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自治体IT革命の今日、明日
第233回 「ブロックチェーン、その3『次世代のブロックチェーン』」

2020/02/03

 4日は「立春」。二十四節気の最初の節気で、この日から暦の上では春となり、さまざまな決まりごとや節目の基準になっています。旧暦では立春近くに正月がめぐってきたので、立春は春の始まりであり、1年の始まりでもありました。まだまだ寒さは厳しいですが、立春を過ぎてから初めて吹く強い南風を「春一番」といいます。
 ・・・ 暮らしの歳時記より ・・・

(前回より)
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 「ブロックチェーン国家」と言われるエストニアは、2007年のサイバー攻撃をきっかけに「データの完全性」を国家の存在価値と位置づけました。2011年に「KSIブロックチェーン」を導入、一秒ごとにデータの完全性を証明するしくみとした。

◎「ブロックチェーン、その1『ブロックチェーンとは』」
・インターネットに次ぐIT革命
 ブロックチェーンという共通の台帳をネットワークの参加者全体で管理するシステムは、インターネットに次ぐIT革命であると言われており、世界中に大きなインパクトをもたらしている。
〇ブロックチェーン
 ブロックチェーンとは、P2P方式の通信によって繋がるネットワークの参加者たちが、共通の台帳を管理することで、様々な取引を実現する仕組みです。
一定時間毎にトランザクション(取引)をネットワーク上に書き込み、一塊のデータとして承認する。トランザクションにいくつかの必要事項を追加したデータの一塊が、ブロックチェーンにおけるブロックです。ブロックの中のデータはハッシュ化と呼ばれる操作を加えられ、その結果であるハッシュ値という形で次のブロックに継承されます。すべてのブロックのハッシュ値が次のブロックへのハッシュ値へと継承されていくため、どのブロックも最終的にはジェネシスブロックと呼ばれる一番最初に生成されたブロックまでの情報を有していることになります。データの塊であるブロックがハッシュ値によってチェーンのようにつながっていくため、ブロックチェーンという名前がつけられました。
 ブロックチェーン上に書き込まれたデータは特定の1つのサーバーではなく、ネットワークに参加するすべての人のデバイスに存在します。そのため、特定の誰かがデータを操作することはできません。データに関する権限がネットワークの参加者全員に平等に存在するのです。これがブロックチェーンが自立分散的な技術であると言われる所以であり、ブロックチェーンのセキュリティ、非改ざん性を担保しています。
 特定の管理者を必要としないブロックチェーン上でのやり取りは、ネットワークの参加者全体によって検証されます。ブロックチェーン上でのやり取りは、特定の誰かを信頼する必要がなく、トラストレスなやり取りであると言われています。
 共通の台帳管理によってやり取りを記録していくブロックチェーンは、価値の移転、価値の記録、自立分散的なアプリケーションなどといった、複数の分野に応用され得ると、仮想通貨に限らず様々な応用法が検討されています。
〇ブロックチェーンでセキュリティが担保される仕組み
・ハッシュ関数
 ブロックチェーンを繋いでいくハッシュ化という操作があります。実はこのハッシュ化がブロックチェーンの改ざんを防いでいるのです。ハッシュ化には、入力される情報が少しでも異なると出力される暗号が全く異なったものになるという性質があります。ブロックのハッシュ値には過去のトランザクションの全てが組み込まれているので、もし過去の一時点におけるトランザクションの情報を操作すると、その後全てのブロックにおけるハッシュ値と辻褄が合わなくなります。このような仕組みを用いてブロックチェーンは改ざんを防いでいます。
・公開鍵暗号方式
 この仕組を成立させるための技術が秘密鍵と公開鍵という暗号方式です。これらは、公開鍵によって変換された暗号はそのペアとなる秘密鍵によってのみ解読できるという性質を持っています。AさんからBさんに送金する場合は、AさんがBさんの公開鍵を使って暗号化することで、Bさんにしか使用できないトランザクションを生み出しているのです。こうして、トランザクションを他者が不正に利用できない仕組みが成立しています。
