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第254回 「円高」は日本産業の危機か?

2011/08/01

為替の素人には理屈がよく分からない。

円−ドルの交換比率はかつてない円高を維持している。円はどこまで強くなるのか。専門家は、まだまだ円が強くなって、日本の製造業の国際力低下につながる、と警告を発している。その逆に、もう一方の見方で、震災復興という非常事態とはいえ、赤字国債をこれ以上発行すれば「円の信認を失う」、つまり「円安になる」という議論も根強い。まったく反対の見解である。

素人考えでは、円高を回避したいなら、赤字国債をどんどん発行して円安圧力を高めればよいのではないか、と思うのだが、どうもそんな単純なものではないらしい。

企業の方は機敏だ。円が強いうちに、と、このところ強い円を背景に外国企業を買収する動きが活発だ。NTTグループなど、遅れていたグローバル化のテンポを速めようと、海外戦略を加速化している。円高の原因をあれこれ議論するより、この状況をどう活用するか、その手を打つことの方が正解のようだ。

議論を混乱させるのは、「日本産業は円高で危機に陥る」という反射神経的な悲観論である。円高で、国内製造業が国際競争力を失う、ということのようだが、どうだろうか。よく考えてみると、為替によって競争力を失うような製造業は、実は、もう、とっくに海外企業に負けるか、あるいは海外に製造拠点を移転してしまったのではないか。

今次の東日本大震災に際して、分かったことがある。日本の製造拠点や流通経路が壊されて基幹部品が止まってしまったために、世界各地で製造工場が操業休止に追い込まれる問題が起こった。高度な部品の多くは、まだ、日本で製造されていたのである。今、日本に残っているのは、価格競争力ではなく、技術競争力で十分に優位にある企業ばかりではないのか、と思わせる。つまり、円高が進行しても大丈夫なところがたくさん残っている。強い日本の証ではないか。

どうも財政危機に追い込まれているはずの日本の通貨が強くなるのは、素人としてはうまく理解できないが、状況を観察してみると、さらに円高になっても製造業が追い込まれることはそれほど多くはなさそうだ。となれば、強くなる円でグローバル化を進めるなど、前向きの経営戦略に転ずる絶好の機会が来たということではないか。円よ、もっと強くなれ。グローバル化のチャンスだ。

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