HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第293回 J-KIDS大賞、10年の成果
2013/02/18
2003年に始まった小学校のホームページの全国コンクール「J-KIDS大賞」が2月に10回目の節目をもって幕を閉じた。10年前、日本の子供たちのインターネットリテラシーの向上の仕掛けとして小学校のホームページの表彰制度を作ろう、と言い出したのは慶應大学の村井純教授だった。損保ジャパンの佐藤正敏常務(当時、後に社長、会長)が同社の合併新会社発足の記念行事として後援、筆者も企画委員、選考委員として参加した。
当初、全国の小学校のうちホームページを開設していたのが50%弱。多くのホームページは子供の顔を掲載してはいけない、という過度な警戒心から、写真は児童の背中や斜め後ろからで顔が見えない。何か、異様なものだった。しかし、いくつか、児童の親の了解を得て顔を掲載したホームページもあって、生き生きと児童の学校生活が伝わってきた。もちろん、そうしたホームページが受賞した。効果はてきめんだった。受賞学校のページが見本となって、魅力的なホームページを目指す学校が増えて、写真の掲載数は豊富になり、一気に質が向上していった。驚くほどのスピードだった。
通学路のウェブカメラによる実況、ブログの採用による先生や児童の生活日誌、校長先生や先生方の指導方針の公表、学外の来訪者の報告、放課後の課外活動や、朝礼、運動会や遠足、入学式や卒業式などが、その日のうちにアップされるスピード。さらにケータイへの発信、台風や地震などの災害時の緊急連絡、不審者の出現などの注意など、当該小学校の理解を深めるコンテンツが毎日、毎日、アーカイブに貯まって行く。
わずか児童数10人程度の山間部の学校のホームページは、少人数の児童たちがそこで元気に勉学に励む姿、教職員の方々の苦労や努力など、学校の状態を公開する効果は絶大だった。さまざまなところにリンクも張られ、特に、地域の名所や旧跡、歴史、文化などをまとめるホームページも多く、小学校が地域の情報発信拠点として機能する事例も少なくなかった。そのうちに動画も入り始めて、質はどんどん上がって行った。
10年経過してみると、ホームページをもつ小学校の比率は97%というようなカバー率になった。ホームページを通じてインターネットリテラシーを向上させようという目標は達せられたように思う。村井委員長の「継続だけが価値ではない。目標を達成できたと思う時に幕を閉じるのも重要」という判断で、今回、J-KIDS大賞は卒業式を迎えることになったが、選考委員として関わらせてもらい、興奮の10年間だった。