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第270回 データセンターの国際競争力

2012/03/19

データセンター促進協議会(村井純会長)のクラウド国際戦略委員会では、現在「データセンター連携」の促進を狙いにガイドブックの作成作業を進めている。近い将来の日本の輸出商品の一つに「データセンターサービス」を加えられないか。その国際戦略を考えるのが「国際戦略委員会」のテーマである。筆者の前任者が委員長を務めた委員会で、すでに2年間の議論を済ませている。結論は、スイスの銀行が厳しい守秘原則のもとに運用されて「信頼・安全」という価値を維持しているように、データの取り扱いについて信頼・安全の仕組みを作れば、日本のデータセンター産業の発展の起動力になるのではないか、ということである。

しかし、昨年3月11日の大震災と原発事故は、この「安全性」について、根本的な問題を浮かび上がらせた。日本のデータセンターに安全を確信できる仕組みを作らなければ、国際的なブランドを獲得することは不可能である。結論は、データセンターのBCP(事業継続計画)の確立である。大手のベンダーでは、効率性優先で、大規模なデータセンターを一か所に集める「クラウド拠点」という考え方で「集中」に走ってきた。

しかし、効率性と安全性は、今のところ逆のベクトルである。大震災を経験し、電力不足を経験した後では、効率を追求した「集中」は安全性にとってはリスクを増大させる欠陥だらけの方策である。今後、国際的な信認を得るためには、集中の逆の「分散」の仕組みを至急、構築する必要がある。いま、日本のデータセンターに求められる最大の要求は安全性である。大手ベンダーは企業内部で分散できるかもしれないが、中堅ベンダーには、データセンターの分散、複数拠点化などは、コスト的に不可能である。

そこで最近、地方のデータセンター業界で活発に検討が始まっているのは、データセンター間の連携である。多数の地方企業が連携して、被災して運用が難しくなったデータセンターの機能を他のデータセンターがバックアップする。企業連携によって、この仕組みを作り、大事なことは、普段からこれを運用しておくことである。

もちろん、仮想化によって、効率を高めることができる。従来、1企業では稼働率の低くなったデータセンターの空き時間を、互いに利用しあって稼働率を飛躍的に高めるのである。かえって、1企業で無駄の多い運用をしていたのに比べれば、コストが下がる可能性もある。顧客へのサービスメニューの相互利用、共同化などを行えば、さらに効果が大きくなる。これによって、コストを下げ、安全、信頼のクラウドサービスを提供できることにならないか。

大震災以降、日本の情報産業は新しい段階に入った。これまで「輸出は難しい」とあきらめていた情報サービス商品の輸出も、改めてチャレンジする価値がある。

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