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第247回 情報保管のネットワーク化に納得

2011/04/25

住基ネットは今回の大災害で役に立った。不幸にして大津波で多くの住民が行方不明になった三陸の市町村では、庁舎が破壊され、住民基本台帳も流される被害に遭った。当初、台帳がなくなったので、居住の状況が分らず、だれが行方不明になっているのかさえ、掌握できないのではないか、と懸念する声があった。結果として、その心配は杞憂に終わったようだ。住基ネットには住民台帳の電子的コピーが保管されているので、総務省がすぐに通知を出し、岩手、宮城両県では条例を変えて、住基ネットに保管されていたコピーのファイルを使用する手配をしたということである。

住基はこうした事態を想定して電子ファイルのコピーをバックアップとして保管してきた。もちろん、そのコピーは、個人情報の流出を危惧する人々が指摘するような危険な状態で保管されているわけではない。災害によって紛失した情報を回復したのは電子化してバックアップしていたことである。

紙の文書はコピーを保管するのは難しい。災害時に同時被災しない遠隔地に保管しなければ意味がないが、遠隔地では頻繁に更新されるような記録ではその業務もコストも膨大になる。これに対して電子化すれば、更新作業が簡単になるだけでなく、コピーも、遠隔地に送って保管するのも自動的に安いコストで可能である。もちろん、コピーや遠隔地に送信することが簡単なことが情報漏えいの危険を大きくするので注意が必要なのだが、その情報漏えい防止の技術も着実に高度化している。

ただし、住基ネットはセキリュリティの面から安全な行政用の専用回線を利用しているが、その回線が細いのが問題だ。今回は情報が大量なので、住民情報ファイルをCD-ROMに落として配送するという手段を講じたそうだが、電子行政の普及の遅れの一断面を見た思いがする。

情報の電子化、ネットワーク化は、日常の業務効率を飛躍的に向上させ、住民サービスを質的に高めるだけではない、災害時、非常時のための情報保管のバックアップが容易になることで、災害に強い行政、自治体の災害対応力を強める仕組みでもあるのだ。尊い多くの犠牲や被災者の皆さんのご苦労の上で胸の痛みは大きいが、今回はネットワーク化のもう一つの機能も実感させられた。

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