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第240回 新卒就職内定率を考える――発想転換のチャンス到来

2011/01/05

2011年度大学卒業者の昨年10月1日時点での就職内定率は57.6%と60%を割っている。就職氷河期と言われた2004年、05年でもこの時点では60%を超えていたので、非常に厳しい就職戦線である。10月1日時点では過去、08年69.2%、09年69.9%と回復してきたので、リーマンショック後の不況の中で就職時期を迎えた学生諸君には気の毒と言わざるを得ない。

しかし、「新卒採用」重視のこの習慣も根本的に考え直さなければならないだろう。日本の大学教育の大半は、実務に役立つ職業教育ではなく、一般的知識を獲得させる「教養」教育である。企業は大卒者を「一般的能力」をもつ予備軍として採用し、その後、「企業色」に染めてじっくり社会に通用する能力を育成する。文科系だけでなく、技術系、理科系にしても、多くの学科では、卒業者は「即戦力」には程遠い。米国などで大学が即戦力の知識を習得する場所で、インターンなどの現場体験を経て採用されてゆくのとはかなり様子が違うが、その欧米でも大卒の就職難は深刻だというから、どちらの制度が良いか、優劣を論じるのは難しい。

日本の場合には、その結果、新卒で企業に採用されず、契約社員、人数合わせの派遣社員、臨時のアルバイトなどで企業に働くことになった若者には組織的には訓練が施されないことになる。卒業後、3年、4年と正規の企業社員として働かなかった若者は、習熟度が低いとして企業の側からは敬遠され、正規の就業機会がいっそう乏しくなる、という悪循環に陥る。

新卒正規社員の採用に恵まれなかった若者に実学の訓練を施す機会があれば良いのだが、いくつか行われた職業訓練校などの政府の試みも、必ずしも評価されていないようだ。このままでは「新卒者採用」に重心を置く企業の方針が大きく変わる事は期待薄である。企業が募集する中途採用者も、どこかの企業での一定期間の就労、専門知識の獲得のありやなしやが採否の基準になるので、新卒で企業に入り込まなかった者の評価は低く、就職機会はますます少なくなる。

こうなると、若者側で就職観を変えるようにして行かなければなるまい。一般的教養を身につけて、後は就職した企業の研修方針に委ねる、という消極的態度は捨てて、学生時代から実務ノウハウ、実務知識を身につける学習や生活を心がけることである。一時代前には「学生時代は社会に出るまでの自由な猶予期間」という発想で、知識習得より学生生活を楽しむことが大切という考えが流布した。こうした発想とは決別である。

大学、文部科学省の姿勢が変わってくれなければ、実務知識や実践技術を身につけられる専門学校や社会人向けのスクールに通って、自らを磨く事である。ただの「新卒者」ではなく、大学卒業時点で、経験ある中途採用者並みの「別枠新卒者」として採用されるぐらいの気構えである。企業の側でも、そのぐらいの豪の者がどしどし入社してきてくれない事には、グローバルな競争の中で企業自体が生き残るのは難しいのではないか。新卒内定率が下がる分、豪の者の既卒、別枠新卒者の枠を広げて、企業自体も生まれ変わらなければならないのではないか。

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