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第252回 「データセンターは西へ」に対する疑問

2011/07/04

東日本大震災の衝撃に対する情報産業界の反応の一つがデータセンターの事業継続性に対する問題意識の深まりである。首都圏に74%も集中しているというデータセンターの異常な集中に、やっと、気が付いた。確かにそこまでは正しい認識なのだが、その対応策が関西地域周辺の西日本に新たにデータセンターを建設する計画を立て、また、西日本センターの増設を検討するというニュースが続くと、いささかうんざりである。

データセンターのバックアップの必要性を認識したのは、建築構造を頑丈にし、あるいは免震構造で衝撃を逃す、というような工夫でデータセンターそのものを守るだけでは不十分だということが分かったからだ。災害時の停電に備えて自家発電装置を備えている、と安心していたが、実際に震災が直撃すると、通常準備している3日程度の燃料では間に合わない可能性が出てきた。停電は3日では回復せず、交通手段の途絶で、燃料の補給もできない事態が容易に想定できるようになった。

疑問を感じるのは、機敏に反応したデータセンター各社の関西地域にバックアップセンターを置くという判断である。各社は、ユーザー企業が東日本においているデータセンターの安全な運用に不安を感じて、非常時の備えとして関西や西日本地域にバックアップセンターを準備する需要が増えた、としているが、本当にユーザー企業の考え方なのだろうか。データセンター事業者が誘導しているだけなのではないだろうか。

データセンターの首都圏集中を是正するのが必須の目標である。その解答としては、集中を排除して、全国各地にデータセンターを分散させる、というのが最も正しいものである。北海道や東北、北陸、東海、関西、中国・四国、九州、沖縄、と各地に中規模から大規模なデータセンターを準備して、高速ネットワークで網の目のように結んで、全体が一つのコンピューターのように作動する、これが究極の目標である。災害時に強いだけではなく、平常時には最も近いデータセンターは地域の情報処理センターとして機能し、同時に遠隔地のバックアップも担当して、非常時には遠隔地の機能を補完する。これで地域の業務は地域で処理する、という地域産業振興の基本条件を満たすことができるのである。その需要を首都圏に集中して処理したり、ましてや海外で処理するというように国内空洞化を招くようなビジネスモデルを作ってはならない、と思うが、いかがだろうか。

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