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第241回 「熟議カケアイ」は政策形成の新方式として地方へと広がるか

2011/01/17

久しぶりに鈴木寛文部科学副大臣の講演を聞く機会があった。普段、なかなか教育分野の変化について知る機会がなかったので、新鮮な衝撃を受けた。特に「熟議カケアイ」と名付けた新しい政策創造方式については、日本の「民主主義」もいよいよインターネットを通じて本物に近づくか、と期待もさせられた。

「熟議カケアイ」http://jukugi.mext.go.jp/ は、中央教育審議会での専門家による意見の集約と並行して、当事者によって濃密な意見交換を行い、そこから抽出される問題点、意見を基にして政務三役が政策決定を行うという仕組みである。鈴木副大臣は「政策創造エンジン」と呼んでいる。

熟議に参加するメンバーは実に多い。昨年4月に文部科学省の公式サイトに開設したが、教員80万人、管理職教員7万人、教育委員7000人、教育長1800人、保護者数百万人、学校支援ボランティア46万人、文科省職員、文科省副大臣、政務官が想定されるメンバーである。もちろん、これらのメンバーが直接に一堂に会することはあり得ない。インターネットがこの議論のプラットフォームになる。副大臣、政務官らの文科省政務三役はここから現場の様々な悩み、課題、生きた情報を知って、具体的な政策立案に役立てたという。財務省との予算の折衝でも、生きた現場の声を基礎データとして豊富に提示し、納得してもらうことができた、という。

鈴木大臣によると、23年度予算案は文科省予算が初めて国土交通省予算額を上回ったそうである。この大きな変革をもたらしたのが、「熟議」によって煮詰められた議論、その根拠となる声やデータによる予算提案だったというのである。確かに、これは政策形成過程の大きな変化である。鈴木副大臣は、「こうした多くの関係者の意見や知恵を結集してより妥当な政策を作り上げて行く動きは、中央の行政だけでなく、地方の政策立案過程にも広がってゆくはずだ」と断言した。

2年前の米国では大統領選でオバマ大統領がインターネットを利用した募金活動やSNSによる支援者の輪の拡大で勝利を手にした。今月に入って、北アフリカ、チュニジアではSNSによる情報交換によって大統領への反政府デモが広がって、ついに政権崩壊を引き起こした。インターネットは着実に政治の分野の構造変化を促している。ITを基礎にした行政運営は、日本は国際的に大きく遅れたと言われるが、「熟議」はインターネットを利用した新しい行政の運営方式として日本を最先端の国に導いてくれるかもしれない。どこまで「熟議」が広がるか。期待して見届けて行きたい。

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