HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第265回 柏原竜二選手の頑張り
2012/01/10
正月2日の柏原竜二選手をテレビで見ながら涙が止まらなかった。事前の期待通りに、というより、期待を上回るスピードで4年連続の山登りの区間賞。3年生の昨年は新記録が生まれなかったものの、1年生の時に「山登りの神様」と言われた順天堂大学、今井正人選手の記録を超えて47秒短縮する区間新記録、2、4年生とその自身の記録をさらに10秒、29秒それぞれ短縮して記録を塗り替えた。4年目の今年はタスキをトップで受けたので顔をゆがめて次々に先行ランナーを追い抜くシーンは見られなかったものの、後続ランナーをどんどん引き離して東洋大学の往路優勝はもちろん、総合優勝を決定づけた。
その粘り強さの基は何か? 何度も報道されているように、柏原選手は福島県いわき市出身。頑張り屋の東北人の気性がそのまま山登りの頑張りにつながっているのだろう。驚異的なごぼう抜きを見せて順天堂大学の優勝を導いた「山登りの神様」の今井正人選手も福島県出身で同郷である。共に、郷里は東日本大震災で大きな被害を受けた。
両選手の粘り強さが東北人の頑張りの本質であるとすれば、被災地、福島県のこれまでの頑張りも得心が行く。福島県は大地震、大津波の上に原発事故と3重苦を抱えた。原発の被害は未だに先が見通せないまま、多くの住民に避難生活を余儀なくさせている。10か月近くを経過したこの正月も、福島の被災地は復興の道筋を考える段階にまで、なお遠い状況である。尋常な苦労ではない。この状態で、さらに頑張り続けられる気質は、柏原選手の粘り強さと通じるものを感じた。
欧米を中心に経済が破たんしつつある。アジアは豪雨や異常気象である。中東や中国では治安問題を抱え、中東では収束の気配が見られない。世界中が騒乱の中での年明けのような気がする。しかし、東北人の頑張りを間近に学ぶことができる日本社会はその中で真っ先に混乱から抜け出せるかもしれない。柏原選手を見ながら、そんな思いが込み上げてきた。