HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第277回 「サイバー攻撃」から情報社会をどう守る
2012/07/02
サイバー攻撃は「テロ」の段階を越えたのではないか。今年の初め、自民党のネットメディア局である平井卓也衆議院議員が今年の最重要課題の一つとして「サイバーテロ対策」を挙げたが、その際に平井議員は「テロではなくサイバーウオーと言える段階に来た」と警告した。最近の状況を見ると、平井議員のこの警告が当たっているようにも思える。
もちろん、政府機関を攻撃するサイバーウオーやサイバーテロは一般国民には実感が伴わないが、同時並行的に進行している「サイバー犯罪」も考えると、われわれはサイバー犯罪のど真ん中に投げ出されているような恐怖心さえ覚える。
情報化推進国民会議(児玉幸治委員長)では、緊急に特別委員会を設置し、「サイバー攻撃の脅威に向けた、機動的な官民連携を」という緊急提言に取り組むことになったが、確かに焦眉の急である。
サイバー攻撃には、特定の個人や組織をターゲットにして知人や公的機関を装ってウイルスをメールで送ってシステムの侵入経路を作って情報を抜き取る「標的型攻撃」、政府、行政機関、金融、電力などの重要社会基盤を関連のネットワークシステムを破壊し社会生活を混乱させようという「サイバーテロ」、企業の知的財産や企業機密、あるいは国の治安や外交機密の情報などを盗み出す「サイバーインテリジェンス(スパイ)」、大量メールの集中的送信などによってサーバーを機能不全にするサービス妨害やサイトの改ざんを行う「DDos攻撃」、その他「フィッシング、スパムメール、情報を盗み出して拡散する名誉棄損や個人情報不正取扱い」などの犯罪、と類型化されるが、どれも攻撃を仕掛けてくる目的や動機がばらばらで、防衛する側にとっては厄介である。
こうしたサイバー犯罪に対抗して、2000年に「不正アクセス禁止法」が制定された。しかし、新種の攻撃に対応するにはさらに強化が必要だとして、今年5月に不正アクセス禁止法が改正されたけれども、なお、現今のサイバーテロ、サイバー犯罪には十分とは言えない。何よりも、こうしたサイバー犯罪に対応する技術者、人材が圧倒的に少ない。
健全な情報社会の発展には、こうしたネットワーク社会の脆弱部分を直してゆく不断の努力が必要だが、いまは、緊急の様々な対応が必要だ。緊急事態に入ったことを、それぞれが自覚し、犯罪に巻き込まれない注意を怠ってはならない。