HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第301回 「シェア」という考え方
2013/06/10
インターネット、ツイッター、ブログなど、個人の情報発信能力の拡大と電子的複製の容易さ、正確さが進展した、高度に発達した情報社会で、著作権をどこまで保護できるのか、というのは、なかなか難しい問題である。ことに学術研究の領域では、他の研究者に引用されてこそ価値が証明できる。引用されるのは良いが、その際には引用文献の明記など、一定のルールに従って引用してもらいたい。ということで、「クリエイティブコモンズ(CC)」というアイデアが提唱されて、着実に研究分野では拡大しているようにみえる。
著作者は、著作権を確定し、主張するとともに、他の人間の複製や引用を一定の条件で許すことを宣言するのである。著作権を主張する期間も著作者自身で設定し、引用の明記など、著作者自身の考えに基づいて条件も設定する。
この考え方の根本に流れている発想法は最近の潮流に合わせていえば「シェア」という考え方に即したものである。「共有する」という意味である。情報や知識はだれかが独占して他の利用を排すれば効用価値が小さくなる。共有して、そこに他の情報や知識を組み合わせることによってさらに新しい価値が生まれる。学究的な分野だけでなく、ビジネス社会でも同様の新しい価値を生み出すが、これは文化的価値を超えて、経済的価値を生み出す。他人の排除ではなく、共有することが新しい価値を生む時代になった。
個人生活を尊重しつつ、住居を共有して新しいコミュニティを使う「シェアハウス」、自動車や自転車を自分の使いたい時間だけ利用する「カーシェアリング」「バイクシェアリング」も効率的に資源を利用する新しい形態である。
日中の紛争事項に「尖閣諸島」の領有権の問題がある。琉球王国の歴史を知る筆者としては「日本固有の領土」と主張したいところだが、中国側には中国の歴史解釈があって、「領土」として譲らない。角突きあっているだけでは、この地域にある海底資源の有効利用に互いに着手できない。当分、その領有は棚上げして「共同開発」「共同所有」の精神で進むのも一つの方策ではないか。日本も、領土である、という主張は堅持しつつ、「シェア」の精神で対応する。もちろん、その次に中国が準備していると思われる「沖縄も中国の領土である」という主張は議論の余地なく一蹴しなければならないが、貴重な海底資源が眠る尖閣諸島領域では、領土権は主張しつつ、「シェア」する道はあるのかもしれない。高度情報時代が生み出した新しい所有の概念である「クリエイティブコモンズ」の精神からも学ぶべきことがあるような気がする。