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自治体IT革命の今日、明日
第240回 「地方自治体のキャッシュレス決済、その2『行政キャッシュレス決済事例』」

2020/09/14

 7日は24節気の「白露」でした。秋が深まり、草花に朝露がつきはじめる頃という意味です。空は高くなり、秋雲がたなびくようになり、本格的な秋の到来です。また、実りの秋を前に台風が心配な時期でもあります。
 ・・・ 暮らし歳時記 ・・・

(前号より
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◎「地方自治体のキャッシュレス決済、その1『行政キャッシュレス決済』」
(参照 行政におけるキャッシュレス決済入門 デジタル・ガバメント技術検討会議 2019/09/30)
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/cashless_introduction.pdf

 行政サービス(使用料、手数料等)や税に関する少額決済へのキャッシュレスサービスの導入を検討するために、行政職員向けに基本情報を整理した参考資料。現金や印紙ではなく、決済データを交換することで、正確かつ迅速な決済を実現するための基本情報や事例を整理したもの。
1.背景
 行政機関でもペイジーによるインターネット支払いや、クレジットカードでの支払いが可能なサービスを行う等、支払い方法の多様化を進めており、キャッシュレス化に取り組んでいます。また、2019年(令和元年)05月に成立、公布された「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」(デジタル手続法。令和元年法律第16号)で印紙以外の支払い方法を認める等、法的な環境整備が進んでいることや、指定金融機関の収納手数料(口座振替手数料)や振込手数料の有償化等もあり、今後、キャッシュレスサービスの利活用が増えていくと考えられます。更に、同年10月の消費税率の引き上げに伴う還元措置{キャッシュレス・消費者還元事業 https://cashless.go.jp}に合わせ、民間におけるキャッシュレス化の動きが活発になっており、社会全体でキャッシュレス化が進む中で、行政機関での支払いも同様にキャッシュレス化に対応していく必要があります。
2.目指すべき姿
 様々な行政サービスに対し、時と場所を選ばずに簡単に決済できる仕組みが求められているといえます。また、かかる仕組みの整備により、利用者の利便性の向上を実現するだけではなく、行政内部の効率化を同時に実現できるメリットも期待されます。
〇概要
1.概況
・現金以外の決済手段の利用状況
・行政機関の少額決済
 現金書留、収入印紙・収入証紙、郵便為替、切手、振込・引落、コンビニ決済、ペイジー、公金決済収納サービス、クレジットカード等が使われてきました。国の機関でも電子マネーによる決済が始まっており、博物館・美術館等の施設利用料や国立国会図書館でのコピー料等が電子マネーで払えるようになってきています。
また、市区町村のコンビニエンスストア等における証明書等の自動交付(コンビニ交付)では、一部のコンビニエンスストアで電子マネーによる支払も可能になっています。
・電子マネー、キャッシュレス決裁、クレジット(以下「電子マネー等」という。)で支払いが行われている税やサービスのうち主なもの
[税・社会保障系]
[手数料系]
[教育系]
[施設利用系]
[上下水道系]
[その他]
2.支払方法のメリット・デメリット
・オンラインでの決済方法
・表 2-1 決済方法の整理(1)
     現金         現金書留       収入印紙・収入証紙
概要   紙幣、硬貨の支払い  紙幣、硬貨の郵送   印紙を購入し貼付け
事務効率 ×現金管理が大変   ×悪い        ×著しく悪い
コスト  従来の仕組みで対応可 従来の仕組みで対応可 人的コストがかかる
注1)窓口等まで行けることが必要
・表 2-2 決済方法の整理(2)
     郵便為替       切手         振込・引落
概要   為替を使用      切手での支払い    銀行等での処理
事務効率 ×発行も換金も大変  ×計算や換金が大変  ○自動処理可
コスト  人的コスト      人的コスト      手数料
・表 2-3 決済方法の整理(3)
     ペイジー       コンビニ支払い    公金決済収納サービス
概要   インターネット    レジでの支払い    クレジットカード支払い
     バンキング
事務効率 ○          ○          ○
コスト  手数料        手数料        手数料
・表 2-4 決済方法の整理(4)
     クレジットカード   デビットカード    電子マネー
概要   カード会社が立替   銀行口座から直接支払う電子マネーで支払う
事務効率 ○          ○          ○
コスト  初期コスト運用コスト 初期コスト運用コスト 手数料
                           カード式の場合は、端末
                           導入等の初期コスト
3.キャッシュレス導入に対する不安の声への対応
「よくわからない」
「前例がない」
「安全面で不安がある」
「債権移行のタイミング・責任分界点がわからない」
4.電子マネーや収納代行サービスの活用についての考え方
 決済を必要とするサービスを作るには、安全性を担保するために多大な投資と運用コストがかかります。
 決済手数料を払う仕組みがない等の課題を指摘されることがありますが、決済システムを作る内部構築コストとして行政サービスそのものの対価に含め処理するのか、日常的運用の経費(手数料)と考えるかの差でしかありません。
また、決済処理を外部サービス化することで、内部の事務処理の軽減ができるとともに、集金時の紛失や合計金額の不一致といった事故が減るというメリットもあります。
〇場面別導入イメージ
1.印紙の場合
2.税や料金等の請求書による支払いの場合
3.証明、施設利用等の小口現金の場合
 証明書発行手数料や入場料等では、無記名による決済が行われています。このような決済には、民間の無記名の電子マネー決済と同じ仕組みが導入可能です。
 利用者は小銭を用意する必要がなくなり、証明発行者や施設管理者は、手数料の管理、つり銭の管理などの事務作業が軽減されます。さらに、観光施設においては、入場券を時間帯別に発行したりすることも可能です。
海外では、時間帯チケットの導入で混雑の緩和に取り組んだり、事前入場見込みによるスタッフ配置の変更を行ったりしているところもあります。
単に電子マネーを導入するだけではなく、チケット発行サービスに付帯したキャッシュレスサービスを使用する方法もあります。
4. 給食費等の場合
 給食費等においては、支払い側が現金を用意し、中間収集者(教員、学校事務職員等)が集計する仕組みで小口の決済を行っていました。
この方式では、収集時や集計時の金銭紛失といった事故が起こることもあります。
電子マネーを導入することにより、簡易に決済を行うことや履歴管理が可能で、支払者や支払額の管理等も容易になります。
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(以上)

