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自治体IT革命の今日、明日
第216回 「電子自治体とAI、その5『RPAとデジタルレイバー(仮想知的労働者)』」

2018/09/10

 9月「長月」、8日は24節気の「白露」です。秋が深まり、草花に朝露がつきはじめる頃という意味です。空は高くなり、秋雲がたなびくようになり、本格的な秋の到来です。また、実りの秋を前に台風が心配な時期でもあります。

〇働き方改革と業務効率改革へ向け
 労働人口の減少に直面している日本にとって、労働生産性の向上は喫緊の課題です。しかし、現状は厳しい。日本生産性本部が公開した「労働生産性の国際比較(2016年度版)」によると、日本の労働生産性は、主要先進7カ国の中で最も低い。
 こうしたことから経済産業省は、2030年の労働生産性を2015年の1.6倍(GDP比)にする目標を掲げている。だが、これを達成するためには、労働者1人あたりの生産性を 1.8 倍にしなければならない。
 このような状況で注目されているのが、ロボット(デジタルレイバー)による業務自動化技術「RPA(Robotic Process Automation)」である。

〇RPAとは
 「ユーザーインタフェース上の操作を認識する技術とワークフローの実行を組み合わせることで、人間が各種アプリケーション上で実行する『手作業』を模倣し、各種アプリケーションを介して、システム間で構造化データを自動的に移動・入力するよう設計されたソフトウエアの総称」。
・RPAの基本機能

①ワークフローエンジン:
 あらかじめ定義したワークフローを解釈し、実行エージェントに指示するエンジン。
②実行エージェント:
 ワークフローエンジンから受けた指示を実行するエンジンで、狭義のソフトウェアロボットに該当する。
③レコーディング/デザインツール:
 手作業での操作を記録するレコーディングツール、あるいはスクラッチから自動化する操作を定義するためのデザインツール。カスタム開発を好む場合は自由度の高い後者、そうでない場合は前者を使う。
 上記3機能を組み合わせて、企業は「完全自動化」か「部分自動化」のどちらかを実現している。完全自動化はプロセスの最初から最後までを一切の手作業を介さずに実行するもの。部分自動化はプロセスの途中に人間の介入を排除できないタスクで、人間が行う作業の品質や効率を高める支援機能を提供するもので、完全自動化との組み合わせも可能だ。
・「コネクティビティ」とは、アプリケーション連携のためのAPIやコマンドなどが該当する。将来、今以上に複雑なプロセスを自動化する際に、多種多様な業務アプリケーションを連携させることが不可欠になってくる。
 自動化の適用範囲を広げる際には、
・「監視と管理」による一元管理がITガバナンスの側面から見て望ましい。
各ベンダーのソリューションは、「コネクティビティ」「監視と管理」を製品アーキテクチャーに備えているかどうかで差がつく。

〇現時点のRPAはAIとは別物

 ルールに基づいて予測可能なルーティン業務を処理するのが「完全自動化」であり(図の上、(ア))、予測不可能な動的/アドホックな業務で判断を下し、処理をするのが「部分自動化」である(図の下、(イ))。
 RPAが処理できるのは現時点では構造化されたデータだけであるということ。音声や文書のような非構造化データを処理するAIとは別モノと考えるべき。
 ただし、RPAも将来は非構造化データも扱えるようになる可能性は高い。また、機械学習の実装を製品ロードマップに入れているRPAベンダーも存在する。
 いずれAIが新しいワークフローを自動生成できるようになれば、人間の判断が介在する複雑なプロセスでも自動化が可能になるだろう。

〇RPAの三段階の自動化レベル
 現在のRPAの多くは「クラス1」というレベルで定型業務に対応している。次期レベルの「クラス2」は、AIと連携して非定型業務でも一部は自動化される。「クラス3」は、より高度なAIと連携することで、業務プロセスの分析や改善だけでなく意思決定までを自動化できる。

 RPAは、これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を人間に代替して実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用した業務を代行するツールになりつつある。人間の補完として業務を遂行することから、仮想知的労働者(Digital Labor)として、2025年までに事務的業務の1/3の仕事がRPAに置き換わるインパクトがあるともいわれている。

〇RPAで目指すデジタルレイバー(Digital Labor)
・RPA本格導入時のアプローチ手法
 直下型、現場型の2つのアプローチがある。
1.直下型アプローチ
 全社最適の観点からすべての業務を棚卸し、導入効果の大きい業務から順にRPAを導入する。各部門で利用するロボットはプロジェクト側で集中的に開発・管理する。
2.現場型アプローチ
 各業務部門の判断でRPA化を推進する。ロボットの開発・導入を担う人材を各部門で選出・育成し、RPA化したい業務も各部門で選定する。
ロボットの開発・導入・運用・保守も各部門で行い、必要に応じてIT部門などのサポートを受ける。
 直下型は対象業務の約20%が全体のRPA化効果の80%を創出するため、短期間で最大の効率化実現を達成したい場合に適している。現場型は文字通り現場が主導的な役割を果たすため、RPAの長期的な自走化を目指す場合に有効。

〇デジタルレイバーへの進化
 現在はRPAの単体利用が主流だが、RPAはコグニティブ・コンピューティングやAIとの連携で進化を続けていく。
・RPAを単体利用する「ステージ1」
・コグニティブを活用する「ステージ2」
・AIを活用する「ステージ3」

 そして、ステージ4の汎用AIからステージ5の実空間作業での業務全般へと進化すると思われます。人々は、人間しかできない業務へ集中することとなるでしょう。

〇RPAの将来は
 現在のRPAはデジタル化の次のステップへのつなぎ役という側面を担っている。業務プロセスが固定化されている定型業務の自動化に主として使われている。
 今後は、AI、ビッグデータ、IoT、スキャン技術など進化してゆくデジタル技術と組み合わせることによって、業務の分析・改善、意思決定までが自動化されてゆく。

平成30年09月06日

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