HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第279回 電力の「直流化」は新しい経済革命を起こすか
2012/07/30
現在の電力のネットワークを交流から直流に転換したらどうなるのか。最近、この問題を真剣に考える。残念ながら、あまり参考になる資料が見つけられずに苦戦しているが、直流が気になるのは、「発送電の分離」をはじめとした電力体系の再編成が急速に進んでゆくとともに、今後は再生エネルギーをはじめとした超小型・分散発電の普及、電気自動車や蓄電池(充電器)による需給調節システムなどが普及して、送電の仕組みを再構築する必要が出てくることを考えると、送電も現在の交流体系にこだわらず、ゼロベースで検討して良いのではないか、と感じるからだ。
日常生活で何気なく使っている家庭内の電気製品の多くは最終的に直流である。もちろん、電力会社から家庭まで届けられる電気は交流なので、これを変換器で直流に直して利用している。その多くの製品は装置の中に交流から直流への変換器を備えているが、備えていない場合には、変換器を準備して直流に直して使う。ノートパソコンや携帯電話などではおなじみだろう。
電力会社の発電機はタービンを回転させて電気を生成する際に交流で取り出してそのまま遠隔地の消費地に送り、次第に電圧を下げて事業所や家庭に配送される。しかし、家庭の屋根や事業所の屋根にソーラー発電装置を装備し、あるいは空き地に大規模なメガソーラー発電装置を建設する時代である。また話題の「スマートハウス」では家庭用蓄電池や電気自動車に貯められた電気が仕組みの中で重要な役割を果たす。これらは直流で電気を供給する体系である。
1秒間に50回または60回、電気の方向が逆転する交流のままでは蓄電ができず、電気は電力生産量と電気使用量を同等にする必要がある。しかし、蓄電ができる直流では、生産量が大きくなれば蓄電し、消費が増加すれば蓄電したところから放出すれば問題ない。現在の蓄電池は性能が良くないので、研究開発が必要だが、投資を集中すれば改良は急速に進むだろう。また、直流の場合には感電などの危険が大きいとされるが、その課題を解決すれば大きなビジネスになるので、安全なシステム、より安全な利用法のアイデアが次々に出現するだろう。
すでに通信の世界では、発信者と受信者が同一時間で利用する「電話」のアナログ体系から、情報を蓄積して時間のずれを当たり前のようにして伝送する「蓄積交換」を基礎にしたデジタルへの根本的な転換を経験した。アナログからデジタルへの転換がインターネット革命を引き起こしたが、その特質の一つが「蓄積交換」だった。いま、電力の交流から直流への転換を仮定してみると、ここでも「蓄積交換」が特質の一つとして出現する。もしかすると、電力体系の直流への変換は通信のデジタル革命のような「直流革命」を起こすのかもしれない。そんな予感もする。
電力は大きな「革命」の前夜であるとすれば、技術革新による経済の活性化をもう一度再現することを期待して良いのかもしれない。