〇キャッシュレス決済事例
1.神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a004/b001/006.html

 2019年(平成31年)01月10日から、「LINE Pay」の「請求書支払い」を利用して県税が納付できます。
「LINE Pay」による納付手続は、スマートフォンアプリ「LINE」を用いて、納付書のバーコードを読み取ることで行います。

・「LINE Pay」で納付できる県税
自動車税、個人事業税及び不動産取得税です。
納付額が30万円以下の納付書のみ利用可能です。納税者側に手数料はかかりません。

2.日立市
https://www.city.hitachi.lg.jp/shisei/003/p077889.html

 2019年(令和元年)07月01日から、市民課、各支所などの窓口で、住民票の写しや課税証明書等の交付手数料を、電子マネーで支払うことができます。
また、かみね動物園や日立シビックセンターなどの施設でも、入園料などを電子マネーで支払うことができます。
・電子マネーを利用できる課所など
課所など            対象
市民課、各支所         住民票の写しなどの交付手数料
市民税課            課税証明書、納税証明書などの交付手数料
かみね動物園         入園料
日立シビックセンター      科学館・天球劇場入館料、チケットカウンター、売店
奥日立きららの里        入場料、施設使用料(ケビンなど)
鵜来来の湯十王         施設使用料、売店、食堂
久慈サンピア日立スポーツセンター施設使用料(体育館、テニスコートなど)
たかはら自然体験交流施設    施設使用料(宿泊、体育館など)
日立駅情報交流プラザ      土産物、物産の購入代金

3.小樽市 【中小企業向けの講座によるキャッシュレス促進】(北海道小樽市)
https://www.city.otaru.lg.jp/jigyo/shouhizei/cashless_shohishakangen/index.html

 北海道小樽市では、消費喚起の一環として中小事業者向けのキャッシュレス講座を行い、キャッシュレス決済を促進しています。同市では、キャッシュレス・消費者還元事業になじみのない中小企業に対して、同事業への加盟店登録を促すため、以下のメリットを報じています。
・消費者はポイント還元を受けられる
・決済手数料が3.25%以下
・決済端末導入の負担が不要

4.福岡市 【公共施設でのキャッシュレス決済導入に向けての実証実験】(福岡県福岡市)
https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/mirai/fullsupport_3.html

福岡県福岡市では、「LINE」のアプリ上で展開する“スマホのおサイフサービス”「LINE Pay」を公共施設に導入するための実証実験を行いました。この背景には、同市が国内におけるクルーズ船の寄港回数がもっとも多い博多港を有する点が挙げられます。同港においてキャッシュレス決済を導入することで、スマートフォンさえあれば入場チケットを購入できるようになり、利用者の利便性の向上につながる他、施設側の決済関連業務の効率化を図る狙いがあります。平成30年06月29日から平成31年03月31日にかけて実証実験が行われた主な公共施設は、以下のとおりです。
①博物館
②動植物園
③アジア美術館
④駐輪場
⑤福岡タワー
⑥博多町家ふるさと館
⑦はかた伝統工芸館
 以上の施設では、指定期間中に入場料等をLINE Payの「コード支払い」で支払うことで、LINE Payへキャッシュバックやプレゼントを受け取れるイベントをあわせて実施しました。
 その結果、実証実験後の公共施設従業員アンケート結果によると、「継続したい」と答えた人の割合が83%に達しています。同市が行った実証実験によって得られた成果は、以下のとおりです。
①利便性向上
②利用者の増加
③消費購買行動の活性化
④業務効率化
⑤インバウンド需要の拡大
⑥都市の魅力や生活の質の向上
キャッシュレス決済の導入によって、インバウンド客への支払い対応がスムーズになり、施設側および顧客の双方にとって業務効率化と利便性向上のメリットが得られる結果となりました。また、キャンペーン実施による利用者の増加や、キャッシュレスおよびイベントによるリピーター効果も得られました。その他にも、これまで利用していなかった層の開拓効果や、近隣の狭域エリアにおける回遊性を確認でき、店舗や商店街における消費購買活動の活性化にもつながっています。

