HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第261回 藤沢ビジネスコンテストのトレンド
2011/11/14
藤沢市、茅ケ崎市、寒川町などの湘南地域の新産業育成を目指す「湘南ビジネスコンテスト」は今年で12回を数える。筆者は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの教授だった時代の第2回から審査員として参加しているが、その当時と比べると大きなトレンドの変化がみられる。審査員は地元の会計士や弁理士の方、ベンチャー支援会社、それと慶應や湘南工科大学、専修大学の技術系、経営論などの教授陣で担当し、毎回、激論の末に授賞企業・製品を選出している。今年は11月11日の夕方、最終選考に残った企業・製品・サービスのプレゼンと審査、発表、表彰、レセプションと一気に行った。
最も大きな特色は最終審査に残った企業・製品・サービスに、IT関連がなかったことである。激論の末に同列の第2位が3社選ばれる結果となったが、そのうちの地産地消の農業−消費者サイクルのビジネスモデルを発表したサービスの中に、WEBシステムでこれを支えるというものがあったが、これはWEBシステムはただのサポートで、ビジネスモデルは農業の新しい仕組みの方である。
10年ほど前は応募してくるビジネスモデルの半分以上はIT関連で、ITそのもののサービスや製品、ビジネスモデルだった。そのために、当時の慶應大学大学院の学部長で情報技術の日本の代表的リーダーである斉藤信男教授が審査委員長を務め、筆者もIT分野の知識人として審査員に参加することになった。しかし、今年の審査は、筆者の専門領域では出る幕がなかった。さびしい限りである。若い人向けに設けている「学生賞」も例年はIT分野の応募が多かったが、今年は該当なしだった。
しかし、世の中を見れば最近ではグリーが急成長したように、決して、タネがないわけではない。また、サービスのアイデアはあちらこちらで相談を受けて、期待できるものもある。ただ、こうしたコンテストに応募するレベルまで具体化している製品やサービスではなく、その一歩手前のものが多い。そういう意味では、現在は「踊り場」なのかも知れない。リーマンショックがあって、一時期、ビジネス起業に慎重になった時期があったが、今はその影響の範囲かもしれない。その分だけ、弾けるときは激しく弾けるものと期待して、審査会を終えた。