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 ブロックチェーン技術を構成する要素技術をもとに「技術的な仕組み」を整理すると、
1.ブロック形成
 ・公開鍵暗号(電子署名とハッシュ)
 ・コンセンサスアルゴリズム
2.分散管理
 ・P2P
*参照 IAIS 平成30年度レポート
 「ブロックチェーン技術が行政に与える影響に関する調査研究」報告書
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◎ブロックチェーン、その2『ブロックチェーン誕生とビットコイン』」
・「サトシ・ナカモト」なる人物
 ビットコインが世に出て10年が経過し、その土台であるブロックチェーン技術に注目が集まっています。
 仮想通貨ビットコインが登場したのは2009年01月のこと。その3カ月前にインターネット上に「サトシ・ナカモト」なる人物の論文がきっかけでした。銀行などの仲介業者を介することなく、利用者同士で取引をすることが可能です。
 従来のお金の流れを変えるモデルとして注目を集めました。このビットコインが、ブロックチェーンという革新的な技術の最初の実用例となりました。
・ビットコインにまつわる出来事
2009年10月 ビットコインと法定通貨(ドル)の交換レートが決まる
2010年02月 ビットコイン取引所が開業
   05月 ピザ2枚(25ドル)と1万BTCが交換
   07月 MTGOXが開業
   08月 1840億BTCが偽造される
2011年06月 MTGOXがハッキング被害、価格が大幅にダウン
2013年12月 1ビットコインの価格が10万円を超える
2014年02月 MTGOXが取引を中止し閉鎖
   04月 日本初の取引所「BTCBOX」が開業
   12月 マイクロソフトがビットコイン決済の受付を開始
2017年12月 ビットコイン価格が220万円を超える
・取引の6つの流れ
1.自分の発行する取引手形「に秘密のサインで署名する。
2.署名した取引をネットワークに公開(ブロードキャスト)する。
3.取引は過去の取引と一貫したブロックの中に取り込まれることで、改ざんできなくなる。
4.取引記録の取り纏めと更新はマイナーが実施する。
 マイナーとは、一定の負担を必要とする計算(マイニング)を行う人々のこと
5.正解の調整値を発見して、ブロックを追加したマイナーは、報酬としてビットコインを得る。
6.新しく更新されたブロックにネットワーク全体が同期する。
・一方向ハッシュ関数と公開鍵暗号方式
 (前回を参照してください。)
・トランザクションのブロードキャスト
 自分が行うトランザクションに秘密鍵で署名し、ネットワーク内のサーバーに送信することをブロードキャストと言う。
・ハッシュ関数を用いた入れ子型のデータ構造
 過去のブロックの情報は、一方向ハッシュ関数によって次のブロックに引き継いでいくことで、データの改ざんを受け付けない強固なものとなっていく。
・ナンス値とコンセンサスアルゴリズム
 ナンス値によって参加者の合意形成(コンセンサスアルゴリズム)を実現
・計算競争のインセンティブ
 報酬として12.5BTCを受領(2018年〜現在)
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*2019年12月23日時点 1BTC = 821,746 円
 ゆえに、12.5BTC = 10,271,825 円
 1千万円超という非常に大きなインセンティブです。
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・ビットコインのブロックチェーン概念
1.公開鍵暗号方式で本人確認
2.P2Pネットワークでの取引公開
3.入れ子型のデータ構造
4.計算競争によるブロック作成(PoW)
5.ブロック作成者に対する報酬
6.最新ブロックへの同期
・基本的な特徴
 誰も管理していない分散型のネットワーク内で、すべての出来事を改ざんできないように記録していく仕組み。
1.障害や攻撃に極めて強い
2.ネットワーク内の出来事を網羅的かつ透明に記録する
3.改ざんやコピーができない
4.管理者不在の平等なネットワーク
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(以上)

