HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第282回 電力とインターネットの融合

U+(ユープラス)

U+のTOPへ

寄論・暴論

コラムニストの一覧に戻る

第282回 電力とインターネットの融合

2012/09/18

2014年4月1日以降、日本の電力業界は従来の体制を一変して、送電事業と発電事業を分離する新しい体制に再編成されることになったが、その新体制には、ICT、とりわけインターネット関連の技術がカギを握ることになりそうだ。

すでに電力とインターネットの融合については「スマートグリッド」のコンセプトで着々と進行しようとしているが、最近、さらに一歩進んだ「デジタルグリッド」という考えが打ち出されている。提唱しているのは東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻科の阿部研究室で「デジタルグリッド」の熟語は商標登録しているようだ。

内容はなかなか難しいのだが、同研究室のホームページから引用すると「情報と、情報によりアクティブに電力制御を行う半導体素子とを組み合わせて電力潮流を制御する新しい電力システム」である。「電力潮流を複数の電力系統に流すデジタルグリッドルーター(登録商標)や、同期系統の中で電力機器に外部信号を加えてルーターと連携制御をさせるデジタルグリッドコントローラー(登録商標)などがキーデバイス」で、特許申請中だと表示してある。

従来型の電力システムは大規模な発電所で生成した電気を交流で変圧しながら小規模に分けて、事業所や家庭などの最終需要家まで送り届ける。幹から小枝、さらに一枚一枚の葉へと枝分かれして配送する。いわゆるツリー構造だが、デジタルグリッドでは逆に需要家が発電する下から積み上げの電力体系から出発する。太陽光や再生エネルギー、燃料電池、自家発電装置などによる事業所、家庭での多数の小電力発電装置と蓄電池とで地域の電気利用体系を構築する。余剰が出ればその余剰分を隣接の家庭や事業所、地域に供給し、それでも余れば、従来の電力系統に直流から交流に変換して供給する。

さて、その際に、ネットワーク化された蓄電池にアドレスをつけ、情報ネットワーク(インターネット)のIPアドレスと連係させ、蓄電池から外部に出る電力をIPアドレスなどの情報によって管理する。電気の流れとインターネットをリンクして電気の塊を個別認識して追いかける、というアイデアである。現在はその実用性を確認しているところのようだが、成功すれば、まさしく電力とインターネットが連係することになる。

コンピューター技術は10年で100倍になる急激な進化を続け、テレビ放送も電話も飲み込んでマルチメディアを実現し、インターネットに結実した。コンピューターが電話や放送を融合して一体化したわけだ。この際に、中央から情報を統御するツリー構造から、超分散自立のインターネット構造へと転換を遂げたわけだが、従来の電力体系からデジタルグリッドへの転換の図をみると、電話がインターネットへ転換するのと相似形である。次に併呑するターゲットが電力である。電力とインターネットの一体化、融合は、さらに高次なものになって行きそうだ。

情報技術が社会革命、産業革命の原動力である、というのが、今さらながら実感させられる。

上記のコラム購読のご希望の方は、右記の登録ボタンよりお申込みください。

登録はこちらから