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第283回 新たなクラウド時代を開く「コンテナ型データセンター」

2012/10/01

日本で初めてとなったコンテナ型データセンターを勉強するため、先日、島根県松江市を訪ねた。まず、島根県が産業の柱とするためにソフトウェア産業の誘致、情報産業の誘致に数々の優遇措置を講じていることに驚かされた。そして、本題のIIJ(インターネット・イニシアティブ・ジャパン)のコンテナ型データセンターを見て、さらにデータセンターの考え方の違いを知って、データセンターの見方を根本から変える端緒をつかんだ気がした。

これまで最新のデータセンターをいくつか見てきたが、その最大の特色はビルの地下にある免震施設で、大地震に備えて、地面とビルの間に大きくて頑丈なバネを入れたり、横に激しく揺れるのを押さえる制震機能を付けるなど、地震国ニッポンでいかに地震の被害を極小化するか、2重、3重の装備を施し、そこに多大の投資をしてきたことだ。

しかし、松江のセンターでは、高さ2メートル近くのまさしくコンテナのような箱の中にサーバーを詰め込んで、コンクリートの基礎の上に固定しているだけである。制震構造で揺れを抑え、ラックの中のブレードサーバーも固定して揺れに耐えられるようにしてあるだけだ。大幅なコストダウンである。

さらにコンテナ型データセンターの特色は外気を利用して電気料金を節約してあることだ。コンテナ型施設の中のサーバーの冷却は外気を取り込んで冷やすのが原則だ。さすがに夏の熱い時期にはエアコンで冷気を混ぜて供給する。逆に冬季は零下に達するので結露を生じる。サーバーの熱を戻して空気が冷えすぎないように調整するそうである。この結果、データセンターの電力消費の効率を示すPUEは「1.2」前後だという。供給電力のすべてがサーバーの稼働に使われていれば「1.0」、サーバー稼働以外の冷却やドアの開閉、オフィスの電灯などに使われる電気量を合わせたものがサーバー稼働の電気量の2倍ならば「2.0」で、日本のデータセンターのPUEは「2.0」前後、大型の最新鋭のデータセンターの目標が「1.4」程度なので、抜群の効率である。一つ一つのコンテナが「1.2」程度なので、どんどん追加して行っても、「1.2」程度が維持されたままであるし、コンテナが少なくてもPUEの数値が悪化することはない。

サーバーが故障しても一つ一つはすぐには修繕しない。他のサーバーで相互にバックアップしているので、個々のトラブルがサービスに影響することがないのがメリットである。

その他、さまざまな面でコストが下がる工夫がされている。

日本は施設の建設費や電力料金が高いのでデータセンターの国際競争力には問題がある、というのが従来の考えだったが、実際にコンテナ型データセンターが稼働し始めてみると、その見方は変えざるを得ない。コストが安いデータセンターを数多く分散建設して運用する、新しい「クラウドの時代」がすぐそこまで来ているようである。

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