HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第256回 BCP拠点か東アジア進出基地か〜〜注目される沖縄の2つの見方
2011/09/05
久しぶりに沖縄の県庁を訪ねて、相変わらず、沖縄への企業進出が相次いでいる話を、胸を躍らせながら聞いた。IT関連だけに絞っても、今年に入って19社が進出を決めている。この約15年で200社が沖縄に進出したが、今年は8か月で20社近くである。途中、東日本大震災で計画が見直しになったので空白の期間があった。それでも途中経過で20社近くである。延期された計画が、年後半には復活してくるだろう。大震災を機会に、データセンターやコールセンター、BPOセンターの広域分散を検討し始めて、沖縄を有力候補として考慮し始めた企業が今年後半から来年にかけて結論を出してくるだろう。沖縄は当分、情報産業界の渦の一つである。
なぜ、沖縄に情報基地を構築しようとするのか。2つの流れがある。1つは東日本大震災で再び思い出された災害時バックアップ、つまりDR(ディザスター・リカバリー)、最近ではもっと広くBCP(事業継続計画)の観点からである。沖縄は内地から遠く、同時被災の可能性がほとんどない。沖縄自体もこれまで地震災害の記録はなく、天災の可能性はないとされているが、想定外のことがどこから起こるか分からない。しかし、仮に沖縄に天変地異が起こっても、内地は同時被災しない。機能を相互補完する場所としては北海道と沖縄が最適地域である。
実際、そうした問い合わせが大量にあるようだ。しかし、どれも、現在、沖縄のデータセンターが受け入れられる規模をはるかに超える大きな問い合わせなので、現状では要望に応えられない。もっと大きなインフラを整備して受け入れ能力を増大すべきだ、という意見も出始めている。沖縄は原子力発電所がないので、定期点検や地元の抵抗などの心配がなく、電力供給の不安はない。しかし、内地との回線が十分な速度がない、と不安の声が上がっている。この問題の解決は簡単だ。回線を増強すればよいだけだ。
ただ、沖縄の進出をDRやBCPの観点だけで検討するというのは、日本の今後を展望すると、きわめて貧しい視点である。もっと豊かな見方がある。日本の次の十年の成否は、急成長するアジア地域とどこまで一緒に事業を展開できるか、その質と規模である。前進基地として、東アジアの中心に最も近い沖縄をどのように活用できるか。
その視点から、グローバルビジネスを目指す中堅の証券会社、安藤証券は沖縄にデータセンターを配置し、世界的なクレジットの決済会社T-SYSはアジアの決済拠点として沖縄にデータセンターを設置した。さらに、震災以後、沖縄をアジアと日本をつなぐ情報通信拠点と位置付けて打診する巨大企業が増えてきている。
匿名で記述しているのも、あと少しで実名を挙げながら議論できる状況となるだろう。その時に、懐疑的な経営者たちを納得させることができるだろう。
着実に大きな変化が進行している。変化が大きすぎると、それを感じられない鈍感な人も目立ってくる。このメルマガの読者は、そのような人たちではない、と信じているが・・・・。