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第289回 新しい「財」に化けるか?〜〜オープンデータに注目

2012/12/25

政府のIT戦略本部が12年に「電子行政推進の指針」の中で、行政データのオープン化を掲げたが、ようやく「行政データ」の電子化、国民への提供への動きが出始めた。中央、地方の行政機関は施策の立案や実行過程で多数のデータを収集している。しかし、そのデータは古くは紙の形で保存され、現在でも外部で再加工できないような形で保管され、かつ、外部からは自由に閲覧し、また加工・再利用することができないケースがほとんどだった。

多くの場合、行政機関は収集した多種類の膨大なデータをそのまま死蔵しているが、これを民間が活用すれば、社会活動、経済活動を円滑に行うために貴重な情報や知識となって、「経済価値」をもつサービスに変えられる可能性がある。行政データのオープン化への動きが出始めたのは、このままでは経済価値を生まない公共データを民間に活用させて新しい経済価値のある「財」を創出しようという試みである。

公共機関がもつデータを資産として考えれば、これを民間に運用させて「利子」を生み出す試みと考えても良い。

先行事例は気象データである。気象庁が所有し、「天気予報」に加工して、一元的にマスコミや航空会社、船舶に提供してきた時代はたいした「経済価値」は見いだせなかった。しかし、このデータを民間に提供して、きめ細かな地域や時間を特定した気象予報にすると、行楽地の弁当会社の需要予測や屋外スポーツの実行・中止の判断などに役立てて、無駄な原料の仕入れや、逆に、売り切れによる機会損失の防止につなげることができる。こうした損益に関係した「予報」の需要は大きい。こうした天候に売り上げが依存するビジネスにとっては、正確な気象予報はお金を出して購入する価値のある情報で、実際に気象予報のビジネスが生まれたのである。

これまで埋もれていた公共データを掘り起こせば、同様の新しいサービスを生み出せるかもしれない。

12月19日には横浜市も支援して、民間企業、大学・研究機関、ビジネスマンなどが集まって「横浜オープンデータソリューション発展委員会」という組織が発足した。公共データをオープン化して新しいサービスを生み出す「横浜モデル」を構築しようという野心的な試みである。横浜市関連の行政データだけでなく、民間企業が持つデータを提供して、組み合わせによって相乗効果を生む事例も作り上げようという議論が進んでいる。

横浜市民である筆者もこの委員会に参加した。公共データ、あるいは民間データを利活用して新しい経済財を生み出す。日本社会には、まだ、経済価値を生み出せる資産が埋蔵している。日本再生へのもう一つのアングルである。

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