4.横浜市 (神奈川県横浜市)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/suidou/2018/0319linepay.files/0002_20190318.pdf

水道料金などの公金にキャッシュレスを導入し、電子マネーを利用して納付できるサービスを開始しました。これを受けて同市では、平成31年03月に水道料金等の支払い方法の1つとして「LINE Pay(請求書支払い)」を選択することが可能となりました。
同市の「LINE Pay」による実際の支払いで必要なものは以下のとおりです。
①自治体から届く納入通知書
②LINE Payの利用登録を行ったスマートフォン
③LINE Payのチャージ残高(支払い金額分)

「LINE Pay(請求書支払い)」で決済を行う流れは以下のとおりです。
①お財布マークの「ウォレット」タブ内「請求書支払い」をタップする
②立ち上がったコードリーダーで手元にある請求書のバーコードを読み込む
③内容を確認し、支払いを完了する

 また、その他の取り組みとして、キャッシュレス決済導入支援に向けた以下の取り組みを行っています。
1.小規模事業者設備投資助成金
同市は、小規模事業者設備投資助成金に、キャッシュレス決済に対応した端末の導入も対象とすることを定めました。この施策によって、中小企業基本法第2条第1項が定める小規模事業者(常時使用する従業員の数が20人(商業またはサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、05人)以下の事業者、フランチャイズチェーンを含む)であること、などのすべての要件を満たしている事業者に対して、業務改善や生産性向上のために導入する新たな設備等の費用の 1/2(最大10万円)が助成されます。

2.商店街インバウンド対策支援事業
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/kigyoshien/syogyo/shotengai/inbound/inbound.html
 商店街インバウンド対策支援事業では、訪日外国人の消費需要を取り込むために実施する事業のうち、決済の利便性向上のためにキャッシュレス化に取り組む市内商店街団体、各区商店街連合会の経費の一部を補助しています。
対象となる費用は、以下のとおりです。
①キャッシュレス決済に関する勉強会の開催
②キャッシュレス決済に関する広報媒体の作成
③国際的に対応可能なクレジットカードや電子マネーの決済端末導入
 同市では、これらの費用の 2/3(最大50万円)を助成し、決済の利便性向上のため、キャッシュレス化への取り組みを推進しています。その他にも、公共施設にキャッシュレス決済を導入し、電子マネーによる支払いを実現しました。

3.公共施設におけるキャッシュレス決済の導入
同市の施策によって、キャッシュレス決済が導入された主な施設は以下のとおりです。
①動物園
②スポーツセンター
③横浜美術館
 これらの施設では、入園料や自動販売機、レストラン、売店等の一部で電子マネーを利用した決済が行えます。一部では、すべてをキャッシュレス決済で支払える施設もあります。
 同市における今後の課題として、区役所および行政サービスコーナーで取得可能な戸籍・税の証明発行手数料の支払いについても対応を検討しています。
同支払いについては、令和02年01月29日から、現金に加えて電子マネーの使用も可能となる見込みです。

〇解説
1.ペイジー
 ペイジーとは、税金や公共料金、各種料金などの支払いを、金融機関の窓口やコンビニのレジに並ぶことなく、パソコンやスマートフォン・携帯電話、ATMから支払うことができるサービスです。
https://www.pay-easy.jp/index.html

2.公金決済収納サービス

(「行政におけるキャッスレス決済入門」より)

3.クレジットカード

(「行政におけるキャッスレス決済入門」より)

4.電子マネー
・交通系電子マネー各社の発行枚数
第1位:Suica(スイカ)JR東日本 7,616万枚
第2位:PASMO(パスモ)関東の私鉄 3,844万枚
第3位:ICOCA(イコカ)JR西日本 2,148万枚
第4位:manaca(マナカ)名鉄など 680万枚
第5位:nimoca(ニモカ)西鉄  399万枚
第6位:PiTaPa(ピタパ)関西私鉄 332万枚
第7位:TOICA(トイカ)JR東海  291万枚
第8位:SUGOCA(スゴカ)JR九州 289万枚
第9位:KITACA(キタカ)JR北海道 160万枚
第10位:はやかけん(福岡市交通局) 133万枚

〇北本市「総合収納システム」
 11年も前からキャッシュレス決済(収納)を実現!
(北本市セミナー資料より)

総合収納業務システム
・納付済通知書のデータ化(OCR処理)をアウトソース
・MPN・CVS・クレジット等の全収納データを統合一本化
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2020年09月10日

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