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第262回 恐る恐るの中国人観光客向け「数次ビザ」の実験

2011/11/28

日本経済新聞が沖縄で現地印刷を始めて11月3周年となった。それを記念して24日、沖縄県西原町のホールでフォーラムが開催され、筆者もトークセッションとパネル討論の司会役として参加してきた。観光立県=沖縄の未来を探って「ITと観光の融合」がテーマで、中国観光客が日本観光を思い立って日本のWEBサイトにアクセスしても、検閲でページが開くのに数十秒かかるが、沖縄を拠点にして沖縄と香港を結ぶ高速回線「沖縄GIX」を利用すると数秒で開くように短縮できる、という手段などが紹介された。

もう一つ、大きな話題になったのは中国人観光客向けの「数次ビザ」。沖縄県を玄関口に中国からの観光客に3年間の「数次ビザ」を発給する試験的制度が7月にスタートした。日本を訪れる中国人観光客は、沖縄に入って1泊することを条件に3年間、何度でも日本に入国出来るビザである。中国人観光客には、かつては一定の収入以上を条件にしたビザ発給だったのが、最近、一般中国人へと条件が緩和された。しかし日本への観光を希望する中国人の要求が強く、数次ビザの発行が検討されているが、とりあえず実験的に沖縄を玄関口に数次ビザのテストを始めたというわけだ。

もちろん、観光ビザが不法入国・不法労働の手段となるのを防ぐために、ビザ発給に慎重なのである。しかし、急成長する中国経済は分厚い富裕層を誕生させている。この富裕層を観光客として取り込みたいというのが「観光ニッポン」の目標でもある。恐る恐るの中国観光客向けの「開国」である。

ここ数年の趨勢から見ると、観光ビザが日本への不法入国の隠れ蓑になるというのは、そろそろ幻となるのではないか。中国の経済成長のテンポがあと数年続けば、中国国内の給与水準は高騰して、危険を冒して日本に入り込んでまで不法就労するメリットは小さくなる。日本はお金を稼ぐ就労の場ではなく、国内で稼いだお金を使う観光地、ブランド品を購入するショッピングの場所になるだろう。中国でのIT技術者の人件費の高騰、日本のIT技術者を下請けに使おうという「逆オフショア」の動きまで見え始めたこのごろの状況を併せて考えると、「数次ビザ」は沖縄を玄関口とする限定措置である期間は短く、全国どこから日本に入っても数次ビザが得られる中国人観光客への「開国」の日も近そうだ。

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