権時代になると中央省庁の縦割りのしばりはかなり緩むだろう。一方、住民からの総合的行政サービスの需要はますます高まってくる。したがって、自治体職員はこれまでの縦割り型発想を改め、行政サービスを受益者本位に考え行動することが求められる。
4.Ⅰ型・π型人材育成(「政策的分野に、専門家」を!)
 分権により自治体独自の責任と判断で創造し決定しなければならない事務が増えると、どうしても専門家が不足する事態が生じる。自治体の自立性を尊重するならば、高齢者福祉、都市計画、廃棄物処理といった政策的な分野についてある程度深い専門的知識と経験をもった人材を育成する必要がある。組織の都合を優先した無計画人事を脱却し、分権時代の自治体経営を真に担える実力派公務員を誕生させることが望まれる。

 分権型社会における自治体経営に求められる四つの行動指針に、対応・適応した情報化ビジョンをかかげるべきと思われる。地域住民への「高品質な生活環境」と「高福祉社会環境」の整備実現へ向けた情報化と言える。
 地域社会の活性化と心豊かな快適社会生活の環境整備、其の為の地域住民とのコミュニティの形成が必要となるであろう。

○情報化施策
 庁内・行政間情報共有環境の整備と知的生産性向上対応の情報化を前提条件の上、以下のような情報化施策が必要である。
1.国際化・グローバル化対応の情報化(外国人政策及び広報・公聴政策)
2.高齢化対応の情報化(健康・福祉政策及び少子化政策)
3.成熟化対応の情報化(アメニティ生活環境政策)
4.地域活性化の為の情報化(NPO、SOHOなど地域事業支援政策)
5.文化創造の為の情報化(生涯学習政策)
6.コミュニティ情報化(双方向コミュニケーション)
7.情報公開の為の情報化(開かれた地方行政と住民自治政策)
*利便性向上の為の情報化(ポータルサイトとクリアリングシステム)

 地方分権一括法が施行されて1年が経とうとしている。地域住民にとって住む価値のある”まち”をおおいに期待するところである。
 受益と負担の関係を明らかにし、住民自治の推進のもと地域住民指向の「顧客満足型行政運営」が求められる。その為にも、Ⅰ型・π型人材育成が必要となる。特に政策的分野に専門家を配置する必要もおこる。
 現状肯定では、分権社会は実現しないであろう。機構・組織改革のもと、戦略的IT活用を避けて通れない。情報化戦略の必要性がある。

平成29年12月07日

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