〇イーサリアムとスマートコントラクト
 イーサリアムによるスマートコントラクトの発案によって、ブロックチェーン上に将来の出来事をあらかじめ記録し、それを確実に処理することができるようになりました。

・イーサリアムの誕生
 ビットコインに代表される初期のブロックチェーンは、「たった今行われた出来事」を順次記録していくだけの仕組みでした。
 2013年にカナダ人のヴィタリック・ブテリンが発表したイーサリアムによって「当事者が合意する条件のもと、特定の処理を、将来において確実に実行すること」が可能になります。これがスマートコントラクトの始まりでした。
・従来の契約とスマートコントラクトの違い
 一般的な「契約」とは、当事者どうしが行ったなんらかの約束が、将来きちんと果されるように、法律とその執行機関の下で合意をとりかわすことです。
 スマートコントラクトの場合はこれと異なり、ブロックチェーン上に自動的に作動するプログラムを実装することで、特定の第三者による仲裁なしに確実に合意内容を執行することができます。
・ブロックチェーン上にプログラムを実装する
 イーサリアムにおけるスマートコントラクトとは、ブロックチェーン上に実装されるプログラムを指します。プログラムそのものと、プログラムの実行結果を記録していくことができるようになっています。
 「Ethereum Virtual Machine(EVM)」というプログラム実行環境と、EVMに指示を下す「Solidity」という柔軟なプログラミング言語をブロックチェーンに組み込んでいます。
 これにより、原理的にはありとあらゆるプログラムを、公共のブロックチェーン上に実装することが可能になりました。
・分散型アプリケーション(DApps)の誕生
 イーサリアムの登場によって、ブロックチェーンは様々なプログラム・アプリケーションを提供することのできる、管理者不在の汎用プラットフォームへと進化しました。

*DApps:ブロックチェーンを用いた分散型(非中央集権型)のアプリケーション。発行されるトークン(仮想通貨)を使って、利用することができる。
ビットコインもDAppsの一種。

〇ブロックチェーン上のトークン(仮想通貨)
 ブロックチェーンの合意形成に対する報酬として得られる仮想通貨は、各ブロックチェーン上の基軸通貨として扱われます。
 基軸通貨を中心として、ブロックチェーン上では様々なトークンが発行されています。

・代替通貨トークンとその役割
 ある通貨システムの中で、サービスや利用シーンごとに最適化して発行され通貨としての役割を果たすもののことを代替通貨と呼びます。日本円の中でのSuicaなどの電子マネー、Tポイントなどの電子ポイント、商品券や図書券、肩たたき券も代替通貨の一種です。
 イーサリアムのようなプラットフォーム型のブロックチェーンでは、スマートコントラクトを使って代替通貨を自由に発行することができ、一般に「トークン」と呼ばれています。とくに、DAppsの開発にあたっては、従来の広告モデルや手数料モデルではない、独自の報酬モデルを成立させるために、こうしたトークンをサービス内に組み込むことが一般的です。
・トークンの分類
「ファンジブルトークン」:
 円やドルなどのお金と同様に、共通の単位によって資産価値を自由に分割・代替することができるもので、「仮想通貨」の多くがこれにあたります。
 基軸通貨−>ビットコイン、イーサ、イオス、ジリカ
     −>円ドルなど現金(リアル)
 代替通貨−>セキュリティトークン、ユーティリティトークン
     −>株券、商品券(リアル)
「ノンファンジブルトークン」:
 骨董品やアート作品のように唯一固有の存在として発行される、分割や部分譲渡できないものです。

〇スマートコントラクトでトークンを発行する「ICO」
 ブロックチェーンの開発者やユーザーがDAppsをはじめとするエコシステムに参加する動機付けとしてトークンを発行しています。

・サービス開発には報酬が必要
 ブロックチェーンを用いたDAppsを開発する人たちには、手数料などによる利益が生まれにくい傾向があります。開発しても得られるメリットが少ないと良いサービスが生まれません。人が集まらず、開発が進まなくなる、という悪循環に陥ります。そのため、トークン発行で開発やマーケティングにかかる資金を集める必要があります。
 管理者不在のブロックチェーンにおいて開発資金を集めるために、ICO(Inicial Coin Offering)という手法が生まれました。

〇DAppsとWeb3.0の到来
 中央集権的なオンラインアプリケーションがあふれています。しかし、ブロックチェーン技術の進展により、管理者のいないWeb3.0の時代が訪れようとしています。

・6つの特徴
1.一元的な管理者が存在しない
2.マシンもプログラムもダウンすることがない
3.データの所有権をユーザー本人が持つ
4.すべてのデータは固有の情報として資産的価値を持つ
5.誰でも誰とでも自由なやり取りができる
6.同じプラットフォームを利用しているため相互運用性が高い

・Web3.0の時代へ
 従来のインターネット(Web2.0)の世界は、GoogleやAppleのような巨大プラットフォームという市場の元締めとサービス提供者という個人商店を中心としたものでした。一方、新しいWeb3.0の世界はDAppsという自動販売機を介して個人間で取引をするものになっていきます。
・広告による事後徴収モデルからの脱却
 「便利なものを作るのでみなさん出資をお願いします」と言って資金を集め、「できたものはみんなで自由に利用しましょう」というモデルで、新しいサービスが生まれていくことになります。

2020年01月30日

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