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自治体IT革命の今日、明日
第217回 「電子自治体とAI、その1『公文書管理法』」

2018/10/09

 9月23日は24節気の「秋分の日」でした。10月08日は「寒露」です。草木に冷たい露が降りる頃という意味です。
 秋の長雨が終わり、ぐっと秋が深まります。稲刈りが終わるころで、その他の農作物の収穫もたけなわとなります。また、北の方から紅葉の便りが届きはじめます。過ごしやすくなります。

 第六章32条は、地方公共団体への文書管理施策の要請です。

〇公文書管理法
1.主旨
*国民に対する説明責任
 「国民主権」ということから考える必要がある。国民が主権者であるということは、政府は国民から政治を委託されているという関係になる。
 そのため、政府の側は国民に対して、行った施策に対して説明責任を有することになる。
 2001年に施行された情報公開法は、国民が政府の施策に対して情報の開示を求めることができるようにした法律であった。この法律は、政府、官僚側に対して「説明責任」を果たさなければならないという意識を植えつける意味でも重要な意味を持った。
 一方で大きな問題が持ち上がってきた。それは、「情報そのものが作られない」「情報を勝手に捨てて無かったことにする」という問題である。情報公開法はあくまでも「存在する公文書」に対する情報開示を求めるものである。つまり、実際の公文書がなければ、開示請求は意味をなさなくなるのだ。
*未来に対する説明責任
  −> 国立公文書館(原則公開)

*背景
 ・社保庁の年金問題(杜撰な管理問題)
 ・厚労省のC型肝炎資料放置問題
 ・防衛省の「とわだ」航海日誌破棄問題

 10余年も前から問題があった公文書管理。今も変わらず問題山積!

 第一章1条の理念は素晴らしい!しかし、運用面での問題が多い。
・森友学園問題:国有地取引における文書改ざん・破棄
・南スーダン陸上自衛隊の日報問題:
・文科省「加計学園」問題:新設をめぐる文書を個人メモ・備忘録と主張
などなど。
下記記事参照!
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〇公文書管理、改革すべき4点(朝日 18/06/22)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13550953.html?_requesturl=articles%2FDA3S13550953.html&rm=150

1.あいまいな保存期間
 歴史資料として重要な「歴史公文書等」に当たらない文書について、公文書管理法は保存期間満了とともに廃棄しなければならないと行政機関に義務づけ。
・学校法人「森友学園」との国有地取引をめぐる文書改ざんや廃棄
・南スーダンに派遣された陸上自衛隊の日報
2.公開免れる個人メモ
 公文書を「行政機関の職員が職務上作成し、又(は取得した文書で行政機関の職員が組織的に用いるもの」などと定義。
・学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる文部科学省の文書
 「個人のメモ」「備忘録」だと主張
3.廃棄されるメール
 電子メールについても文書の作成、または取得の状況などを総合的に考慮して(行政文書かどうか)実質的に判断することが必要。
 米政府は全てのメールを最低3〜7年は保存し、幹部職員のメールは永久保存する「キャップストーン・アプローチ」という運用を導入。
4.違反しても罰則なし
 公文書管理法に刑罰の定めはない。
・刑法に虚偽公文書作成や公用文書毀棄(きき)、公文書偽造・変造などの罪があるが、大阪地検は「文書の効用を失ったとは言えず、うその文書を作ったとは認められない」と判断。告発された財務省幹部の全員を不起訴にした。だれも懲戒免職にならなかった。
・公文書を意図的に改ざんしたり、廃棄したりしても、刑罰もなく、免職にもならない現状には識者から批判もある。
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*「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」
  −> 最終報告書(平成20年11月)
*平成21年(2009年)6月 衆参議院にて可決(公布後2年以内に施行)
*平成23年(2011年)4月 施行

2.法案
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 行政文書の管理(第四条―第十条)
第三章 法人文書の管理(第十一条―第十三条)
第四章 歴史公文書等の保存、利用等(第十四条―第二十七条)
第五章 公文書管理委員会(第二十八条―第三十条)
第六章 雑則(第三十一条・第三十二条)
附則
 公文書管理法案は6章32条で構成されている。

