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第246回 残された教訓の数々を確認しよう

2011/04/11

未曾有の大震災の犠牲になられた多数の方のご冥福をお祈りし、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。一刻も早い復興をいろいろな形でご支援して参ります。

今回の震災は情報通信ネットワークの分野でも様々な教訓を残した。その共通点は災害時に想定した状況は甘い想定だったということだ。情報通信ネットワークが社会インフラとしてあらゆる活動の根幹になった以上、災害時の想定を根本から見直さなければならないと強く反省させられている。

情報通信資産の面からみると、まず、データセンターの災害時対策である。地震の衝撃や揺れに対する措置としては免震構造、耐震構造で防備する、停電にはまずUPSで突然のシステム停止を回避して、自家発電装置でその後をつなぎ、電力の回復を待つ。自家発電用の燃料は1日から3日分は確保し、停電が長引けば燃料を補給してさらに自家発電を続ける、というシナリオだった。確かに、備えの通りに耐震、免震で施設の致命的破壊は防いだが、停電は長期にわたって、自家発電は3日程度では間に合わない事態は十分に想定に入れなければならない。3日を超える場合には燃料を調達すればよいと言っても、大災害時には交通網の寸断、運搬用車両の燃料不足などで輸送能力が確保できず、「3日で調達」など不可能である。

このことから得られた教訓は、データセンターをダウンしないように設計するのではなく、ダウンしても良いようにバックアップする仕組みを作ることである。三陸の都市のいくつかは津波が乗り越えないように高い防波堤を作ったが、不幸にしてそれを乗り越えられてしまった。高い防波堤を作って津波から守ることでは万全ではなかった。乗り越えられることも想定して、次の一手、二手を準備しなければならない。原発も2重3重の安全対策で十分と思っていたが、それを突破され、「出たとこ勝負」の綱渡り対応策に陥った。

人知を超える災害を防ぐことは難しい。今回得られた教訓は、一つ一つのデータセンターが停止しても、遠隔地域にある他の多数のセンターでこれをカバーするクラウド形式のシステム設計にしなければならない。巨大なデータセンターに機能を集めて集中管理をするのが正解ではなく、中クラスのセンターを各地に分散配置し、集合として一つのコンピューターに見えるようにするのがクラウドの本来の姿である。インターネットが危険分散の思想に出発したように、その発展形であるクラウドは危険分散に立ち帰るべきである。

データは、普段から遠い拠点に複数、ミラーリングして保管する。クラウド技術を使えば難しくない。重複投資でコスト負担になるのではないか、という懸念は杞憂である。現在、同じファイルが同じデータセンターの中の複数のサーバーに重複して保管されているという4重、5重の無駄をしている状況である。これを検知して統合し、他のデータセンターのサーバーに複製保管すれば、整理、統合の節減効果の方が大きく、むしろ現状よりはコスト負担を軽減できるのではないか。

また、日本中のどこかで災害が起こることを防げないのであれば、災害が起きた時に日本全体でカバーしあう全国レベルの災害対応情報ネットワークを築くべきではないか。現在は自治体でも遠隔地の市町村同士で災害時の援助協定を結んでいるケースが多いが、個別の協定に加えて、クラウドで管理し、どこで情報システムトラブルが起きても他のシステムで直ちにカバーする仕組みを構築すべきである。

日本は天災から逃れられないことが今回ほど身に染みたことはない。まだ、いつ東海地震がくるか、房総沖地震が来るか、あるいは南海地震がくるか。地震学者は警告を発している。巨大システムに集中するのではなく、超分散の柔らかなシステムに考えを転換すべきであろう。

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