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第304回 ビッグデータへの期待と不安

2013/07/22

日経BP社の予測によると、ビッグデータの活用によって、日本の製造業は2016年には12年に比べて営業利益ベースで2兆円も増加するそうである。流通業でも7200億円程度の増益が期待できるという。ビッグデータの処理技術の発達に期待が集まるのも当然である。

ビッグデータのどこにそのような威力があるのか。これはコンピューターによってなにがもたらされたかを考えるのと同じことである。もともとコンピューターは大量のデータを高速に処理するために発明された。その性能が向上し、さらに規模の大きなデータを短時間で処理できる能力を我々は獲得してきた。その時々のビッグデータを処理し、銀行オンラインが発達し、航空券や新幹線の予約が自宅からできるようになり、ネットショッピングが普及してきた。

年年歳歳、企業の経営効率が上がり、消費者の需要のトレンド予測の精度が増して無駄な生産を少なくしてきた。今日のビッグデータの利用でも、同様のことが起こることは確実である。消費者像を正確に捉えることで販売を拡大し、一方で無駄を少なくできる。社会の効率も上がる。

ただ、不安は残る。個人個人の行動が情報システムに捕捉されているが、これはプライバシーの侵害につながらないか。JRの電子乗車券「Suica」はいまや全国で使えるようになったばかりでなく、コンビニや自販機での買い物にも使える便利な電子マネーにも発展した。そのデータを他の企業にも提供するサービスを始める。にわかに、「個人情報を勝手に使っては困る」「プライバシーの侵害につながらないか」と不安の声が上がった。もちろん、JR側では、個人が特定される情報は抜いて提供するので個人情報問題は起きないのだが、そのメカニズムを説明してもらわなければ不安は拭えない。

基本的には、JRだけでは活用しきれないデータを、他の企業や行政に提供して活用してもらうことは、情報という資源を加工して新しい経済価値を生み出すことにつながるので大賛成である。日本は早くから社会の情報化が進み、あちらこちらに大量のデータの蓄積がある。高速計算能力を備え、これを価値ある情報に加工するソフトを準備すれば、膨大に蓄積されたデータは経済価値を生み出す情報資源になる。資源小国を自称する日本だが、実は、大量の情報資源が埋蔵されていたことになる。

個人情報を適正に管理して社会の不安を解消しつつ、死蔵している膨大なデータを資源に変える新しい時代がやってきたような気がする。

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