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第274回 プライバシー保護法案の動き

2012/05/21

プライバシー保護をめぐって欧米で気になる動きがある。FaceBookやTwitterなどのソーシャルメディアなどが個人情報を半分ほど明かしながらインターネットで閲覧可能な形でユーザーが記録を留めているが、一部ではこうしたことが他人から悪用される危険がないか、あるいは、悪用されてユーザーが思いがけないトラブルに巻き込まれる恐れはないか、時間がたつにつれてさまざまな危惧が広がっている。

特に、グーグルのストリートビューや各種のサービスに於いてばらばらだったユーザーの個人データが統合されたことなどで、プライバシーの取り扱いに対する不安が広がった。もう一度、個人情報、個人が記録した情報は、だれに保管したり、消去したりする権利があるのか、つまり、「個人情報はだれのものか」が真剣に問われることになっているのである。もちろん、公共の利益に反しない限り、個人情報は当の個人のものである。それが本人の許諾なく転送されたり、公表されたり、個人が特定されることが分かるような形式で長期間保管されることが許されるはずがない。それが立脚点である。

EUでは「忘れられる権利」が主張されている。FaceBookやTwitter、Webサイトなどに記録された個人情報を後から削除することができる権利である。EUではすでにデータ保護法があるが、1995年成立の法律で、今日のSNSや検索エンジンの出現を想定していないものだった。データ保護法の根本的な改正によって新しい状況に対応しようという狙いである。

米国ではオバマ政権が2月に「消費者プライバシー権利章典」の案を公表して様々な議論が交わされている。同草案では、連邦取引委員会(FTC)の権限を強化してSNSやその他のサービスでプライバシーに触れているものについて自分の情報を追跡させないように要求するものである。すでにサービス事業者は個人の情報を追跡するサービスを多数、提供している。一面では、このサービスは便利で、歓迎するユーザーも多い。権利章典では、基本的にすでにあるサービスで「自分は当該サービスで追跡されることを望まない」と、サービスを停止する機会を設けることを義務付ける方法になりそうだ。

「インターネットは自由な空間」ということで、新しい発想を実サービスとして次々に実現して発展してきたが、その弊害も目立ってきた。一度、立ち止まって、何が、だれにとって、どのように有用なサービスなのか、考え直す時期に来た。自由な発想を阻害しないことにも留意しながら、これからのネットワーク社会を構想してゆくことが必要だろう。

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