3.概要
第一章は総論
 ・法案の理念(1条)
 ・言葉の定義(2条)
 ・公文書管理についてはこの法律が基本法であること(3条)
第二章は、行政機関における公文書管理について
 ・意思決定文書の作成義務(4条)
 ・整理管理規則(5条)
 ・保存義務(6条)
 ・ファイル管理簿への記載義務(7条)
 ・移管廃棄規則(8条)
 ・管理状況の報告義務(9条)
 ・管理規則作成(10条)
第三章は、独立行政法人における公文書管理について
      (第二章の独法バージョン)
第四章は、国立公文書館等(「等」には宮内庁書陵部、外務省外交史料館が入っている)における文書管理のあり方について
 ・「国の機関(行政機関を除く)」(国会や裁判所)からの国立公文書館への文書移管を可能とする条文(14条)
 ・文書保存の方法(15条)
 ・不開示にできる場合の規程(16条)
 ・情報対象の本人が請求してきたときの対応(17条)
 ・請求された文書に自分に関連する情報が記載されている第三者からの公開への反論権(18条)
 ・文書の利用方法(19条)
 ・資料複写料(20条)
 ・異議申し立て(21条)
 ・異議申し立て手続き(22条)
 ・資料の利用促進(23条)
 ・移管元機関からの利用に不開示無し(24条)
 ・資料の廃棄手続き(25条)
 ・管理状況の報告義務(26条)
 ・利用規則作成(27条)
第五章は、内閣府に作られる公文書管理委員会について
 ・委員会の定義(28条)
 ・委員会へ諮問しなければならないこと(29条)
 ・委員会からの各行政機関
 ・公文書館への資料等請求権(30条)
第六章は、その他。
 ・首相による行政機関への改善勧告権(31条)
 ・地方公共団体への文書管理施策の要請(32条)
附則は、関係法の改正や施行日など。情報公開法や国立公文書館法の改正。

4.理念
〇公文書管理法の理念(1条)
 この法律は、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。

5.課題
〇「公文書の定義」の課題
・「組織共用文書」という概念:
 情報公開法の組織共用文書の定義を公文書管理法に適用することは
   ・・・ 正しいのでしょうか?
 「組織として共同利用した文書」ということは、
  −> 「決裁文書」だけ残っていれば問題ないという考えです。
      ・・・ 途中の「政策過程」の文書は残っていない!という意味です。
  ー> 「記録保存型文書管理」の視点から文書管理を行うべき!ではないでしょうか。

〇延長、移管・廃棄の権限の課題
・公文書管理法の作成上で大きな問題は、
 「国立公文書館への公文書の移管が進まない」
 「公文書を勝手に各省庁が廃棄している」
 「移管したくないが故に勝手に保存年限を延長している」
ということが挙げられていた。

原因は、
「延長、移管・廃棄の権限を各省庁が握っているために起こっている」

 以下の方策は賛否こもごもです。
・延長に関しての具体的方策
 保存期間の延長や延長期間の適正性を確保するため、公文書管理担当機関が定める基準に基づき、各府省の文書管理担当課がチェックする仕組みとする。
 各府省において基準に基づき適切な判断が行われているかについて、公文書管理担当機関がチェックする仕組みとする。
・移管・廃棄に関しての具体的方策
 移管・廃棄の是非について、より適切かつ効率的に判断できるよう、移管・廃棄基準の具体化・明確化を図り、移管基準に適合するものについては、原則移管とするとともに、公文書管理担当機関の判断を優先する仕組みを確立する。

1.各府省において、ファイル管理簿にファイルを登録する際、保存期間満了時の移管・廃棄の扱いについて、公文書管理担当機関が定める統一的基準に基づき一次的な評価・選別を行う、
2.各府省の一次的な評価・選別の結果について、公文書管理担当機関がチェックする、
3.各府省及び公文書管理担当機関の評価・選別の判断について、文書管理に関する専門家(レコードマネージャー、アーキビスト等)が適切にサポートする仕組みとする。

〇ファイル管理簿の問題
 ・ファイル管理簿への記載義務(7条)
 ・ファイルを登録する際、保存期間満了時の移管・廃棄の扱いについて、公文書管理担当機関が定める統一的基準に基づき一次的な評価・選別を行う。

6.その他
 ・地方公共団体への文書管理施策の要請(32条)

 こんなことも重要です。
〇文書は原則電子データに!
・働き方改革関連法(2018年06月成立、2019年04月施行)を受けて、地方自治体がワークスタイル変革へ
 ワークスタイル変革を推進するためのワークプレイス改革の取組みが進められている。ムダな「紙・机・執務スペース・残業」をなくす、「会議・照会業務・定型業務・窓口業務・現金取扱い・文書管理」のムダをなくす、などなど。
 「コミュニケーションの活性化」というワークスタイル変革テーマでは、無線LANの環境整備のもとペーパーレスの観点から、文書管理の在り方を見直し、資料は原則電子データ(PDFなど)で保管する。 ・・・ 神戸市の事例です。

平成30年10月04日

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