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第288回 経年疲労の恐怖はトンネルだけか

2012/12/10

中央高速道路笹子トンネルの天井板崩落事故には背筋を寒くした人が多かったろう。筆者もそうである。笹子トンネルは年に数回は利用していた。筆者自身が崩落の時に出くわしていてもおかしくはなかった。犠牲になった方のご冥福をお祈りしたい。

高度成長期に建設したものを大した点検もせずに使用し続けてきたために、経年疲労による事故の可能性に思い至らなかった、というのが原因らしい。管理者には「想定外」の事故だったのだろう。急きょ、各地のトンネルが点検されたが、そのうち、首都高速道路の羽田トンネルで、天井板を吊るしている金具が破損してはずれているものが2本、発見されたそうだ。直ちに事故になる危険はないと道路管理者は判断しているが、年内には羽田トンネルの天井板をすべて撤去するというので、安全性に自信はないのだろう。

もちろん、経年疲労はトンネルだけではない。土木構造物では、橋も危険が高まっていると指摘されている。水害から守ってくれるはずのダムも危険らしい。決壊すれば下流で洪水被害が出る。大地震が近いうちに発生すると予想されている。経年疲労の上に地震の揺れが加わった時に、果たして、構造物は無事なのか。原発事故のような広域被害ではないが、こうした欠損が大量に発生すれば、日本列島は大規模に、長期間、機能マヒが続くだろう。早急な対策が必要だ。

翻って、情報システム分野はどうか。

情報ネットワークは次々と光ファイバーや無線システムなど新しいインフラが登場するので危険を意識しないが、施設は時間とともに劣化する。光ファイバーなどは鳥がつついて破損させる例も目立っているので、絶えざる補修が必要だ。大地震に強い通信インフラも急いで構築しなければならない。阪神淡路震災の時には、無線基地局の土台が被災して使用できなくなる例もあった。基地局に供給する電気が止まって機能しなくなった例は昨年の東日本大震災時には多数、発生した。

土木構造物の経年疲労は直接的に被害が見えるので危険が目につきやすいが、情報通信インフラは、目に見えにくいので危険の認識が不足しがちだ。トンネル事故を教訓にして、ぜひ、情報通信インフラも急ぎ、点検をしてもらいたい。

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