HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第255回 次々に登場する冷房アイデア〜〜太陽熱利用も
2011/08/22
「窮すれば通ず」というが、次々とアイデアが登場するものだ。NHKのニュース番組で「オーストリアの太陽熱冷房」を見た。外気を取り込んで室内の温度を下げるのだが、その方法は乾燥材を使って外気から湿気を取り除いて乾燥させ、熱を奪うという仕組みだそうだ。熱を奪われた空気が室内に放出されて冷房になる。湿気を含んだ乾燥材は太陽熱で熱を飛ばして、再び乾燥材として循環利用され、この過程で太陽熱が使われる。オーストリアの企業のオフィス冷房費用は800万円ほど軽減されたというから、報道通りなら、効果があるのだろう。
これまで冷房と言えば、電力を大量消費するイメージだった。特にデータセンターでは大量に熱を発生するサーバーを抱え、電力大量消費産業として電力不足対策が緊急の課題になった。最近では原子力発電所の隣接地域では「対策費」として電力料金が長期間、半額で利用できるということに着目して、原発近辺にデータセンターを立地させる例が目立ってきた。企業のコスト削減策としては当然として、原発の安全性が不安視されてくると、この策が世間的なイメージとして正しいものかどうかは疑問になっているが・・・。
しかし、どうも、冷却には電気を使用するだけではなく、他の方法も十分に開発できる可能性があるようだ。この「太陽熱冷房」だけでなく、風力発電にしなくても、吹き抜ける風で直接冷却する「空冷」も併用できるし、地中にトンネルを掘って冷気を循環させる方法も最近では普及し始めた。冷たい深層海洋水を汲みあげて冷却用に使い、使用後はミネラル分豊富な食塩を製造する原料にする手もある。そこへまた、この太陽熱利用である。
しかし、乾燥材の水分を飛ばすのに熱が必要なら、データセンターは大量に熱を発生しているので、この熱を使う事も可能ではないか。つまり、データセンターの熱を、熱源として利用するのである。「熱源」と考えれば、海水から食塩を取りだす仕組みも、「サーバーの熱を冷ます」ではなく、データセンターの熱を「熱源」つまり、産業資源として見直すのである。「廃棄物」としての「厄介な熱」ではなく、熱を利用する産業にとっての「熱資源」として他産業との効果的な連携を考える。廃棄物ゼロの産業連携の仕組みとして「ゼロエミッション」が考える切り口の一つになっているが、熱エネルギーの産業連携としての「ゼロエミッション」の軸として、つまり、データセンターをコンビナートの中核に位置付けてはどうか。
データセンターは歴史が浅いために、次々と出てくる課題に「もぐらたたき」のように対処療法で応じてきているが、実にもったいない話である。産業全体の連関を意識しながら根本から考える時期に来たのではないか。発生する熱を大量の電力を使って力づくで冷やす、という乱暴な発想からは脱却すべき時が来ているのではないだろうか。