HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第251回 「地中熱」という新エネルギー
2011/06/20
「窮すれば通ず」という言葉があるが、まだ新エネルギーは開発の余地がある。さすがに、このところの「地中熱」の報道には感心させられた。テレビのいろいろな番組で取り上げられたので広く知られていると思うが、家庭用としては冷房も暖房もいらないという使用者の声である。老人ホームのような多少、大きめの施設でも同様の効果があるようだ。
地下5メートルほどになると、日本の多くの地域で、温度は夏冬通じて16度から17度程度に安定しているそうだ。その地中の温度を、パイプを通して空気を移動させて家の中に取り出し、夏は冷房に、冬は暖房に利用する。地中の空気を地上に吸い上げるのに動力を使うが、エアコンで利用する電力に比べればはるかに少ない。見方を変えて「新しいエネルギー源」の登場だと言える。
家庭用、老人ホームなどの施設、保育園などのコンパクトな建築物に有効なのは証明済みだ。夏冬の電力使用のかなりの部分がエアコンの作動であるので、それだけでも大幅な電力の節約になる。後はどんなところに利用できるか。施設が外部に開放されているような大型の施設では難しいだろう。体育館や屋内競技場では難しい。高層ビル、高層マンションでも難しそうだ。学校の教室は、うまくすれば可能かもしれない。
さらに欲を出して、サーバーなどの情報機器の冷却にはどうだろうか。5メートルと言わずに地下10メートル、15メートルとパイプを伸ばし、横に寝かせるパイプも長くする。あるいは湾曲させてより効果を高めるということにすれば、かなり効果があるかもしれない。もちろん、それで冷却を完全にするというわけではなく、エアコンの補完とすれば、必要とするエアコンの電力はかなり削減できるかもしれない。
問題はコストで、家庭用は、建設する際に最初から装備すれば大したコストにならないが、すでに居住中の家で取りつけるとなると、200万円ほどの工事費になる。ただし、この技術はまだ歴史が浅い。利用するパイプ材料の工夫、掘削技術の工夫などで、大幅にコストダウンできる可能性がある。大型の発電所を1基、2基と新設するよりも総コストは安くなるかもしれない。かつ、クリーンなエネルギーなので炭酸ガス削減効果も大きい。空気を移動させる動力も外部の風力を工夫して使うことで電気使用を極小化できるだろう。
まだまだアイデアはたくさん出てくる。もちろん、最適化する処理にはコンピューター処理が必要だろうが、それは格安の小さなチップで大丈夫だ。追い込まれれば、あちこちから知恵袋が出現する。未来に対して悲観することはない。